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40 記憶の欠片

スザクの戦いも気になるし、ビャッコとアニカのその後も気になりますが。


そしてマサのことも。その上にダンたちの前に突然現れた者は誰?

「君は・・・・誰?」


 ライカは胸の奥で郷愁めいた何かを感じていた。


 遠い遠い過去の記憶。大黒龍アベルナーガによって導かれ蘇った記憶。今なお目覚めぬ記憶のカケラをつなぎ合わせるように思い出せないでいるジレンマに胸を焦がされそうになるのをじっと耐えていた。


「今、助けてあげるからもう少し頑張って」


「ううっ、あ、あ、・・・・」


「まだだよ。眠っちゃだめだよ。サクヤ、サクヤ。早く・・・」


 ライカは脱力しそうな血だらけになっている謎の人間を抱きかかえてサクヤたちがいた方向に走ろうとして、


 ”ギャオオオオオーーー”


 一匹の魔物に前を塞がれた。


「君はまだこっちで相手してるところだから、よそ見しない!」


 ダンが飛んできて魔物とライカの間に飛び込んできた。


「お仕置きその1。サクヤ姉さん風行きまーす!」


 ダンが手を合わせ、精霊術で風を起こし周りを取り囲んだ。


 そして雷を起こしまるで鞭のようにしなる雷鳴で魔物を順番に打ち付けた。


 ”ビシッ、ビシッ”


 ”ギャーーンッ”


 ”ギヤイーーーン”


