表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/42

15 怪物と対決

魔族と怪物の板挟みに立ち向かうことが出来るのか?

 耳を引き裂く咆吼。

 空気を振るわせ岩肌を削りながら大地を揺らして強大な身体を、崩れた洞窟の入り口から表した。



 龍。黒い体色に身体の大きさ。爪や牙は言うに及ばず、手足や頭の角までが規格外である。


 そんな巨体がダンたちと魔族5人の間に現れた。



「アニカ!後ろに下がって!」

「うん!何なのよ。あのでっかいの。信じられない!」

「あれは・・・」

「叔父さん、あれが何か知ってるの?」

「・・・・・」


 ダンが好奇心と恐怖心に抗いながらスザクに聞いた。


「・・・・・」


 スザクはしばらく黙ったまま。




 後方では魔族の集団が慌てふためいていた。


「何じゃ?あの大きさは。ガルム様の使役している黒竜の何倍もあるではないか。あれを使役できれば・・・」


「リカンド様。あの龍をやり過ごしましょう。あの龍を使役するなど無理でございます。恐らく魔法も効きますまい」


「しかし何とかあれをモノにしたい。何かないか何か妙案は・・・」


「魔族に伝わる封印術を皆で唱えればあるいは」


「おお!それがあったか!」


「しかし、それをしたら奴らに追跡がバレてしまいますが」


「構わん。何処までも追いかけてやるワイ。まずはあの巨大黒竜よ」


「わかりました。では準備いたします。皆の者かかれ!」


「「「はっ!」」」


「では私は瞑想に入ります故、リカンド様にはしばしのサポートをお願いいたします」


「あいわかった」


 ガザルが瞑想に入り、リカンドは龍の動きを注意深く見ていた。



 その後方では、二人の影が様子を伺っている。


「あれは何をしている?従者の方が瞑想に入ったようよ」


 タンジの忍術”遠見”を駆使し魔族の行動を監視している。


「どうやらその様ね。まさかあの龍を使役しようと・・・」


「まさか・・・そんなことが出来るの?スザク師匠たちに影響はないの?」


 師匠”絶対”のクニはスザクたちを心配しだした。


「師匠に知らせておいで。私はここで妨害してみるから」


「了解。無理しないでね」


「早くいっといで。でないと師匠が龍を倒してしまうかも知れないし、万が一魔族の狙いが師匠たちの動きを封じる物だとしたら・・・早く知らせを」


「行ってくる」


 クニは一瞬でその場から消えた。



 ダンたちは岩陰に隠れ龍の動きを見ていた。


「叔父さんあれがどんな龍なのかしってるの?」


「あれは今では伝説となっている最悪の災厄。古龍だ。テンペストと仇なすくらい、忌み嫌われていたが全ての生き物の頂点にいる、この世界を統べるもの。と、言われているが、本人は行きをするだけで嵐が起き、身体を動かせば地震が起きる。誠にやっかいだと思っているらしい。大黒龍アベルナーガ。奴の名前だ」


「大黒龍アベルナーガ・・・」


 唖然と眺めているだけで、吸い込まれそうになるダンとアニカ。


 スザクは大黒龍アベルナーガの動きに違和感を感じていた。


「何が黒竜を動かしているのか。元々動きたがらないはずの、優しいはずの黒龍が暴れ出すとは・・・ん?」


「スザク様」


「クニか」


「はい。魔族が後方であの龍を使役しようと封印術で動きを止めようとしているようでございます。それと、スザク様たちにも攻撃があるやも知れぬと」


「心配はいらぬ。彼奴らの術でどうこうなる龍ではない。むしろ間違ってこっちにとばっちりが来ては敵わんなあ。位置を変えて様子を見ることにするか。ダンにアニカ。移動するぞ」


