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幕間: おねえちゃんのひとりごと。
…私を、覚えてないんだね。
『お姉ちゃん』というのは、私があげられる最大のヒントだったんだけどなあ。やっぱり、覚えてないよね。いや、わかっていたけど。だって男性ってそういう、小さな思い出って、カケラも覚えてなかったりするパターン多いし。まあ、それはもう意地でも思い出させたいけど。
それどころか『イカレ女』なんて呼ばれてしまった。なんだか悲しいのに、立派に憎まれ口を叩くぐらい成長したと思えるから、実はそんなにイヤじゃない。
...こうやってドアの外で座り込んで、時折聞こえる独り言と、寝落ちた気配、それに寝息。
聞いてるだけで私は『おかえり』って気分になる。
私はなんなんだろう?
自分でも訳も分からない執着心抱え込んで、そのくせ何一つ本当のことは言えない。
期待してるんだろうか。
彼が自然と思い出してくれることを。
それとも、自分の衝動的な行動の尻拭いを、自分でしているだけだろうか。
…わかんない。
ただ、わからない。
今も、これからも、全部。
私の悩む頭は、君の寝息の音でゆっくりと落ち着いて、寝落ちた。