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彼女の小説はどこかずれている  作者: 白夜いくと
■1年生■ 梅雨~夏
10/30

『天の川大爆発』

 美咲(みさき)からのメールが来るまでベッドでゴロゴロしていた俺。やがて雷を伴う豪雨になる。彼女は七夕をテーマにした小説メールを送ると言っていたが……一体どんなストーリーになることやら。それもそうだがそろそろ腹が減ってきた。俺はスマホを置き自室から出て冷蔵庫の中を漁る。レトルトのハンバーグ。そしてタッパーに入ったほうれん草の煮浸しをリビングで静かに食べた。俺の晩御飯はいつもこんな感じだ。両親は食事を用意して、疲れた身体を休めるために眠っている。会話は……殆ど無いな。


 食器類を片付け終わってから自室に戻ると、俺のスマホの通知にメールのマークがあった――その瞬間、けたたましい爆音が地響きと共に鳴り響く。雷だ。今頃美咲(みさき)は怖がっているのではないだろうか。電話をかけてやりたいが、今は23:48。常識的に考えて夜中に通話をするのは迷惑だろう。とにかく今は彼女から送られて来た小説メールを見てみよう……


***********************






件名:『天の川大爆発』


 幾億の恒星に満ちた天の川。そこでは第4次宇宙戦争が始まっていた。戦っていたのは東のアルタイル軍と西のベガ軍の戦闘機。次々と星の塵になる双方の戦闘機たち。しかし、その戦いに終止符を打つ秘密兵器が密かに開発されていた。それは「神の雷」とも称される火星の武器だったのだ!


 「地球の奴らが争うから宇宙ゴミが沢山出来て困るよー」


 火星人のジュバンは、そのスイッチを押した。


 ドカーン!! ボコーン!! ゴゴゴゴ!!


 天の川は大爆発した。アルタイル軍とベガ軍が和解することも無く戦争は終わった。


 ――完――






***********************


 なるほど、彦星(アルタイル)織姫星(ベガ)が出遭えなかったことを宇宙大戦の話に……よく思いつくな、こんなの。おそらく天の川を大爆発させたのは今も外でゴロゴロと鳴っている雷のことだろう。由緒ある七夕伝説が魔改造されてしまった。しかも例の如くバッドエンドだ。とにかく見た。感想を書かなければ。


 「まさか火星人が戦争を止めるとは思いませんでした。これは一種の皮肉ですね」


 何を書こうか迷ったが、こういう感想しか浮かばなかった。悪い美咲(みさき)。望みどおりの回答じゃなかったら落ち込むだろうか……返信はものの5分ほどで来た。恐る恐るメールを開く。


 「ラブ&ピース」


 (え?)


 美咲(みさき)はこの小説を通して何を伝えたかったのだろう。俺にはわからない。わかったら負けな気がする。とりあえず今日の彼女とのやりとりはこれでおしまいだ。時計を見ると01:20。明日は中国語Ⅰの必修がある。美咲(みさき)と一緒に受講するが、これがまた1時限目。早く寝なければ講義に遅れてしまう。さっと予習を済ませて俺は眠りについた。

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