一気にもふっとな。
今回長めです。
切る場所見つからなくて、長くなりました。
少々、グロ?注意。あと、無理矢理アレいたされた的な発言ありますので、苦手な方はご注意を。
まぁ、所詮はR15なんで軽いです。
いやー、一気に色々ありすぎて、もう私はいっぱいいっぱいで、もふもふもふだよ。
「ハルさんはいつでももふもふですよ?」
駄々漏れた私の思考へ、走りながらきちんと答えてくれるリュートは、本当にいい子だと思う。
あと、そろそろ五分ぐらい全力疾走してるけど、体力とか心臓とか大丈夫なんだろうか?
ちょっと鑑定してみればわかるか。
本人に聞くと、我慢とかして誤魔化されそうだから。
ってことで、早速鑑定してみる。
『リュートなら心配するだけ無駄よ?
たぶん一時間ぐらいなら平気だと思うわ。
身体能力強化っていう新しいスキルも覚えたから、さらに体力とかアップしてるもの』
ついにゆる女神様が普通にスキルの説明始めてくれたね。
身体能力強化って、そのまんまなスキルだろうから、リュートは体力馬鹿一直線か。
しかし、一時間全力疾走可能って、追いかけられる方は堪ったもんじゃないね。
前世で見た番組の某黒いハンターを思い出したけど、あれよりヤバいって事か、リュートは。
にこにこキラキラな笑顔で追いかけてくる美少年。
怖い……か? ある意味ご褒美?
「……あ」
思い切りズレた事を考えていたら、リュートが思わずといった風な声を洩らしたのが聞こえた。
(どうかした?)
「……こちらを見ないで!」
珍しい。リュートが私へ向けて声を荒げるなんて。
私はしぱしぱと瞬きをして、物理的に拘束をしてきたリュートの腕の中で周囲をちらりと窺う。
リュート、たぶん、私の顔を胸に押しつけて、見ないようにしてくれてんだよね?
でも、慌てたのか前後間違えてるよ、リュート。
おかげで、周囲を見られるんだけど。
と言うか、私はもう気付いてたから。
むせ返りそうな血の臭い。
「どうして……」
リュートが呆然と呟くのは、血の臭いの発生源が下卑Aだったから。
ギャグみたいに、きょとんとした顔で地面に転がって、虚空を見つめてる。
頭だけで。
体は血溜まりの元になったんだろうな、って思うぐらいだ。
モンスターな私には、すっかりグロ耐性あるから、ついつい観察してしまう。
「トラクがやったのか?」
リュートは私を庇うように抱き締めたまま、得心がいかない様子で呟いている。
確かに、さっきの恨みがあったとしても、この殺り方はトラクのキャラではないな。
まぁ、賞金首だから、文字通り賞金首にした、とか?
(たべう?)
(あんな不味そうなの食べちゃダメ)
うちの食欲魔神二号が興味を示しちゃってるから、強めに止める。
可愛いルーが、あんな不味そうなの食べて、お腹壊したら大変だ。
(あい!)
うむ。いい子なお返事で何より……、
「はい!」
……リュートは人間やめる気なんだろうか。
(……二人共いい子だね)
私は色々諦めそうになった。
別に賞金も欲しくないので、と言うか触りたくも無かったので、下卑A(首のみ)は放置で、私達は再び森の中を全力疾走してた。
ま、疾走してるのはリュートだけど。
(まま、るー、ばしゅ、うけう)
何度目かもわからない魔法らしき攻撃を、リュートが避けるのを見て唐突にルーがそんな事を言い出した。
(あの魔法受けてみたいの?)
(あい!)
ルーは自分の強度を試したいのか? まさかの武人タイプ?
ごりごりな筋肉タイプに進化しちゃうんだろうか?
マッチョスライム……とかかな? 絶対可愛くないな。ゆる女神様が泣いちゃいそう。
「ルー、魔法に興味あるのか?」
(あい!)
「なら、俺が魔法の飛んでくる方向へ投げてやる。それでもいいか?」
(あい!)
私はルーの喋ってる言葉がわかるけど、リュートには「ぷぅ」みたいな鳴き声にしか聞こえないハズだよね……?
何か普通に会話成立してる……って、あ!
