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異常者は言う、監禁は気紛れな愛であると。  作者: はるかかなたの死んだ空。
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監禁1日目: 『お姉ちゃん』

状況を整理しよう。

なんてカッコつけたってしょうがないんだけどさ。

俺は帰り道に誘拐されて、ここに連れて来られて、閉じ込められてる。わかるのは、まじでそれだけ。



足の鎖はかなり長い。普通に歩き回れる。

とりあえず立ってドアまで歩いた。

余裕でドアの前まで行けるし、まだ何メートルもあるみたいにとぐろを巻いてる。


でも肝心のドアは開かない。

まあそうか。ベルを鳴らせば来るってことは、俺は出ていけないってことか。



「…意味わかんねぇ。」



あいつ、何なんだよ。

頭のキレる誘拐犯というより、どこか抜けた近所の姉ちゃんみたいな雰囲気なのに、俺を殴った時の顔はとても楽しそうだった。暴力を振るうことが好きで好きでたまらない目は、親父の目。俺はもうそれを飽きるほど近くで見てきたけど、それでも、俺の親父とはどこか違っていた。


もっと、なんだろう。純粋に壊れているような。

それなのにむしろ、抑えているような。

人を痛めつけるのは好きだけど、それを出来るだけ俺にはしたくない、みたいな。

俺を、なんだかんだ気にかけてくれているような。


…気のせいだろうか。



そもそもなんで俺を誘拐して監禁してんのか、一言も聞けなかった。俺も抜けてるな。。


というかこんな監禁なんてすぐにバレて警察の御用になるだろ。いや、俺を殴ってるってことは危害を加えるつもりはあるんだ。意味不明な奴に意味不明な理由でサクッと殺される可能性だって無視できないし、何より向こうはイカレ女。理屈だって通じないかもしれない。そんな奴の思考なんて読めるわけがない。




結局、俺はどうしていいかわからなかった。


わからないまま眠りに落ちた。




目が覚めた、んじゃなくて叩き起こされた。

肩に落ちた平手の痛みで起きた俺は、隣で座ってるイカレ女を見やった。


「いっっ、、ふざけんなよイカレ女…」


「あっそう。ていうかその呼び名イヤ。可愛くない。」


「じゃあなんて呼べばいいんだよ?」


「…『お姉ちゃん』でいいよ。」



…いや普通に嫌だよ。

しかもこいつの見た目はほぼ中学生だ。外見だけで見れば、二人で並んだ時年上に見えるのは多分、確実に俺だ。ちょっと童顔気味とはいえ背は高いし、そこそこの体格もある。

それも相まって、このイカレ女を『お姉ちゃん』と呼ぶのは憚られる。



「… 誰がお前を『お姉ちゃん』なんて呼ぶんだよイカレ野郎、反吐がでるわ。」



ドスっ。


肘が俺の鳩尾に吸い込まれていくのが見えた。

油断してた俺は、やっぱりそれをもろに受けてしまった。



「うぐっっっ」


「ほんっっと口悪いの治らないね?? まあそんな事だろうと思ってコレ持ってきたんだけど。」



そう言って『お姉ちゃん』は、さっき箱から出てきたガラクタの1つ、大振りの金切り鋏を振りかざした。かなり重そうで、ゴツい。



「…それで俺を殴んのかよ。」


「あ、それもいいね♡ でも残念、違うんだなぁ。」



冗談めかしてそう言って『お姉ちゃん』は、俺の手を後ろに回して手錠を掛けた。それからベッドから降りて、下に潜り込んだ。



ガチャン。



鎖と南京錠を壁から外して、先端を俺に見せつける。



「じゃあ君の言葉使い矯正プログラムのルール説明をします!」


「…は?」


「実はこの鎖、何メートルか忘れたけど、めちゃくちゃ長いのね。んで、君が酷いことを言うたびに、私が適当に鎖を切っていきます!」


「… 」


「今は一人でトイレもいけるけど、悪いこと言い続けたら、いちいち私を呼ばなきゃいけなくなるよ?君のプライドはボロボロになる、そして君の言葉使いも直る、一石二鳥のプランです♡ ゲーム感覚で楽しんでね♡」



…つまり俺が口汚く罵り続ければ、それだけ自由がなくなる。行く行くはこの部屋すら満足に歩けない長さにだってなるかもしれない。ってことか。

つまりは俺が黙っていればいいだけの話だ。別にこんな奴と喋りたくもないし、自分の自由が目に見えて減っていくのはキツい。



俺は何にでもだんまりを決め込むことにした。



「あ、ちなみに黙り続けててもダメだよ?要は私が傷付いたかどうかだから。」


読まれてたか。


「くそウゼえ… あっ。」


やべっ。思わず口が滑った。


「はい、早速最初のカットですね〜。とりあえずこのくらいいこうか?」


4、5メートル分が引きずり出された。

待て待て待て、長すぎだろ。


「大丈夫だよ。まあこれで玄関にはギリ行けなくなったかもねー。」







そんなに長かったならさっさと脱出して、叫ぶなりなんだりすればよかった…!




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