「はい。で、どうや・・・て?あれ?」


 クニを含め、ダンとアニカはスザクの転移魔法で後方にいどうした。


 近くにはタンジがいた。


「スザク様」


「タンジか。お前も来ていたのか」


「はい。クニに援護してもらいました」


「ん。良い判断じゃ。少し考えがある。合図したら援護せよ」


「「はい」」


「ダンよ。ここで練習だ。あの大黒龍に思念を送り続けよ。奴がダンに気づくように」


「へ?あいつに気づかせるの?」


「そうだ。彼奴を覚醒させる」


「叔父様。あれは寝ぼけてるって事なの?」


「それも有るが、何かにとらわれているのかもだ」


 どうにも納得いかないアニカを余所にダンに思念波を大黒龍に送るよう促した。


 前方の魔族たちは呪文を唱え出した。


 四方から唱え封印の呪文を大黒龍アベルナーガに浴びせた。




 そのとき周りの空気が一瞬にして白く輝く結晶のように一面を包んだ。


 霧と見間違うような白さに視界を奪われ、それでも魔族は呪文をやめない。




 しばらくして彼方此方でビカビカと放電現象が起こり、やがて封印呪文を打ち消すように放電が強くなり出した。


「この白い靄はあの龍がだしたのか?」


 ガザルたちの封印術を見ながら、リカンドは靄から放電された瞬間垣間見える龍の姿を睨みつけていた。




 ダンたちは白い靄の外側にいた。


「此処にはあの白い煙みたいなのは来ないわね。叔父様が止めているの?」


「風の呪文の応用だがね。ダン、もう少し集中して奴と交信してみなさい」


「うん。わかった」


 ダンはスザクの言うとおり集中して思念波を大黒龍に送った。


 ”GWUーーーRYURYURYUーーーooooo”



 ”GOOOOOWWWWーーー”



 ”DAーーー”