(……投げちゃったよ)
リュートとルーが会話してるのに気をとられて、止めるの間に合わなかった。
(ぷぅ!)
気合を入れてルーが飛んでく。と言うか、ぶん投げられてく。
前世であったストレス解消になるっていう、壁とかに投げつけて、グシャッてなって、ペタッて貼りついて、また元の姿になるボールみたいなヤツを思い出した。
ルーで想像したら怖くなった。
『や、止めて……』
ゆる女神様にも駄々漏れたらしく、弱々しい通知音とメッセージが来た。
ちなみに、ルーは全然平気だったよ。
空中で、ガチン、と何かとぶつかるような音がしたけど、そのまま飛んでって、向こうの低木の先へ消えた。
(ぷぅ〜!)
「ギャギャギャァ!」
うん、そりゃあ、そうなるよね?
魔法を受けたくて飛んでくる方向へ投げてもらえば、着地点は高確率で魔法をぶっ放してる相手の近くだろう。
ある日森の中〜的な出会いをしたらしいルーと、ゴブリン(仮)が口喧嘩してるようだ。
バキバキとかも聞こえるから、手や足も出ているのかもしれない。
あ、でもルーには手足はないか。
「手助けはいりますかね?」
(一応ね。相手が複数なら困るし)
私をちらりと窺い見るリュートに、私は頷いてボカスカ聞こえてくる方をもふっともふ指す。
「そうですね。あの男を殺したゴブリンかもしれませんし」
リュートの反応はさすがと言うしかない。
自分への悪意にも、これぐらい敏感に反応して欲しいものだけど。
無理なとこがリュートの美点でもあるよねー、とか考えてる内に、私をオンしたリュートはガッていう勢いでルーが消えた茂みを突き破る。
擬音で表現するしかない、まさにガッという勢いに、事故発生。
茂みの向こうでルーとボカスカしてたゴブリン(仮)と、ガッと飛び込んだリュートが衝突した。
うん、衝突した。
大事でもないけど、ビックリしたから二回言っておく。
どうやらルーの体当たりで軽く吹っ飛んだ所に、リュートがじゃすとみーと? したらしい。
しかも、股間への膝蹴り状態。
えーと、御愁傷様です。
悶絶しているゴブリン(仮)を鑑定してみた。
【種族 ゴブリンメイジ
性別 オス】
あ、オスだった。そりゃ、痛いだろう。女の私にはわからないけど。
で、メイジってなに? タイショウとかショウワとか、ヘイセイとかもいるの?
(リュート、あれゴブリン明治だって。なんか普通のゴブリンと違うの?)
見た目的には肌色が微妙に違う、大きめなゴブリンなんだけどなぁ。
散切り頭でもないし、ルーに叩かれてても文明開化な音はしてない。
「ゴブリンメイジですか。魔法が使えるようになったゴブリンって感じです」
特に慌てる事もなく、私の質問に答えながら、リュートは剣を構えてゴブリン明治と向き合う。一応……メイジが正解なんだとは思うけど、一度漢字変換しちゃったら、なかなか消えないんだよねー。
ってことは、この間漢字を忘れてたのは、ただの度忘れだったみたいだね。
それはそれでちょっと心配すべきかな? ま、大好きな相手のことを忘れなきゃどうでもいいか。
なんて、深刻なんだかよくわかんない事をつらつら考えてたら、リュートとメイジの交戦が始まってた。
ルーは魔法を防げて満足したのか、戦闘中のリュートを登って帰還を果たした。
これはルーを器用だと誉めるべきか、集中を乱されないリュートを誉めるべきか、悩むね。
(って、リュート、私達邪魔じゃない?)
「離れてる方が心配なんで、俺から離れないでください」
おぅ、ちょっと、男前な台詞にときめいちゃったよ。
まぁ実際、魔法を使う相手だから、離れてても心配なのは理解出来る。
(まま、めじ、げびやた)
せめて邪魔にならないよう大人しくしてたら、ルーが私のもふもふを引っ張って、何かを必死に訴えてくる。
何だろう?
めじ、はメイジだとして……。
げび、は下卑Aだよね? じゃあ、やた、はまさか殺った? あいつ、自分の使役するモンスターに殺られたの?
(ルー、あのゴブリンが、主人である下卑A殺したって事なの?)
