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27 激突

今回は、長くなってしまいました。スラスラ行くもんで、調子に乗りました。

飽きずに、最後まで読んでやってください。

 タンジとコンコールの戦いはタンジの圧勝だった。


 魔族の中には戦いの決めごとの中に、他の者の戦いに割り込んで戦ってはならない、そんな暗黙のルールが存在する。魔族が一枚岩にならない理由が此処にある。


「今度は僕の番だ」


 ダンは今の戦いをしっかりと目に焼き付けていた。


「ダン君はダン君の戦い方をしたら良いからね。スーツ試すんでしょ。本当の初陣なんだから油断しないで。慎重にね」


「うん判った。性能テストだからね。やってみるよ」


『ダン。少し時間引き延ばして貰えると面白いことが出来そうなんだけど』


「何か出来たの?ライカ」


『もう少し。時間稼いで』


「直ぐには終わらないと思うけど、やってみるよ」


 ダンに直接頭の中へ意思を送ったライカとの会話。戦闘中に何かをするつもりである。


「お前達!!コンコールを・・・まあ、遣られた者は帰らないが、お前達には少し痛い眼にあって貰わないとなあ。それと、もう手遅れだと思うが、今頃山の麓から我が軍隊が此処へ進軍している頃。お前達を逃がしはしないぞ!!」


