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異常者は言う、監禁は気紛れな愛であると。  作者: はるかかなたの死んだ空。
2/15

監禁1日目: 可愛い悪魔は、まるでこれが当たり前のように。

頭に霧がかかったようにぼんやりとしていた。



薄眼を開けてみると、普通の部屋の中だった。

フローリングの床、薄いクリーム色の壁、ドア、それと照明。

俺が座っているのは、白いシーツが清潔そうな、シングルベッドの上。



動けない。



とりあえず叫ぼうとして気付いた。

口、塞がれてんじゃねえかよ。



思考が停止した瞬間、ドアが二度ノックされた。


コン、コン。


軽い音。




「入っていーい?入るよー。」




間延びした女性の声。


これが俺を連れ去った悪魔だった。

別に俺は家にも家族にも日常にもそんなに執着してない。

こんな屑みたいな日常、捨ててもよかったんだ。

本当は俺をそんなところから連れ出してくれたことに対して、お礼の1つも言いたい気持ちになったかもしれない。



けど、そんなんじゃなかった。



そいつは前振りなく俺の口のガムテープを勢いよく引っぺがした。


「ーっっっっ!!!」


超、痛えよこの野郎。



そんな俺の表情を見て、こいつは笑いやがった。

笑い声が可愛くて、一瞬気後れした。


笑い終わると、当たり前、という風にベッドの上に乗ってきて、こっちをじっと見た。

おいおい、ジト見はキモいよ。

十秒ぐらい見てきただろうか。俺も視線を反らせなかったけど、向こうも逸らさなかった。

そしてこいつはにっこり笑って、言った。



「はい、あーんして??」



スイカを食べやすい大きさに切ったものが、銀のフォークに刺されて、俺の口の前に運ばれる。左手には、二十個ほどの角切りスイカを盛った白い皿が。



ウザい。


挙動がいちいちウザい。

ぶりっ子じゃないのに、それに似たウザさを感じる。



何があーんして、だよバカ女。



座り込んでる俺に視線を合わせるように首を傾げる目の前の女を見やる。

白くて薄い素材でできた夏仕様の長袖のワンピースと、艶やかで真っ黒な髪。裸足の足は綺麗だった。(別に見惚れてなんてない。)

そして童顔、低身長。


制服着せたら完璧にただの可愛い中学生みたいな奴が、俺の目の前で笑っていた。

可愛いはずなのに、その笑顔が、どこか『普通』とずれている気がして、ちょっとヤバい感じがするのは、気のせいなんだろうか。



「…何が『あーん』だ、バカ女。」



腹立ちまぎれに吐き捨てた。

その半分は、虚勢だったかもしれない。



「…なんで俺は知らない奴に知らない所に連れ込まれてんだよ。あとこれなんだよっ!?」



俺は後ろ手に縛られている縄の端を、顎をしゃくって示した。

蹴ってやろうとしても、足だって縛られてる。全然動けないのにまた腹が立った。



「誘拐の挙句、監禁?あんたバカかよ。外せよ、ふざけんな。」



俺的には挨拶程度の暴言。

さあ、反応はどうだ?



すると、女はフォークを皿に戻して、床に置いた。



なんだ、と思った瞬間、腹に衝撃が来た。






「ぐぁっっ!?」









胃を殴られた。







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