第十二話 本当の到着!
「え?」
思わず声が出てしまう。
「おや、驚いてますか?村の人にも副村長っぽくないと言われるんですけど、どこが副村長っぽくないんですかね?」
「全てです」
思わず即答してしまった。
「ハハッ、よく言われます」
笑いながら流してくれた。
「それで俺になんの用でしょうか?」
「ああ、村の入り口へ案内です」
「?」
どういうことだ?
言葉の通り受け取ると優しいように感じるけど、こんな言い方は普通はしないと思うけど。
まさかだけど村の入り口がわかりにくいということ?
「どうやら気づいたみたいですね?実はこの村の入り口は限られたものしか入れないのですよ」
「なんですと!」
予想の斜め上を行った!
ってかそこじゃないよなぁ、驚くの。
限られたものしか入れない、ということに驚くべきなんだが、その前に別のことに耳と頭が反応してしまった。
「詳しい話は村長からお願いします。私の口からは言えない事情となっておりますので」
「どういうことですか?」
「それは村長から話を聞いたら納得しますよ?」
なるほど、この人は絶対に口を割るつもりはないね。
大人しく諦めるか。
「それと、バスの中にいる方々もどうぞ。バスに乗ったまま入り口まで案内します」
「それは麻山さんが運転するということでしょうか?」
「いえいえ、あなたが運転するということですよ?」
「なるほど?」
詳しい話はまた後でだ。
「わかりました、バスを運転しますのでバスに乗り込んでください。座席から案内をお願いします」
「了解です」
そう言って俺と麻山さんとバスに乗り込んだ。
☆
「本当にここ…なんですか?」
「まぁそう思っても仕方ないよね…」
疑うように麻山さんを見ると肩をすくめていた。
バスのフロントガラスの前にあるのは一軒?のボロボロな小屋があった。
「ちょっと待ってて。いま開けてくるから」
「分かりました…けどどうやって開けるんですか?」
「まぁ見てなって」
そう言ってバスを降りて小屋の中に入っていった。
30秒ほどすると空気中には見えない何かが小屋から溢れ出した。
それをもっと調べたいと思い身をハンドルの上に乗り出すと、
突然あたり一帯が白い光に包まれた。
「ぐわッ!」「ウッ!」「っ!」
バスに乗っている人も思わず眩しさに声を上げて目を閉じてしまう。
光が収まり目を開けるとそこには、のどかな農村が広がっていた。
正面には緑に色づいた畑と、茅葺き屋根の家が何十軒も立っていた。
奥の方には小高い山があり下にある家よりも少し高いところにも家が何軒かある。
とびっきりデカイ屋敷が。
左右には広大な田んぼが広がっており、一キロほど歩いた所ぐらいから森が広がっていた。
ザ・田舎という感じがする。
屋敷を除けば。
「おおこりゃすげーなぁ!」
「あっちの世界でも見たことないぜ」
「今からここで暮らしていくのか!」
「綺麗…ここは…癒されるかも」
「そうね…いつか直樹と…」
バスの座席から感嘆の声が溢れ出ていた。
約一名別のことを呟いていたが。
それを除けばみんなビックリしている様子だ。
コンコン
バスの扉をノックされる。
「驚きました?」
バス越しに声が聞こえる。
麻山さんの顔を見ると、その顔には子供がいたずらをして成功して嬉しそうな顔をしていた。
悔しい、がコレを流してしまうほどここの景色は素晴らしい。
「驚きましたよ。にしてもどういうカラクリなんですか?あれ」
「今は企業秘密ってことにしておきましょうか」
今度はいたずらを仕掛けてバレないだろうという顔をしていた。
この人、体格とは裏腹に性格が子供っぽいなぁ。
俺と直樹とおんなじタイプだな。
「では村長の所まで案内します。薄々勘づいているかもしれませんが奥に見える屋敷が村長の家です」
「…でしょうね…」
あんなデッカい屋敷は特別な人が住んでいるんだろう。
これは誰でも予測できることだ。
「その前に一旦バスを駐車場に止めますので場所まで走って案内します」
「了解です!」
そう言うと、少し息を整えてから麻山さんは走り出した。
「ランニング程度か…」
そのぐらいなら追いつけるか。
一瞬だが走ったら世界記録更新レベルの速さで走り出した、なんてことがあったらどうしよう、なんてくだらないことを考えたけど、見事に違った。
やっぱ、小説みたいな展開はないか。
少しバスを走らせると、とにかくデカイコンクリートで固められた場所があった。
走ってきた道も舗装されていたが、ここは駐車するためにコンクリートで固められたようだ。
ちゃんとバスも駐車できるスペースもあった。
「じゃあ、好きなところに止めてください。止めたらここから少し歩くと噴水があるのであそこで待ってください。ぼくはやることがあるので」
「了解です」
そう言って麻山さんは駆けていった。
好きなところに止めてって言われても適当に止めるしかないか。
そこらへんにテキトーに止めて、バスからみんな降りた。
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