「最初から逃げる気無いから。助けを呼ぶなら早いほうが良いよ」


「坊主。言うでは無いか。ふふっ面白い。得意の技で勝負してやろう。お前は何が得意だ。体術か?剣術か?魔法の威力か?どれでも勝負してやるぞ?」


「そうだなあ。どれも同じなんだけど、強いて言うなら剣術かなあ?あいや、魔法もあれやってみたいし、魔法も捨てがたいなあ」


「どれにするか早く決めろ!お前を殺すことに変わりは無いんだ」


「そんじゃ!じゃんけんで」


「じゃんけん?なんじゃそれは?」


「グーと、チョキと、パーで勝負!」


「舐めて居るのか、小僧・・・」


「いやいや、本気だよ。じゃあ試しに受けてみる?」


「そんなもんで私に勝てると思って居るのか?」


「やってみる価値はあると思うよ!」


「では先に仕掛けてこい小僧。ムイラスがやられた一撃とやらがどの程度の物か受けてやる」


「ダン君、大丈夫?無理しないでよ。試作段階だからね」


「タンジのお姉さ・・がんばぶ(頑張る)。しかかんが(舌噛んだ)」


「後でね、ダン君。ライカといらっしゃい」


『何でぼくが?』


「何でも良いから掛かってこーい!!!」


「怒ってるみたいだから行くよ」


『もうすぐだから。頑張って』


「魔族の人には悪いけど結構痛いから気をつけてね。それじゃあ・・・ジャーンケーンパアー!」


 ダンの掌がマカリアの方に向けて差し出された瞬間、ダンの掌の大きさのまま空気の層がズレたように穴が開き、マカリアの胸元目がけてダンの掌の形をした空気が襲ってきた。


「ええい!!」


 杖を振り身体の前で呪文を唱え、杖を突き出した。


 ダンのてのひら空気砲とライカは呼んでいた。その空気砲がマカリアの防御魔法に激突。瞬間、爆発が起こり辺りは一瞬にして真っ白になった。


「一寸弱かったかな?少し魔力を絞りすぎた」


『一発一発大事に調整してよ?失敗したら、アベルさんに直して貰わないと・・・気をつけてよ』


「はいはい」


 煙を風魔法で消し去ったマカリアは、埃まみれになっていた。


「思わぬ威力で引き下がってしまったが・・あれがムイラスを屠った者の力か?それほどの物でも無かったが。やはりムイラスが甘かったのか?」


「何をぶつぶつ言ってるの。次行くよ!」


「生っちょろい攻撃。いつ来ても良いぞ。片手で受けてやるわ」


「うっ、片手って言った?じゃあ受けてもらうよ。ジャーンケーン、チョキー!!」


 ダンの出したチョキーで中指と人差し指から光りの輪が広がり段々大きくなり回転しだした。


「さあ片手で受けてもらうよ。でも指で挟まれて投げ返されたらどうしよう。う、まあいいや。ええい、行っちゃエー!!」


 丸いノコギリ状の光りの円盤を縦回転させてマカリア目がけて投げた。


「はあーはっはっはっは!やはり子供よ。まだまだ甘いわ」


 マカリアが片手で光りを受け止めて、軽ければ投げ返し、重ければその場その場で捻りつぶすつもりで居た。


 飛んできた光りの円盤を腰を落として受け止める構えをして初めて気がついた。


「あの円盤ただの光りだけでは無いな。こ、こいつは・・」


 直前で斜め後ろに下がり、杖に魔力を流し、光りの円盤の真ん中を糸を通すように引っかけて止めた。


「あちゃー!バレたか」


「こんな子供だまし。引っ掛かるものか!」


「バレたけどこんなことも出来るんだよねえ」


 ダンは指を光りの円盤に向けた。


「バーン!!」


 ”ドカーーーン”


 またしても濛々と土煙。マカリアは再び埃まみれの泥まみれであった。


「一度ならずまたしても小賢しい・・・・今度はこちらが行くぞ。覚悟は良いな小僧!!」


「えええっ。もう一つあるんだけど。まあ二回やらして貰ったし一回ぐらい攻撃させてあげるよ」


「何を余裕ぶっている。これでお前は死ぬのだ」


「もうそろそろ良いかな?ライカ?」


『もうちょっと』


「ダン君攻撃来るよ!」


 タンジの忠告で守備の構えに集中したダン。


 スーツの耐久性テストのつもりでマカリアの攻撃を受ける体制を取った。


 マカリアは呪文を唱えた。ダンのような遊びの無い殺傷能力十分の最大魔法を。


 周りの空気が震えだし、風が次第に回り出した。雲が黒く立ちこめそこかしこに雷鳴が轟き、辺りは一瞬にして暗闇に包まれた。


「受けて見ろ!!魔族最大魔法、このイカズチを!!」


 ビカビカと光る稲妻を集束しダン目がけて落としてきた。今まで対戦したムイラスにもリカンドにも攻撃はされなかったが、今回はスーツの性能テストも兼ねているので、手早くやっつけては意味が無い。


「来るなら来いって、ちょっとこわーーーいよーーー!!」


『我慢!我慢!怪我したら変わってあげるから』


「そんなこと出来ないよ。怪我だけ変わって貰うなんて。何とか受けきってみせる」


 ダンとライカは分身で分かれている片方が怪我をしても片方が身代わりになることが出来る。


 稲妻の塊がダン目がけて落ちてきた。


「きたきた。ライジングシールド。ダブルシールド!」


 両手に盾を出し頭をカバー。後は胸を突き出し稲妻の束を受けた。


 ”ドーーーーーーーーン”


