監禁1日目: 賭け事しましょう、そうしましょう。
思いっきり力を込められて、耳障りな音を響かせて切れる鎖と、その破片が二つ飛んだ。適当に一番太そうな奴を選んだ、と宣うバカ女は、自分で選んだ鎖を苦労して切っていた。側から見れば、ちょっと、、アホだ。
「だって一番重いのがよかったんだもん… 」
変な拘りがあるらしい。いや、絶対いらねえだろ。丁度いい太さってもんがあるじゃん。これはどんな猛犬でも抜け出せないと思うんだよね。俺にはさっぱり理解ができない。
とりあえず最初のテープカットならぬチェーンカットが済んだわけだが。
「じゃあ、おやすみ〜。」
「は、今何時だよ?」
「八時。」
「寝るの早くね?」
「え、そうかな。じゃあおねえちゃんと遊ぶ?」
「嫌だ。」
「即答だねぇ…」
何が『遊ぶ?』だよバカ。小学生じゃねえんだぞ。というかネットがしたい、、俺のケータイでゲームがしたい… そういえば俺の荷物どこ行ったんだろう?ケータイ捨てられてたらマジで泣くんだが。俺が少ない小遣いで課金しまくったお気に入りのゲームが… バックアップなんてとってないから、端末が消えたらおじゃんだ。
「んー、じゃあさ、お姉ちゃんと賭け事しようよ♡」
「…」
「君が勝ったら、ケータイ、返してあげよっか?」
「…まじかよ。」
なんだかずっと心を読まれている気がするんだが、この際それはどうでもいい。返してくれると言う以上、俺のケータイは無事らしい。よかった…。問題は『何』で勝負するかだよな。絶対に勝ってケータイを手に入れて、、、って、そんなに上手くいくのか?なんか裏がありそうな気しかしない。だってケータイ手に入れたらゲームより何より先に通報するか、仕方ないけど親に連絡とかするぞ、俺。絶対舐めプしてるだろコイツ。
「…俺が負けたら?」
「んー、一気に鎖を大幅カットで。」
「…なにで勝負すんの?」
「おっ、のったね♡? じゃあUNOで。」
「約束は守るんだよな?」
「それはもちろん!私は悪人でも嘘つきでもないし。」
「…嘘つけ。」
そんなこんなで、勝てばケータイ、負ければ自由がさらに短縮されるUNOが始まった。
実は俺は、UNOは嫌いだ。
知ってるか?
UNOは集団いじめにもってこいのゲームだ。
地元ルールがどうこう、
UNOの宣言が遅れた、遅いというこじつけ、
なんだかんだペナルティをでっち上げてカードを追加させる、
集団で一人のプレーヤーにスキップとドローの集中攻撃、
『めんどくさいからお前10枚追加』というもはやルールもクソもないカードの押し付け、
ゲームだ。所詮。
だから悪意なんていくらでも隠せるし、
それを『戦略』と言い換えれば隠そうとする必要もない。
俺はそれを死ぬほどやられてきたよ。
今でも、おもちゃ売り場でUNOを見ると、顔を顰めてしまうくらい、憎悪に近しいものがある。
だからどうってわけじゃないけど、一対一なら絶対にそれはない。
それさえなければ、俺が勝てる可能性なんていくらでもある。
むしろ俺の方が強いかもしれない。
だったら…
心置きなく、『ゲーム』しようか。
次で一日目が終わります。