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彼女の小説はどこかずれている  作者: 白夜いくと
■1年生■ 梅雨~夏
5/30

『何万だブー』

 仏教学Ⅰの講義中の事。教授がこんな事を話していた。人は四苦八苦からは逃れられない。特に四苦からはと。簡単に言えば生老病死の事だ。今は花のように美しい美咲みさきも、いつか病気になるかもしれないし、しわくちゃになって死に近づいていくのだろう……なんて思っていたら、当の本人は自分のレポートパッドに早速小説を書き始めた。いつにもなく真剣な顔だ。これはさすがにシリアスな展開になるのではないか。


 「できたわ」


 ひっそりと渡されるレポートパッド。どれどれ……


**********************





『何万だブー』


 ボクを育てるのにかけたお金で日々経済がまわってるブー。一体ボクは何万だブー? あ、ボク豚。名は一生無い。でも毎日美味しいとうもろこしが食べれて幸せだなぁ。あと数ヶ月で生肉店ってところで売り出される予定だブー! ところで生肉店に並ぶってどういうことかなぁ。ボクは「五つ星」らしい。やったね。ボクお星様だーいすき。いつかお友達になりたいなぁ。


 「100グラム589円になりまーす!」


 ――完――





**********************


 ……これは風刺か。風刺なのか。


 「豚が大好きな星になったって事ですね。面白いです」


 「南無阿弥陀仏……」


 「え?」


 どうやら美咲みさきは「南無阿弥陀仏」と「何万だブー」をかけていたらしい。分かりにくいセンス。おやじギャグかよ! でもまぁ一応仏教学の授業にインスピレーションを受けてはいるようだ。それにしても豚を主人公にするとは……しばらくとんかつは控えよう。南無阿弥陀仏……


 そんなこんなで講義は終わりレポートを提出して俺と美咲みさきはそれぞれの講義を受けに行った。次に会うのは西洋史Ⅰの講義のときだ。それまでに美咲みさきはマルコ・ポーロが題材の小説を書くと言っていた。


 マルコ・ポーロといえば、イタリアの商人で「東方見聞録」を口述したことで有名だ。ヨーロッパ人の東洋への関心を高めた歴史的人物をどうやって魔改造する気だろうか。俺はなんとなくだが「ジパング」という単語が出てくるのではないかと勘ぐっている。美咲みさきは日本史が苦手だ。そんな彼女が「ジパング」を織り交ぜて小説を書いたら面白いのではないかと含み笑いをした。

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