 地面に突き刺さったミサイルが炸裂したような音が響き渡った。


 今度はダンが立っていた周りにクレーターが出来ていた。


「どうだ一発で決めてやったぞ。はーはっはっは・・・何、だと!・・・」


 クレーターの中心一番底に頭に盾を掲げて胸から湯気か煙か判らないような物をもくもくと上げて立っていた。


「いててて。効いたあー。熱いし痛いし、でも思ったより被害が無い。何処も焦げてないし破けてない。少しだけ魔力でカバーはしたけど、これなら大丈夫!」


『心配だったけど、カミナリ様が落ちても大丈夫だね』


「カミナリ様って聞くと何とも、罰が当たったみたいでやだなあ」


『はは。こっちは出来たよ。スーツの補助具だ。早速テストしよう。そっちに行くよ』


「ほーい」


 ライカの分身を解いたダンは両腕に金色の腕輪を嵌めていた。


 未だ驚きの表情のまま立ち尽くしているマカリア。マカリアにはあれ以上の魔力を上回る魔法は無い。


「あれを無傷で受けきったとは・・・こうなっては・・・」


「手こずっているようだなマカリア」


「た、隊長!申し訳ございません。私の最大魔法をあの小僧受け切りやがったんです。攻撃は今ひとつですが、耐久力はおかしな程強いですよ。あの小僧!」


「んん?あの小僧、何か纏っている、のか?身体の周りに魔力を張り巡らしているのか?」


「ええ?そうなんですか?」


「それにしてもマカリアの最大魔法を受けきるとはな。今度は俺が相手をしよう」


「隊長。気をつけてください。もうすぐ応援も来ますから」


「そんなことを言っておるから舐められるのだ!!一気に殺してしまえば良い」


 ガフラーはダンに向けて大剣を腰だめに構えた。


 ダンはまだ棒立ちのまま。


『ダン、両腕の腕輪に少し魔力を流してみて』


「こうかな?こんな感じ?」


 ライカとやり取りしていて、ガフラーのことは眼に入っていない。


「何か動いた!両手からエネルギーが・・って、あれ?長い剣になったよ?こっちは棒状の槍かな?」


『片方は剣だけど、もう片方は槍にも盾にもなる優れもの。ちょっと戦い方にコツが居るけど使えると思うよ』


「んじゃあ、一丁頑張りますか。アベルの叔父さんに笑われないように」


『無理はなしね』


「了解!」


 ダンとライカの会話が終わったときはすでにガフラーが走り出していた。後数メートル、一瞬早くダンはガフラーの鋭い大剣の横凪を身体を低くして避け、逆方向に飛び出した。着地したところへまたしてもガフラーの剣。


 今度は避けずに片手を盾に、大剣を受け流し、剣で斬りかかった。


 ガフラーも弾かれた剣の反動を利用して身体を回転させ、ダンの剣を返した大剣で受け止めた。


 火花を散らし、力ずくで押し合いにらみ合った。


「なかなかやるな。久しぶりに面白くなりそうだぜ」


「まあテストの最中なんでね。少しだけつきあってよ」


「テストだと。何か知らんが、そんなもんに付き合うつもりなど無い。さっさとやられてくれ」


「残念だけど、遣られるわけに行かないんでね。そろそろパワーも貯まったかな?行ってみようか」


「んん?何をするつもりだ?」


「見れば判るって」


 ダンが両手に魔力を流し、腕輪が光った。


 大きなグローブを嵌めたような形に変形した。


 ダンの腕に光りが集まっていた。両手に集めた光をグローブで握りしめ、ぽいっと放り投げた。


「ジャーンケーン、グウー!」


 放り投げた光りを握ったグローブごと、ダンはパンチングでガフラー目がけて飛ばした。


「痛ーっ。すっぽ抜けちゃった」


『でも大丈夫。かなり頑丈に出来てる・・・はず?』


「?」


 ガフラーは飛んできた、光りを握りしめたグローブを躱すのに悪戦苦闘していた。


『あれには追跡装置が付いてるから爆発するまで離れないよ』


「面白い。いけ!そこ!そこそこ!違うあっちが、こっちきた?あれ?・・・やばいんじゃ?」


 ダンが慌てて走り出した。


 ガフラーがあまりにグローブが纏わり付き段々逃げ場が無くなり、気がつけばダンの方向へ走っていた。


「何でこっち来るの?」


「お前の打ち出した奴だろうが!厄介な物打ち出しやがって」


「すんなり打たれてくれたら僕が逃げなくって済んだんだ。早くやられてよ」


「お前が自爆しろ!」


 自前の攻撃にやられるわけには行かないダン。ガフラーも息絶え絶えでも、遣られるわけに行かず、必死で逃げ躱している。


「こうなったらー!!」


 ガフラーは大剣を胸の前で真横に構え、グローブが飛んでくるタイミングを計った。ダンはガフラーの前を走っている。ダンもタイミングを見て飛び上がりガフラーをやり過ごそうと狙っていた。


「このやろー!!!」


 ”ガッシーン”


