第九話 管理官!?
「準備は終わったか?」
そう尋ねると、
「いつでもいいよ。あとは被疑者が起きてくれるのを待つだけ」
彩都が首を回して正面を見据えながら言った。
…取り調べをするだけなのに、ストレッチ体操みたいなのはいるのか?
「どうする?」
「何が?」
「取り調べを見るかということだ」
彩都からの提案だった。
「いや、怖いから大丈夫」
と断った。
「隆盛某はに対してどんな印象を持っているか、確かめないとな」
「某!?」
横にいた糸唵が彩都の言葉に突っ込んだ。
とその時
「…〜ぅ…」
どこからか呻き声がして彩都と俺は顔を見合わせて、それから声のした方を見た。
どうやら被疑者が起きてきたらしい。
といっても一人-中性的な男子-だが。
「頼んだ」
「任された。あっ、それと…」
「手配しておく」
彩都の言葉を遮り、返事をする。
「わかった」
そう言って取調室に中性的な顔立ちをした男子を担ぎながら消えていった。
俺はもう一人の被疑者を簡易的な留置場に運んだ。
簡易的な留置場は取調室を作ったとき、ついでに作ったものだ。
…一応直樹レベルじゃないと壊れないように設計はしてある。
簡易的ではあるが。
「ぎゃー〜ーーー!」
取調室の方から絶叫が聞こえる。
「どんな取り調べをしているんだよ」
「さぁな?少なくとも、精神的ダメージは負ってそうだけど」
糸唵に言われたあと、現世時代の頃を思い出した。
☆
『なぁなぁ、取り調べの時の彩都ってどんななん?」
ふと気になり居酒屋にいた、彩都の同僚に話を聞いてみた。
『國乃管理官ですか?』
『管理官!?』
『ええそうですよ?』
同僚には、そんなことも知らなかったのか、と呆れられた。
『…とにかくどんな取り調べをしているんだ?』
『ああ、この時代には珍しいタイプですね。ニコニコしていますけど、どうやらドス黒いオーラを感じるそうですよ?巷の噂によれば、世界最大規模の犯罪組織を潰した時、トップの取り調べをした際、ボスがやけに素直だったみたいです。どうやら圧に負けたとかなんとか…』
『そのボスは今どこに居るんだ?』
ボスとやらに会ってみたくなった。
どんな感じの取り調べだったのか。
この同僚は、取り調べを直に見ていないようだからな。
…同僚には悪いが。
場所を聞いた俺は、すぐに向かった。
今は刑務所暮らしらしく、行ったらすぐに会えた。
当時のことを聞いてみると、
「おぞましいな。あれは。人間が出せるものじゃない、ましてや警察側の人間だ。そこらへんのチンピラは、ある意味病院送りになるぞ。だから気をつけた方がいい」
…そう言って、会話を終えた。
☆
なんてことを思い出した。
…あの人がそこまで言うんだから間違いないだろう。
取り調べは任せるか。
「糸唵、サポートは頼んだ」
「頼まれた」
そう言って倉庫から現世へと帰った。
因みに現世に帰る方法だが、帰る専用のゲートがある。
そこにいつも、結界を張っておりそれを直樹達は壊して出てくるわけだ。
一応破られる毎に結界の強さは上げているが、何の効果がありゃしなかった。
さてさて現世に帰ってきた。
ドリク村に…って!
「お前らなぁ!」
直樹達がバスの外に出て観光ツアーをしていた。
…桃寧まで一緒に…。
羨ましく思った俺は、直樹達の行いを反省させるためにとあることを実行することにした。
「仕方ねぇか」
バスのエンジンをかけて扉を閉める。
中にいたごく僅かな方達は今からやることを理解したらしくシートベルトを閉めて、こちらにグーサインを送ってきた。
「出発します」
そうアナウンスをし、バスを走らせた。
後ろから直樹達が追ってくるのが気配でわかった。
「やれやれ、子供にはお仕置きが必要だということを忘れないでほしいね!」
そう言うと、後ろにいる方達が顔を引き攣らせているのが気配でわかった。
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