 悲鳴に近い鳴き声を上げながら、しかしまだ睨みながら唸りを上げている魔物たち。


「ライカ。どうなってるの?」


「ああ、サクヤ。この人を回復してやって。あの魔物にだいぶやられたみたいなんだ。特に頭のほうが」


「いいわ。直ぐに治るかわからないけど。やって見るから。あんたダンの応援でもしてなさい」


「またぁ、すぐ人を応援団扱いするんだから。はいはい、応援してきますうーだ」


「さっさと行ったいった。ここは私達に任せて」


「了解」


 サクヤがライカが確保した人間の治療に入り、ウサギが周りを警戒しながらダンの戦いぶりを見ていた。


「荒削りだけど、流石師匠が仕込んだ逸材ってとこね。無駄も多いけど遊んでる感じが何とも・・・」


 感心しながら半分呆れていた。あれだけ無駄に指弾を打ち込んでも、魔力の枯渇も気にしていない。


 1時間近くが経過した。


 20匹以上いた魔物もあと2.3匹。


「ここはライカと連携プレイで・・・」


「じゃ、行くよ。呼吸を合わせて」


 二人が背中あわせで立ち、両手に魔力を集中。4つの光を回転しながらつなぎ合わせた。


 ライカから離れた光の玉をダンが自分の光とくっつけて一振り鞭打つように魔物二体めがけて横薙ぎに薙ぎ払った。


 一閃。振った光は薄い刃に変化し、魔物の身体を通り過ぎた。


 未だ魔物は唸っているが、ダンは空手の気合のような締めのポーズ。


「押すッ」


「オスッ」


 二人が決めのポーズで後ろを向き拳と拳を突き合わせた頃、魔物たちの身体の上と下がズルリとずれ、上半身が地面に落ち、魔物たちは息絶えていた。


「あんたたち。師匠に変なこと吹き込まれたでしょ」


「んん?今の?決まってたでしょ?」


「ははっ、師匠にあったら絶対に言うわ。間違ってるって」


 ウサギの抗議もダンたちには通じなかった。


「サクヤ。話はできそうかい?」


「んん五分五分ね。どうやらこの子、女の子みたいね。ライカ、そっちの手から魔力を流し込んでみて。そ〜っとよ。いやらしいことしたらだめだからね」


「いやらしい事ってなんだよ。この子まだ小さいから子供だろ。それに手握らないと魔力も送れないだろ」


「だから手だけだからね」


「分かってるよ」


 ライカが手を握り魔力を贈り始めた。


「ゆっくり、ゆっくり、暖かくなるようにゆっく?り??、ひゃあーってウサギさん何してんですか。間違えてびっくりして手離しちゃったでしょうが」


「あんたがなんか妙にその子の手をしげしげと眺めてるから、イタズラしたくなったんでしょうが」


 真剣に魔力を送り込んでいたライカの首筋にウサギが人差し指で精霊術で起こした冷たい風を送り込んでいた。


「もー、真剣に魔力を流してるときに反則じゃないですか。何か人をエロオヤジみたいに見るのやめてもらえますぅ!」


「そんな目で私は見てないわよ。サクヤとは違うわよ。私はただ面白いのが好きなだけ」


「あ〜あ。八人衆でちゃんと見てくれるのタンジさんだけだわ。僕は何て不幸な星の下に生まれたんだ!うう」


「何嘘泣きしてんのよ。早く魔力送らないとこの子死んじゃうわよ。それに、いつまでも手、握ってないで。サクヤにまた怒られるわよ」


「はいはい。はーっ」


 ライカはため息を吐きながらいつの間にか女の子の手を握りしめていた自分に、自分でびっくりしていた。


「やばいぞ。無意識に手を握っていたのは言い訳できないかも・・・」


 そう独り言をいいながら、何となくサクヤの方をみてみると、今にも目から光線を出しそうなくらい睨んでいた。


「い・・・いや、これは違うんです。あの・・・これは・・・違うんです」


「・・・・・」


「ダーン、ダーン。ちょ・・・ちょっと、こっちきてくれる?」


「いまいそがしいっ」


 ダンに拒否されてしまった。ダンも火中の栗を拾いたくはない。そんな心境だったのだろう。


「うう、ダンの薄情者。こんなとき分身解除してくれてもいいのに・・・」


 涙目になりながら魔力を女の子に送り込むライカだった。




 野営地に戻り、一同はライカたちが獲ってきた獲物を料理して食事の支度をしていた。


 時々サクヤとウサギが交代で女の子の様子を見に行っている。


「やっと落ち着いたみたいね。さあもう遅いから食事して明日に備えましょ。今夜は私が火の番するから、ウサギはあの子の方をお願い」


「いいわ。気づいたり、何か様子が変わったら教えるわ」


「お願いね」


 サクヤとウサギはそれぞれの持場についた。


 ダンとライカは食後の運動、少し軽めの戦闘訓練と技の開発。


 ライカが作った新型ビームライフルのテストも兼ねての訓練をし終えてダンは眠りについた。ライカはこれからダンのために新型のスーツ開発の構想を考えていた。


 しかし、ライカは助けた女の子が少し気になっていた。記憶の奥底に何かこびり付いているような、思い出せないもどかしさがこみ上げてきていた。


「どこかであったような?何処だ?あの子は誰なんだ?何処から来た?」


 だんだんスーツの構想どころではなくなってきた。


「今夜はだめだな。明日あの子が目覚めたら兎に角確認してみよう」


 翌朝、ダンたちが起きてくるとサクヤと女の子が向かい合って話していた。


「おはよう、サクヤ。この子、何か分かった?」


「それが、言葉が通じないのよ」


「ええッ、言葉が?」


「そうなのよ。ウサギも話してくれたけど、此処のどの言葉も通じなくて」


「ダン、ちょっと念話で送り込んでみてくれる」


「分かった。じゃ、やってみるよ」


 ダンは女の子の向かい側に座り女の子にわかるように深くお辞儀をした。


 それから彼女の手のひらを前に突き出させ、ダンと向い合せで手のひらを合わせる格好になった。


 されから暫くダンの瞑想が始まる。


 程なくして変化はあらわれた。


『聞こえるかい。僕の話してること、わかる?』


『はい、言葉が理解できなくてごめんなさい』


『此処にいる皆が君のこと心配して助けてくれたんだけど。聞いてもいいかな?言えないことや言いたくないことは言わなくていいけど。せめてなんで魔物に襲われてたいたのかきかせてくれないかな?君は名前は?何処から来たの?』


『はい。助けていただきありがとうございます。私の名前はフローラ。ゴード星で生まれ育ちました。私は船で此処へ来たんです。あなた方が言う魔物とはサウザーウルフと言って獰猛で何でも食べる力の強い生き物で、いくつもの星の住民が滅んでいきました。それを私の仲間たちが群れを分断することに成功して何とか冷凍して船に載せて牢獄まで運んでいました』


「フローラ?」


 ライカが彼女の名前を聞いて何かを思い出そうとしていた。


『へー!冷凍して閉じ込めたんだ。船っていうのは?』


『私達は星から星へ旅をする民族で少しずつ食料とか資源を立ち寄った星でもらってはその星で困ってる住民の手助けをして生計を立てていた。言うなればそれを商売としていました。その移動手段が船なんです』