 ガフラーは大剣の樋の部分で光りを掴んだグローブごと打った。


 大剣がボッキリ折れたが、打たれた反動で数十メートル飛ばされた光りを握ったグローブは、爆発を起こした。


 またも大きなクレーターが出来ていたが。今回は誰も巻き込まれなかった。


「またアベルの叔父さんに怒られるよ。自然に感謝がたりんのじゃ、とか何とか言って」


『ダン。それより腕輪。回収しないと』


「爆発したからね。大丈夫かな?」


『少し魔力流してみて。腕に』


「こうかな?」


 ダンは手刀の要領で魔力を流してみた。


 暫くして爆発で出来たクレーターの真ん中でモゾモゾと動くものがあった。


 ダンの腕輪が魔力に引き寄せられて動き出していた。


『あれは?ダメージ大きそうだね。後で回収しよう』


「ライカ。時間が無いから今から修理頼めるかい?下から大勢が来てるみたいだから」


『そうみたいだね。判った。回収は僕がやるよ』


 ダンは分身を使いライカと分かれて活動した。


「何だと。二人に分かれた?どうなっている?訳がわからん」


「わかんなくて当然!僕らは二人で一人だからね」


「ダン君。あんまり喋らない方が良いわよ」


「そうでした。機密情報は喋らないッと」


「それよりテストはどうなってるの。旨くいってるの?」


「それは大丈夫。さっきのカミナリ受け止めたのでいけそうな感じ。それより新兵器が壊れちゃったから今ライカが修理中」


「そう。それより早く二人とも決着付けないと、下から来るわよ。相手しても良いけど。久々にサクヤと二人居ることだし」


「クニ姉さんは?」


「ウサギとルコイの村に行ったわ。マサさんから呼び出しがあったって」


「へえ、父さんから?」


「詳しいことはこれ、片付けてからね」


「わかった。テストももう終わったから。魔族の人たち、さっきより痛いの行くからね」


 肩で息をしていたガフラーも落ち着きを取り戻していた。


「遊びは此処までだ。こっからは本気を出させて貰おう」


「それは前の魔族の人もいってた台詞だよ。死んじゃったけど」


「やかましい!!その口聞くのも今のうちぞ。たった今黙らせてやる」


 折れた大剣の代わりに、腰に添えていた剣を抜いた。


 ダンも久々に剣を抜いた。精霊様に頂いた、父マサが大事に磨き上げた剣。精霊剣。


 修業の間も素振り程度しか抜いたことが無いほど大事にしていたが、魔族との対戦。自然と腕が剣に伸びていた。


「父さんが獣人八人衆に連絡とは。スザクの叔父さんに連絡したいことが起きたって事だよね」


『ダン、心配はいらないよ。君が思ってるより、叔父さん強いから』


「そうよダン君。師匠も直ぐに動いてくれるから心配しないで。目の前よ目の前に集中」


「判った。」


 精霊剣がダンの意思に呼応して輝きを増していった。


「タンジ姉さん、そっちの魔族の人捕まえてて」


「いいわ。任せて!」


「行くよ魔族の人。耐えて生きてたら逃がしてあげるから」


「ほざけ、小僧。お前も土にも残れないくらい燃やし尽くしてやる」


 ダンは精霊剣を片手で真上に振りかざした。


 辺りがまぶしくて見えなくなるくらい輝いている。


 ガフラーも剣に魔力を込めだした。こうなれば魔力総量の出力勝負。


 ダンは周りの魔素も吸い込んで剣に送り続けた。


 ガフラーはしびれを切らし、自身最大魔力を剣に込め走り出した。


 ダンは微動だにしない。


「小僧、これで終わりだあーーー!」


 精一杯魔力を込めた剣を怨念も込めて振り抜いた。


 魔族の怨念の籠もった剣、一閃。


 しかし届かなかった。


 光る、光る、精霊剣の前に。魔族の怨念はかき消え、ガフラーの剣も腕も足も。


 声も。消えた。もう腕も何処にあるか判らない。


 光りの中でもがいているはずの自分の手足が、感覚が無くなった。あの小僧に届いたのか?いや、光りに触れただけで全てが消えていった。何も残さずに。怨念すらも。




 光が消えてダンが剣を鞘に収めたところで、タンジが声を掛けてきた。


「捕まえたけど。これ、どうするの?」


 タンジの手には、小さな籠。ネズミの入った籠だった。



次回ダンルコイに帰る・・・かも

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