(あい! めじ、そいった!)
あの口喧嘩の間に、そんな会話をしてたのか、ルーは。
(モンスターが魔物使いを殺すって、ありなの?)
「あると思いますよ。従うに値しない主人だと思ったり、酷い扱いをされていたんじゃないですか」
メイジの魔法を防ぎながら、リュートは驚いた様子もなく答えてくれたけど、何か悲しそうだ。
(メイジに同情した?)
リュートはいい子だからなぁ。
「いえ、特には。ただ、ハルさんに見捨てられたら、と思ったら悲しくなりました」
(ないない! それは絶対にないから! 私はリュートが大好きなんだから、離れたいなんて思わないよ。それとも、リュートは私に離れて欲しいの?)
「ずっと一緒にいて欲しいです。俺だけを見ていて欲しいです」
戦闘中なのに、甘えて軽く頬擦りしてきたよ、うちの子。
可愛いじゃないか!
(るーも)
ルーも対抗して、頬だかよくわからないけど、すりすりして来たよ。
可愛過ぎて、悶え死にしそうだね。
「ギャギャ!」
何かメイジが怒ってるし、戸惑ってる? 躊躇った様子で、魔法は撃ってきてない。
(ルー、何て言ってるの?)
(なで、ひと、なかいい? やて、じゆー、ほが、らく)
ずいぶん短い叫びの中に色々言ってくれてるなぁ。
(何で人と仲良い? 殺して自由の方が楽だろう、みたいな感じ?)
(あい!)
(ちなみにメイジは人の言葉はわかるの?)
(あい! めじ、わかう)
それもそうか、人間に使役されてたモンスターだもんね、とか思いつつ、ぷるぷるしてるルーをいい子いい子と撫でてメイジを見やる。
(私が直接話した方が早いか)
って事で、人型再び、行ってみよう。
ま、下卑Aは死んでるし、リュートが一緒だから問題無いよね。
自己完結して、人の姿へ変わったんだけど――。
「は、ハルさん、駄目ですよ、そんな大胆な……っ」
なんか問題あったらしい。
あわあわしたリュートがルーをメイジへ投げつけて時間稼ぎし、私を物陰へと押し込む。
一応下着はつけてたのになぁ、と思いつつ、着替えを完了させて戻った私を迎えたのは、メイジと普通に話してるルー。
リュートは、剣に手をかけた体勢で、メイジをぶった斬るべきか悩んでる。
なので、私も提案しやすい。
「ねぇ、リュート。この辺にいるゴブリンって、全部あの下卑Aのかな?」
「え、あー、たぶん、違うと。村を襲っていたゴブリンは、あの殺された男が使役していたゴブリンメイジに従っていたんだと思いますよ」
リュートの言葉に、メイジは頷いて、ギャッと短く返す。
(さいき、しんか)
「最近進化したんだ? だから、主人を見限ったの?」
「ギャー、ギャギャ!」
何か違ったのか、ちょっと怒られてる?
(ちあう、げび、ひどいやつ。むだ、ひと、おそう、したない)
「そっか、君は無駄に人を襲ったりするのは嫌だったんだね」
「ギャ、ギャァ」
ルーの通訳を聞いて私が確認すると、メイジはコクコクと頷く。
「なら、この村を襲うのは止めて欲しいんだけど……。そしたら、君も君の仲間も見逃すよ?」
無理なら可哀想だけど、リュートにサクッと殺ってもらおうかな。とか、ドライな事を考えてると、メイジは、いいのか? って顔で私を見てくる。
何を勘違いしたのか、リュートが私をお姫様抱っこしたけど、スルーしてメイジと見つめ合う。
「ギャギャ」
(そつもり、だったー? えらそな、やつ、おそてきた、から、けいかく、くるた)
相変わらず、あの短い一言でずいぶん長いな。
「気になるのは偉そうなやつ、かな。リュートじゃないんだよね?」
まぁ、リュートが偉そうなんて有り得ないし。
強い奴、なら確実にリュートなんだけどなぁ。
(まま、とらく、えらそ)
「そっか、そっちか」
なら、納得だ。
足をぶらつかせながら頷いていると、今さらながらトラブル君達の事を思い出した。
「そう言えば、トラク達はどうしたんでしょうか?」
リュートも同じ疑問を抱いたらしく、そう問いかけながら、私の顔を覗き込んで来る。
うん、ゼロ距離でも完全無欠の美少年だね。私じゃなきゃ、キスされると勘違いしそうな体勢だよ……って、え? ええ?
