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19 修業②

短いお話です。次回でこの章が終わり、新章突入!!

 龍の背中と言われる山での修業はダンにとって夢の中で生活していて、現実のものではない、神様になったようなそんな錯覚を起こさせた。


 人里には見えないように結界を張り、微精霊たちに見張って貰いながらダンの修業は続いた。


『ダンよ、そろそろレベルアップと行こうかのう』


「はい。だいたい慣れてきたので大丈夫かも」


『ほほう。言うでは無いか。これならどうかのう』


 アベルの出した煙の中から黒龍が飛び出した。



 一旦空に舞い上がり、反転急降下。ダン目がけて真上から落ちてきた。高空から羽をすぼめてロケットのように空気を切り裂き、摩擦で火の塊となりダンに襲いかかった。


 ダンも空気の層を利用し、何重にもバリヤーを張った。しかしそれをものともせず黒龍はダン目がけ突入。大爆発が起こった。


 濛々と土煙が視界を遮り、山の形を変えてしまうほどの衝撃波が空気を振動させた。


 一陣の風が土煙を飛ばし、その中に黒龍が立っていた。


 黒龍はまだ土煙が残っている大穴のあいたところをじっと睨んでいた。


「昇龍光弾波!」


 穴の底から声が、叫びが、再び空気振動を起こしやがて土煙が蒸発した。


 姿を現したのはダン。穴の底で黒龍を睨みながら手には30センチほどの光りの球。両手で持っていたが頭の上へ放り投げ、自身は一度屈み込み後に思い切り飛んだ。


 光りの球も同じく高空に浮かび上がり、やがて制止した。


 上から今度はダンが黒龍を睨みながら、


「これで決めてやる。龍蹴檄ドラゴンシュート


 先程の黒龍が飛び込んだスピードより倍のスピードで光りの球が龍を襲った。





 辺りは静かになった。


 森が消えた。


 山がなくなった。


 核爆発が起きたような大きなクレーターがアベルの結界の内側に丁度収まるように深く掘られていた。所々で煙が上がっていた。


「どうだ!今日はやっただろう。昨日より少しだけスピード上げたからね」


『こらー!!』


「ひっ!!!」


 大きな声に驚き、ダンが後ろを振り返った。


 大きな身体に丈夫な顎。鼻から炎が零れ出ている。普段ならば。


 この時ダンが見たのは、鼻から煙を吹き出し頭から湯気のような煙のような何とも言いようのない靄を纏ったアベルがそこにいた。


「アベル叔父さん、顔が煤で汚れてるよ?」


『誰のせいだと思っておる。あれほど力を加減せよと言っておったのに、倍ほどの大きさで打ってからに、・・・ゴホツ』


 動くごとに鼻から口から煙を吐き出し、それを見ているダンが笑いを堪えている。


「あれでも力を二十ぐらいに落としたんだけど」


『・・・油断して昼寝などしておったからな。黒龍にはダンを苦しむほどに追い詰めよと言っておいたのだが・・・何もしないままやられてしまったわい』


「えええ!叔父さん昼寝してたのー?」


『しまった。聞こえておったか。心で呟いたつもりが・・・』


「最近叔父さんが考えていることは大体わかるようになってきたもんねー」


『お前は・・・。成長が早いにもほどがある。身長も大人ほどまで伸びたし、魔力も来たときの倍になったし。これはスザクも楽しみにするはずよ』


 アベルのボヤキとも取れる言葉に舌を出し、誤魔化すダン。


 アベルが仕方なさそうに周りを古龍魔法で”再生”していった。山ができて、小川が流れて木々が青々と葉を茂らせ、ダンが修業し出す前の姿に戻っていった。


『これで良し。今度はちょっとやそっと崩れないほど頑丈に拵えたのでな。ダンよ思う存分動くが良いぞ』


 ダンのために魔法を使い”ダンのため””弟子のため”身体が勝手に動く心の高ぶりを喜んでいた。


 その後ろ姿、嬉々として魔法を駆使しどや顔で山を見渡している後ろ姿が、一本の煙を頭から出しながら黄昏れているアベルをルコイ村の村長マッコイの後ろ姿と重ねていた。


 何となくほっこりと和んでいた。


『ダン。我の頭で和むでない。こうなったのは誰のせいじゃ』


「やり過ぎました。ごめんなさい」


『い、いやまあ。そう素直に謝られるとやりずらいわい。・・・兎に角、明日からは魔力のコントロールを徹底的にたたき込む』


「はーい。今日もありがとうございました」


 毎日修業の終わりにするかけ声は、最初にダンがしたことでアベルが気に入ってしまい毎回することになったのである。




「ダン君、ご飯持ってきたわよ」


「タンジのおば、お姉さんいつもありがとう」


「今、叔母さんって言いそうにならなかった?」


 ダンは目が回るほど首を横に振った。


「良いんだけどね。明日のご飯がなくなるだけだよ」


「タンジ姉さん、あんまりダン君を虐めちゃだめよ。可哀相よ。ダン君、お姉さんが守ってあげるからね」


「何がお姉さんよ。私と二つしか変わらないくせに」


 ”ぐううううう”


「「??」」


「すみません。僕のおなかの音です」


「はいはい。ご飯にしましょ。クニ、お茶いれて」


「はいはい」


 修業の後の和んだ一時を過ごしていた。もうすぐ大きな戦いが始まることを、ダンたちはまだ知らなかった。



暫く忙しく、野暮用と言う奴が続きましたが、もうすぐそれも終わるので続きを楽しみに待っていてください。

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