『ダン。ちょっと代わろうか』


『いいよ。僕の友達とちょっと代わるね』


『フローラ。ぼくの名前はライカ。今のはダン。君の傷を直してくれたのがサクヤ。そんで、その横の耳の長いのがウサギ。もう傷は大丈夫かい?』


『はい、おかげでもうすっかり。ありがとう。何かお礼をしたいのですが・・・』


『お礼はいいよ。それより此処には船で来たと言ったね。見たけどそれらしいものは見当たらなかったけど?』


『それはここに隠してあります』


 フローラがライカに手渡した小さな箱に鍵が入っていた。鍵は側面にボタンらしきものが並んでおり、それぞれに数字が書いてあった。


『これは船の鍵?』


『船が不時着したときの衝撃でサウザーウルフが逃げ出したら大変だとおもい閉じ込めるつもりで・・・』


『それが間に合わなかったと』


 フローラはコクリと頷いた。


『船の中にはまだサウザーウルフはいるの?』


『たぶん全部出たと思います』


『ゆっくり身体を休めて。船は僕らが調べてサウザーウルフは退治しておくから安心して』


 ライカは彼女を見てまだ思い出せないが何となく懐かしさを感じていた。


『君はそのサウザーウルフを運んで牢獄に運ぶ途中だったの?』


『はい・・・一族が次の星へ行くついでにと牢獄に立ち寄りサウザーウルフを運んでいたんです』


『それで?君は皆と逸れて此処へ?』


『いいえ。輸送団は・・・・一族はある者に襲われて全滅しました』


『えええ!!襲われて全滅?一体何に?』


『太陽から太陽への銀河を渡って飛ぶワームホールと言うトンネルを潜って出たところを黒い霧の塊のようなものに襲われて・・・』


『それで君だけ逃げれたと?』


『いいえ。私は偶然にも船のパワーソースが暴走して、光速を超えてしまい、多分次元転移したのだと思っています。船には位置を示す装置が組み込まれていましたが、位置不明と出ていましたから』


『家族のことは一緒に調べて解決できるものならやってみようよ。ダンと僕と此処にいる腕利きたちでなんとかできると思うよ』


『で、できるんですか?!そんなことが?』


『まあ、タイムマシンと言うわけにはいかないけど、此処にいるダンがそれに似たことをしようとしているんだ』


『それで?それは成し遂げられたのですか?』


『今進行中ってとこ』


『そうですか。では、私のことも調べてもらっていいですか?それで・・・できれば一族も取り戻したいです。無理を承知でお願いしていいですか?』


『無理か無理でないかはやってみなけりゃわからないって。ねえダン』


『そうそう。まずはアベルのおじさんに調べてもらって、何処でどうなって此処へたどり着いたか調べてもらおうよ』


『まあまあ、そう急がなくても。先にマサの叔父さんを見つけて南の様子も見ないと。そんで帰る途中にアベルさんとこに寄ればいいんじゃない?』


『そうだね。そうしよう』


 ライカの言葉にダンも同意。フローラも頷いた。


 近くで見ていたウサギとサクヤは何を話しているやらと、話の成り行きを気にしながら三人の様子をチラチラと見ていた。


『これから少しずつ言葉を教えるから、声に出せるかい?』


『はい。何とか。頑張ってみます』


「ウサギお姉さん、この子フローラって言うんだって。何処から来たとか細かいことはアベルの叔父さんに見てもらうってことになったんだけど・・・」


「わかったわ。まあ修行しながら少しずつ知り合っていきましょ。何ができるのか、何ができないのか見てみるわ」


「頼むよサクヤ。何となくこの子と僕の境遇が似てる気がしてしょうがないんだよ」


ライカはどうしても自分と重ね合わせ、何とかしてあげたい衝動を抑えられない自分がいることにライカ自身まだ気づいていなかった。



ダン「フローラはこれからどうなるのでしょうね?」

サクヤ「ふん!」

ライカ「静かにしずーかーに」

ウサギ「あんた!あの子のなんなのさ」

村長「◯ウ◯タウ◯ンブ◯ウ◯バ◯ド?」

ダン「知らないよ?」

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