「大黒龍アベルナーガ、大黒龍アベルナーガ聞こえるかい。聞こえたら返事をしてくれないかい?」




『・・・・』



「大黒龍・・・アベルナーガ。返事をしてくれないか?」


『ダーレダー・・・ワレヲヨブノハ・・・アベルナーガ・・・オモイダシタ・・・ワレノナハ・・・アベルナーガ・・・』


「そうだよ。君の名前は大黒龍アベルナーガ。目を覚ましておくれ」


『オマエハ・・・ナニモノダ・・・ワレヲカロンジテハ・・・イタイメニ・・・アウコトニ・・・』


「違うよ。僕はダン。精霊セイメイ様に言われて世直しの旅をしているんだ。今は修行中だけどね」


『セイメイ・・・セイメイ・・・グググゴゴゴオオオ・・・』


「どうしたの?セイメイ様を知ってるの?」


「ダン、私が話そう」


「叔父さん」


「アベルよ、目を覚ませ。私がわかるか?」


『オマエハ・・・ダレダ・・・?・・・??セイメイ??ス・・スザ・・・スザク?』


「おお。思いだしたか?」


『おおお、思いだしたぞ。今気がついた。そうか、お前はスザク』


「そうだ。思いだしてくれて何より。偶然ここを通りかかって、もう少しでお前の寝起きの被害に遭う所よ」


『がははは。そうであったか。して、その子はお主の?』


「いやいや。私の子ではない。だが大事な子でな。後でゆっくりお前に話してやろう。お前の協力も欲しいしな」


『お主とセイメイがいるならば我の出る幕はなかろう』


「いや。この子を鍛えるのに力を借りたい。この子は強い。この能力を伸ばしたいのだ」


『なるほど。確かに異常なまでの圧力を感じるぞ。この感じ、我は夢で見たぞ。よし、後で話をしよう。ダンと言ったか?しばし待て。邪魔な奴らを懲らしめておかないとな』


「それなんだが。ダンに教えてやってくれぬか」


『そうか。ではダン。我の言うとおりにやってみよ』


「???へっ?何をどうすれば良いの?」


『まあ良い。古龍魔法。今の精霊魔法の原型になった魔法じゃ。ダンよ。手を出してその手の中に光を集めてみよ』


「こ、こうですか?」


『?!そ、そうじゃ。何じゃ?此奴出来ておるのか?スザクも人が悪い。出来ておる者を我に教えろなどと』


「いやいや。何も教えておらんよ。確かに魔法と精霊術の手ほどきはしたが、他はまだ何も教えておらんよ」


『そうなのか?それにしては初めてとは言えないくらい見事に作りおったわ。・・・よいかダン。その光玉を今度は両手で押しとどめながら圧力を強めていくのだ』


「こ、こうですか?」


 ダンの手の中の光が淡い黄色からまぶしい白に、やがて銀色に変わっていった。大きさも握りこぶし大から人の頭ぐらいの大きさに貯まっていった。


『ちょ、ちょっと待て。それは大きすぎる。そんな物打ち出したら、ここがなくなって星ごと飛んでしまうぞ。もうちょっと、もう少し小さく・・・』


「これくらいですか?」


『もう少しちいさく・・』


 アベルナーガが冷や汗を流して教えていた。


「これくらいでどうですか?」


『それくらいなら良かろう。山に穴が開くくらいじゃ。それを奴らめがけて打つのだが、今我が囲まれておる故、しばしそのまま待っておれ』


 アベルナーガは咆吼一発身体を一捻りした。山肌が砕け津波のように大木や岩がはじけ飛び、魔族たちを吹っ飛ばした。


 しかし魔族も強者揃い。それだけで行動不能になる者はいなかった。


 ガザルもリカンドを庇いながら。


「リカンド様。お怪我はございませんか?」


「大丈夫だ。急に暴れ出しおって。捕縛が無理ならせめて動きを封じて痛めつけてくれるわ」


 非難していた手下も集まり、攻撃に入る準備をしていた。




『ダンよ。魔族の位置は読めるか?気配をかんじるのだ。その感じた方向に飛ばせ』


「はい。・・・・・これだな」


 ダンは朧気ながら魔族の気配を読み取り、感じることが出来た。


「行くぞー!とんでけー!」


 ダンが発射した光のエネルギー弾は彗星の尾を引くがごとく、糸を引きながら魔族集団に向かっていった。


「ガザル。光の球が飛んでくるぞ。さがれ」


「リカンド様も下がってください」


「なーに。あんな小さな光玉ごとき、簡単にいなせる・・・」


 最初は小さく見えた光の球。近づくに従いだんだん大きく見えてきた。


「リカンド様あああ」


「ガザルううう・・・あああああっ・・・」


 魔族たちは自分たちが一太刀もダンやスザクに浴びせることなく終わることを後悔しつつ、最後の瞬間リカンドはガルムに向けて連絡用の虫を亜空間に投げ込んだ。


 ”ドカーン”


 爆発とともに辺りは砂煙でもうもうとしていた。


「風塵」


 スザクの呪文を唱えると風を起こし辺りの煙を飛ばした。


『どうだ。感想は?』


「凄いよ。こんな使い方があるなんて」


『もっと他にもあるぞ。どうじゃ、しばらく此処で修業するか?』


「えっと。先にエルフの里に行かないと。そこから帰ってきてから修業させてもらっ・・・て、どうしたの?僕、変なこと言った?アベルナーガの叔父さんって呼んで良いのかな?」


 ダンがエルフの里へ行くといった時点で、アベルナーガは当然此処にダンたちが残るもの、断られるとは思ってもいなかった。


 長い間のひとりぼっちで、寂しかったのが、久々に起きたら知り合いがいて、教える弟子が出来たと内心高揚を覚えていた。


「あの、いや、その、泣かないで。叔父さん、どうしたら・・・」


「アベルよ、ダンをいじめるな。お前にも子供がいるだろう」


『それじゃ。目が覚めて子供が見当たらず。そこから意識が、怒りで意識が飛んだのよ』


「ほう。子供が行方不明とは」


『そうじゃ。勝手に祠から出るなと言っておったが、我が眠っておる間に出たのであろう』


「近くにはおらぬようだが・・・」


『我も近くには感じぬ。ダンよ。我の子を探し出してはくれぬか。そのためにも早く其方に知恵を授けたいのじゃが・・』


「叔父さん、どうしよう」


「そうだな。ダンはここで修業しなさい。私はアニカをエルフの里まで送ってこよう。送ったら直ぐに帰ってくるが、焦ることもあるまい。黒龍の子だ。簡単には死にはせんよ」


『そうあって欲しいが、まだ若い故純粋すぎる。洗脳されれば悪も又、善なのじゃ』


「よし、ダンよ。大黒龍アベルナーガに師事し、原始魔法を体得せよ。私がアニカをエルフの里へ送っている間に。行きは時間をかけて行くが帰りは・・・まあそれなりか。兎に角、焦らずじっくり修業せよ。アベルよ、ちょっと話がある。ダンよ二人だけにして貰えるかな?」


「はい、叔父さん」


 大黒龍アベルナーガとスザクはしばらく黙ったまま動かない。


「ダン君。スザク師匠は何をしてるか知っているか?」


「うん、わかるよ。タンジさん。叔父さんは大黒龍アベルナーガと話してるんだよ」


「あの黒龍と?」


「師匠はどんだけ特殊なんですかねえ」


「クニ。もう人間ではないかもだぞ」


「そう思えてきました」


「ダン君も師匠の真似はしない方が良い。人間でいたかったらね」


 弟子たちに愛情こもった非難を背中に受けつつ、大黒龍アベルナーガにこれまでの経緯を、ダンと世界のつながりを説明していた。


『あいわかった。ダンのこと、我に任せよ』


「頼もしい限り。子供のことは私が調べよう。人間では大黒龍の子供をどうこう出来ないであろう。だが、恐らく・・・」


『魔族か・・・』


「お願いだから今は暴れんでくれ。時が来るまでは」


『わかっておる。ダンのことは理解した。我に任せよ』


「頼む、アベルよ」


 長い瞑想のように黙ったまま、お互いを見つめ合い、そして最後に頷き笑い合っていた。












村長さんは今回も出番なし。

「コンビニ行ってきまーす」

おいおい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