今、普通にキスされたよ?
「……ごめんなさい、ハルさんが可愛い顔してたので、つい」
シュンとしたリュートにうるうる目でそう言われちゃったら、私が怒れる訳ないよね。
しかし、時間差で顔が赤くなってきた気がする。
(るーも、ちゅ、てする)
悶えてたら、ルーが戻ってきて、私の顔に貼りついてくる。
可愛い。可愛いけど……息出来ないな、これ。
「ルー、ハルさんが困ってるだろ」
リュートがペリッと剥いでくれて、またルーをメイジへ投げ返した。
いや、投げ返しちゃ駄目だよ? ルー、うちの子。これ、大事。
「あ、つい。すみません」
「私を心配してくれたんだし、メイジにはもう敵意ないみたいだからいいけど」
駄々漏れた私の呟きを聞き、素直に謝ってくれたので、私もいい子いい子とリュートの頭を撫でておく。
投げつけられたルーと、ぶつけられたメイジはと言うと、ぷぷぅ、ギャギャ、と和やかに会話してるし。
平和っていいよねー……じゃなくて、トラブル君達! まぁ、トラブル君達はどうでもいいけど、孫娘ちゃんは助けないと。
い、生きてるよね? 万が一殺されてたら、メイジ見逃せなくなるんだけど。
「ねぇ、さっき言ってたエロそう……じゃなくて、偉そうな奴って、縄で縛られて奴?」
「ギャ」
頷いて肯定するメイジ。
「で、生きてる? 女の子達も一緒だったと思うけど」
「ギャ」
ちょっと嫌そうな顔で頷くメイジ。見慣れてきたら表情もわかるし、意外と愛嬌あるよね。
「あー、無事?」
「……ギャ」
何か一応って感じで頷かれた。
「ゴブリン達が、まさか、その子作り的な……?」
一応な感じの頷き方に、思わずR指定な想像が頭を過ったが、今度はブンブンと首を振られた。
「ギャギャ、ギャ」
(ちあうて、あと、むずかし)
ルーにはメイジの話は難しすぎたか。ぷぅぷぅ、ギャギャ、みたいなやり取り後、ルーが悲しそうにぷるぷるしてる。
私がメイジと話せたらいいんだけど。
悩んでたら、女神様通信の通知音が聞こえ、私は出てきたウィンドウへ目をやる。
『いいもの見せてもらっちゃったから、サービスしてあげるわ』
何か女神様が、いつもよりキャピキャピふわふわしてるんだけど。いいものって、何だろう。
(だから、ヤッてたのは、俺を使役してた人間で、ソイツを落とし穴に嵌めてやってから、保護して檻へ入れてあるんだよ!)
ん? 今の声、誰?
念話っぽいけど、ルーじゃない。声的には、リュートより年上の少年って感じだ。
「えぇと、そういう事を女性にしてたのは、君を使役していた人間達で、君はその人間達のリーダー格を落とし穴にはめて殺したの?」
「ギャギャ! ギャ、ギャァ(そうそう、俺の部下は人間の女なんかには興味ねぇよ。あ、でも殺してはないぞ、アイツ。あれで、生きてるからな? 落とし穴に首まで埋めて、麻痺薬で麻痺させてあんだよ)」
おー、わかる、わかるぞ? これがゆる女神様からのサービスか。で、いいものって、結局……それより、下卑A生きてんの!?
