41 意外な事実
ダン達に危機迫る!
フローラとは何者なのか?ライカの感じる記憶に何か関係が?
フローラを助けたダンたちは南へ移動を始めた。
ライカは船のことも気になるが、今は彼女の気持ちを落ち着かせることと、彼女の素性。彼女の顔を見ると心がざわつく。
一行の目的であるダンの父マサの情報を受け取り、その後で一端ルコイに帰ること。フローラの記憶はその後アベルナーガにゆだねることになる。
”ガタゴトガタゴト”
竜車も五人乗れば少し手狭な感じである。
ダンは御者台に移動し、ウサギと並んで座っていた。
「中が狭くなったから出てきちゃった」
「ダンくんは何が得意なの?魔法?精霊術?」
「僕はスザクの叔父さんに教えてもらったのと、アベルの叔父さんに教えてもらった古代魔法も少し使えるよ」
「ええ!古代魔法まで?長生きしてるエルフでさえできるかできないかわからない魔法よ。龍ですら余程賢い個体でなければできない特殊な魔法よ。ダンくん今何歳?」
「多分もうすぐ九歳」
「まだそれで魔法を会得したの?天才っているもんねぇ。百年以上修行してるのが報われない気がしてきたわ。どんなことしたらそう精霊術も魔法もこなせるようになるのかしら。しかも古代魔法まで短期間で」
「大精霊様に味方になってもらったらある程度は早くなるかなぁ。僕は精霊と遊びながら魔法を覚えたから。ライカはちょっと苦労したみたいだけど」
「同じ身体なのに?」
「うん。分身だけど頭の中で何かが邪魔するみたい」
「ああ、なるほど。彼は無になれなかったのね。邪念が邪魔するみたいね」
「そうそう。いつもサクヤお姉さんに叱られてるけど」
「あの二人ダンくんはどう見てるの?」
「んん・・・仲がいいと思ったら喧嘩したり、サクヤお姉さんがいっつも怒ってるんだけど・・・何でだろ?」
「それはね・・・ダンくんがアニカちゃんを思ってるのと同じか、もうちょっと複雑なのよ。ダン君もライカもきっと近い将来違う世界での戦いが待ってるでしょ。アニカがダン君を。サクヤがライカを、支えていこうって。多分思ってるんじゃないかな」
「僕は皆にも感謝してるよ。父さんや母さんがいつも言ってたもん。平和は皆で勝ち取るもんだって。僕とライカだけが背負っているもんじゃないって。それが守りたいものを守ることに繋がるって」
「そうよ。皆は一人のために。一人は皆のためにってね。ダン君やライカは皆のために。皆は二人が戦いやすいように一緒になって戦うのよ。だから気持ちが籠もっていくの。サクヤがライカに。アニカがダン君の力になりたいって思うように」
「そうなのか!それで仲がいいんだ。サクヤ姉さん!」
「ええ!ダン君知らなかったの?」
「うんとね・・・ただケンカばかりしてるから姉弟みたいに」
「そりゃそうね。でもダン君もアニカちゃんのことちゃんと考えてあげなさいよ。男ならね」
「はあーい。一緒にいるとすぐお姉さん振るからなあ。負けず嫌いだし・・・」
「ダン君は女心を勉強する必要があるみたいね」
「はは。アニカの女心かあ。・・・」
ダンは顔で笑って心のなかで異性の好きと友達の思いとの区別をつけられないでいた。
「まあ、そのうち分かるわよ。こればっかりは焦っても仕方ないしね。何かに悩んだら相談に乗ってあげるから何でも言うのよ」
「うん、ありがと」
ダンとウサギの人生恋愛相談タイムであった。
右手の丘の上にお城を見ながら街道を”ゴトゴト”と竜車が進んでいると左の森で何やら悲鳴のような騒がしい声が聞こえてきた。
「だ、誰かー。誰かたすけてー!」
「ダン、誰か人が襲われてるみたいだよ」
「どこ?」
「左前方の森の方向。今、悲鳴が聞こえてきた」
「わかった。ちょっと見てくる」
「私も行くわ。怪我してたら大変でしょ」
ダンは同行を申し出たサクヤの顔を見た。
「サクヤお姉さん、・・・じゃあ行くよ」
「今の間は何?ま、まあいいけど」
ウサギは一人クスクスと笑っていた。ライカは一人御者台から様子を伺っている。
森の中に入っていったダンとサクヤ。奥に行くに連れ段々騒がしくなってきた。
ライカは胸の奥で郷愁めいた何かを感じていた。
遠い遠い過去の記憶。
フローラを助けた瞬間から何か心に詰まる思いを感じていた。
大黒龍アベルナーガによって導かれ蘇った記憶。今なお目覚めぬ記憶のカケラをつなぎ合わせるように思い出せないでいるジレンマに胸を焦がされそうになるのをじっと耐えていた。
村長「おーい!マサ。ウイーッ。精霊様から加護もらっちったァ。ウイー!」
マサ「おっ上機嫌だねえ村長。でっどんな加護貰ったんだい?」
村長「ほれ!こーんなおおきな土産も入る加護」
マサ「お前、それは駕篭だろ。過誤できねえな!」
村長「ん?何か今旨いこといったか?」
マサ「だめだこりゃ」