第四話 魔王は、倉庫から?
そして全ての荷物を倉庫の中に入れた時、
「よっ!」
軽い声でやってきたのは、倉庫の中にいた魔王。
魔王と言っても姿形は人間と全く変わらないので人間と区別がつかない気がする。
「魔王が、現世にポンポン出てくるな!」
「僕らはいつになっても出させてくれないからなぁ!」
「…しょうがないだろ。場所がないんだから」
「なら場所を用意してくれ。みんな出たがってる」
「用意したくても用意できないんだよ!」
「…君のお金なら用意できるだろ?」
「ぐぬぬ〜…」
こう、軽口を叩くのは魔王こいつの性格だからどうしようもないのだ。
だが、こいつはいい奴なんだよ…。
簡単に紹介しておくと、
朝比奈直樹(魔王) 男
前の世界では、親友でありライバル-陸上-だった。
で、結局最後の勝負に俺が勝ちライバルではなくなった。
ちなみに、種目は100mと走り幅跳びだ。
100mはギリギリ直樹に勝って、タイムは9:46で直樹は9:57だ。
走り幅跳びはぶっちぎりで勝ってやった。
俺が10m57で、直樹が8m92という差で…
世界記録を優に越している記録なので本当か?
と言われるが……。
頭の中であーだこーだやってると、直樹が思い出したように
「火竜も出たがってたぞ」
と言った。
「そうか」
「案外あっさりだね」
「人の結界を容易に壊すやつには言われたくない」
「…カンケーない気がするが…」
「少なくとも俺には関係ある」
いつも出入口には、結界を張っていて魔物が外に出るのを防いでいるのだ。
特に直樹。
な・の・に・!
こいつは容易に壊してくるのだ。
…ま、手を抜いて作っているから破られるのは当たり前っちゃー当たり前なのだが…。
おまけに、容姿が整っているだから倉庫むこうでも、結構モテているらしい…。
桃寧が言うには。
そして、俺以外には優しくするため余計にモテるのだ。
全く、腹立たしい奴め!
…でも俺には桃寧がいるし。
少し赤くなっていると。
「お前の結界など容易に壊せるわい!」
と、高笑いしながら言う直樹の姿があった。
「……本気で作るか」
元勇者・賢者兼魔道士としてのプライドがあるからね!
「やめろ!お前が本気で作った結界は俺も破壊不可能なんだよ!」
「なら、出るな」
一瞬考える素振りを見せたが、すぐにその素振りは消えて代わりに笑顔が浮かべられていた。
「やだ」
じゃぁ仕方ない。
「おいそこどけ」
「ああいいけど」
そして、目の前から退く。
「l結界龍!」
そして、龍が飛び出して-腕から-きた。
その龍は凄い迫力でまるで生きているかのようだが、実際はグラフィックでそう見せてあるだけで、
半透明なプロジェクションマッピングによって浮き上がっているだけだ。
とは言っても本物そっくりに作ってもらうようプロの絵師さんに頼んだのだが…
それはさておき、龍の行った先は…
「おいこら!やめんか!」
直樹に飛んで行った。
そして直樹に絡みつくと、結界の中に引きずり込んだ。
「おーい!隆太!助けて!」
「やだ!言うことを聞かない子はお仕置きです。素直に消えてください…ついでに隆太と呼ぶな!」
結界に引きずり込まれた直樹はそのうち声がしなくなった。
残っているのは微妙に空気中に漂う、直樹の柔軟剤の香りだ。
ふぅ〜。
厄介払いは終わった。
さぁ!ドリク村にいこう!
ソフトなタッチにかえました。
是非!ブックマークして帰ってください!
ついでに下にある評価を五つ星にお願いします。