「リュート、下卑A呼吸確認した?」
慌てて、私を抱き上げていたリュートを振り仰ぐと、バッチリ目が合った。
「ハルさんに血が付いたら嫌だったので、触ってもいないですから、わからないです」
目が合った途端に、嬉しそうなキラキラ笑顔でリュートが迷わず答える。
そう言えば、そうだったよね。触りたくもないから、あの間抜け面で放置したね。
「血が出ているように見えたけど」
「ギャー、ギャギャ(あれ、俺の力作だ。落とし穴を、獣の血と肉片とかでカモフラージュしたんだよ。そっちに気を取られて、一気に首まで埋まりやがったぜ)」
ギャハギャハ楽しそうに笑うメイジを見て、本当にメイジには人間を殺す気はないんだな、と再確認した私は少しだけ安堵する。
ここまで意志疎通出来て、話が通じるゴブリンを殺すのは忍びないし。
「私達を襲ったのは脅して逃げる時間稼ぎ?」
「ギャー……、ギャァギャ(いや……あいつらは、人間を皆殺すべきだ、って、もう一匹のメイジへ進化した奴に従ってたんだ。ま、ギョギョが口癖の奴だったんだが、そっちの強い奴にサクッと殺されちまったな)」
「……それは、なんかごめんなさい」
「ギャギャア、ギャギア(気にすんな。あんたもモンスターなんだからわかるだろ? あれは自業自得だし、モンスターは弱肉強食で当然だろ。俺の部下は、俺が時間稼ぎしてる間に逃げ切ったから、問題ない)」
おぅ、メイジがゴブリン顔で、男前な笑い方してるよ。
リュートは、よくわかってないだろうに、何でかニコニコ頷いてる。
「ギャッ、ギャァ。ギャギャ!(お前らの仲間かは微妙な偉そうなヤツらは、この先の洞窟の中にある檻に保護してあるからな。もう残ってるゴブリンもいないし、さっさと連れてけよ! 俺は勝てない喧嘩はしない主義なんでな)」
「そっか、ありがとう」
もう肌が緑色してるだけの、義賊とかのリーダーっぽく見えてきたよ。この際、下卑Aがゴブリンでした、とか首ぶった切って提出したいよね。
「あ、でも、依頼達成した証拠がないと、またゴブリン討伐依頼出ちゃう?」
首ぶった切ったで思い出してリュートを振り仰ぐと、またバッチリ目が合って、ニコニコと笑顔を返された。
「そうですね、しばらく村へ滞在させてもらって、ゴブリンの襲撃がない事を証明すれば、村長さんは納得してくださるとは……。あとは、ゴブリンを狩った証拠が一定数あれば、信憑性も高まると思いますよ」
「ゴブリンを狩った証拠って……」
私が言葉を失っていると、メイジがギャハと笑って自らの耳へ触れる。
「ギャ……ギャギッ(確か耳だろ。ほら、上位種の俺の耳なら、下っぱより説得力あんだろ)」
そのまま、躊躇う事なく尖った耳を引き千切り、投げて寄越す。
いやいやいや、男前過ぎるでしょ、このゴブリン。ゴブリンにしとくの勿体無いよ?
某ボンボンをゴブリンにして、このゴブリンを人間にした方が世のため人のためになると思う。
「え? ハルさん、何話したんですか?」
私がうむうむと内心で頷いてると、投げて寄越された新鮮な耳を、いつの間にか戻っていたルーが器用にキャッチしてリュートへパス。流れ作業で魔法袋へインするリュート。
おー、一瞬だけど、私を片腕でキープしたよ、リュート。きょとん顔してて可愛い。
「あ、そっか、リュートはわからないよね、ごめん。メイジが、上位種の俺の耳なら下っぱより説得力あるだろう、って。……という訳でメイジに傷薬あげて」
「はい! ほら、使えよ」
リュートがそう言うと、リュートの懐から、ルーがうにうにと傷薬を取り込んで出て来て、メイジへと渡しに行ったんだけど……。
何か、リュートとルーの意志疎通バッチリだよね。本当の兄弟みたい。
「ギャア(ありがたい)」
「こちらこそ、ありがとう。痛い思いさせてごめんね?」
「ギャ……ギャギャ? ギャア!(平気だ……お前、人間と仲良いんだな? 俺はアイツにスキルで拘束されてから地獄だったぞ!)」
「モンスターを使役するスキルってあるんだっけ?」
「ありますよ」「ギャ(あるぞ)」
リュートとメイジがハモった。
下卑A、もうちょいしっかり鑑定しとけば良かったな……て、あれ?
