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彼女の小説はどこかずれている  作者: 白夜いくと
■1年生■ 梅雨~夏
18/30

『オギャーの日』

 ……腹が減って目が覚めた。まだ4:27。1時間ほど早く起きてしまった俺は真っ先にスマホを確認する。すると、美咲からのメールが一件来ていた。昨日の彼女の小説への感想が上手く出来なかった俺に対する別れのメールだろうか……暗い部屋の中スマホのブルーライトを浴びつつ美咲(みさき)からのメールを開く。


***********************






件名:『オギャーの日』


 拝啓 じめじめ湿気た梅雨の候、貴方様は大してお変わりなくお過ごしのことと存じます。さて、この度は大変大変悲しく思う事があり連絡をした次第です。


 つきましては、貴方様が私のオギャーの日をお忘れになっていることをここに記させていただきました。その代わりとして、明後日に開催されるお祭りにご一緒してくださいませんか。私は貴方様と一緒に射的や型抜き等を嗜みたいと考えております。お化けには屈しません。あそこの神社はモフモフが多いです。そっちの方が恐ろしいですね。でも、おみくじは引きたいなぁ……


 それでは、くれぐれもお体に気をつけてお過ごしください。まずは略儀ながら簡易メールにてご招待申し上げます。

 

 敬具


 (20××年)7月18日 美咲


 気付いてほしかったなぁ 様






***********************


 あ、忘れてた! 昨日は美咲みさきの誕生日だった。そうか、それで普段とは違って積極的だったのか。一緒に帰ろうと言ってくれたのも、もしかして直接俺から「おめでとう」という言葉を聴きたかったからか……いや、単にプレゼントが無くて怒っているだけかもしれない。そうでなくてはこんな回りくどい手紙形式のメールなんて送ってこないはずだ。しかし内容を見る限り、別れのメールではなく明日から行われる祭りへの誘いのメールのようだ。彼女からのチャンスか。


 しかし、時々思う。女って面倒くさい生き物だなって。やたら記念日などを作り祝いたがる。小説にしか興味が無いと思っていた美咲みさきでさえも、誕生日を覚えていないと、こういった一見悪戯メールのようなものを送ってくる。俺はただ彼女と一緒に過ごしていけたらそれだけでいいのに……でも、付き合って最初の日を祝ったときの美咲みさきの笑顔は、梅のように可愛らしかった。容姿は大人びているが、やはり心は大学一年生なのか……


 あえて俺は返信しなかった。その代わりに、いつもより早く身支度をして実家から近くのコンビニで生クリームたっぷりのシュークリームを一つ買い、大学へと向かった。実家のリビングテーブルにはおそらく親が用意してくれていたであろう食べ物が置いてあったが、急いでいたので食べ損ねた。悪い、父さん母さん。今は美咲みさきの事で頭がいっぱいなんだ。

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