「なんで、メイジは逆らえてるの?」
「ギャア?(さぁ、わからねぇ。進化して、気付いたら逆らえてた)」
そう言って、肩を竦めて見せるメイジ。人間に使役されてたせいか、感情表現豊かだね。
「多分ですが、進化した事によって、主人のスキルで使役出来るレベル上限を越えたんじゃないですか?」
「へぇ、まぁ、私とリュートには関係ない話だよね」
もともとスキルで従ってる訳じゃないし。
リュートが少しだけ不安そうだから、笑いながら頭を撫でて、ゆっくりと口を開く。
「リュートが好きだから、私は一緒にいるんだし、スキルなんかなくても何処にも行かないよ?」
「ハルさん……!」
リュートが感極まった表情で抱きついて来ようとするが、話が進まないので、とりあえず待てさせておく。
「話がそれちゃったね。じゃあ、新たな追っ手が来ない内に、遠くまで逃げてね。さすがに他の善良な冒険者の邪魔は出来ないし、普通の人から見たら、あなたは危険なゴブリンだろうし」
「ギャ。ギャァ、ギャギャ!(あぁ。ほとんどのヤツらは先に逃がしたから大丈夫だ。残ってるのは、俺と見張りだけで、合図をしたら逃げる手筈になってる。今度はもっと森の奥で暮らすさ!)」
そう言うと、メイジは上空へ手のひらを向け、魔法で作ったらしい光の玉を撃ち出した。
「ギャァ!(じゃあな!)」
見た目は不細工系モンスターなのに、爽やかに手を振って駆け出していくメイジ。
「元気でね! もう人間に利用されないようにね」
「次ハルさんを狙ったら、命はないですよ?」
私がひらひらと手を振って見送る背後で、リュートがいつもより低い声で脅してるのが、若干怖い。
振り返って見上げると、いつも通りのニコニコ笑顔なのが余計恐怖を煽るよ?
(ばいばい)
寂しそうにぷるぷるして見送るルーに癒された。
うちの子、可愛い。
「さぁ、これでゴブリンの驚異は去ったし、村へ戻って村長さんへ説明しようか」
「はい!」
リュートへ抱っこされたまま、村へと帰ろうとするが……。
(まま、わすれる?)
ルーに可愛らしく話しかけられ、はた? と首を捻って思い出す。
「あー、下卑Aとお仲間後で回収しないとね」
生きてるらしいし。
冒険者組合か、兵士とかに連絡すれば取りに来てもらえるかな?
「賞金、どれぐらいかなぁ」
「あの、ハルさん、賞金なんですけど……」
私がウキウキしてると、リュートが足を止めて、言いづらそうに話しかけてくる。
「何か使いたい事あった?」
珍しいな、と嬉しく思ってリュートの言葉を待つ。
「賞金、村へ寄付したいんですが、駄目ですか?」
「……私は構わないよ」
リュートらしくて、それが嬉しくて、ふふ、と笑っていると、リュートの顔が近づいて来て鼻先を軽く触れ合わせるように、じゃれてから離れていく。
「ありがとうございます!」
よし、これで忘れ物はないな、とリュートが再び歩き出そうとすると、ルーがまだぷぅぷぅ鳴いてる。
「ルー、怒ってませんか?」
「だね」
何て言ってるのかと思ったら、
(ぷぅぷぅ!)
ぷぅぷぅ言ってた。
(どうしたの、ルー)
何と無く念話の方が伝わるかな、と話しかけたら、ルーはむにっと体を変形して、村とは逆方向を示す。
(あっち! たすけう!)
ルーが示したのは、ゴブリンの巣があると教えてもらった方向で。
「あ、トラブル君達、助けないと……」
「あ、忘れてました」
(ぷぅ〜!)
何ですとー、みたいなルーの絶叫を聞きながら、私達は囚われのトラブル君達を助けに行く事にした。
正直面倒くさいけど、孫娘ちゃんがいるから、仕方無いよね。
本編では触れませんでしたが、ルーは色々聞き間違いとか言い間違いしてます。
ハルの解釈違いとかもありますが。
とりあえず、シリアス終了へ向かいます。
無理矢理された表現ありましたが、まぁハルじゃないし、いいかな、と。
後書きから読む方もいないでしょうし、ネタバレですが、グロはエセでした(笑)
そして、段々メイジを気に入り、殺せなくなって申し訳ないです。
彼は何処かで元気に生きて行くでしょう。
ルーはパパに似たのか、見事な突っ込み体質となりました。




