おばちゃんエンカウント?
久々過ぎる投稿なんで、甘さの加減を間違えた気がします。
エヴァンのいる回じゃなくて良かったです。
生存報告にあたたかいコメントありがとうございます。
何とか40連勤乗り越えますんで!
書きたいネタを妄想しながら、仕事頑張ります。
「あんたがモンスター連れの冒険者だね。あまり村の中をうろつかないでくれるかい?」
一通り村長さんから聞いた襲撃箇所を確認していた私達を、村人が襲撃……してきた?
ちなみに、ちょっと恰幅いいだけで、普通のおばちゃんだ。
普通のおばちゃんだから、襲撃といっても、勢い良く駆け寄ってきたなんだけど。
鑑定しても普通のおばちゃんだし、どういうことだ?
私達は村長さんからの依頼で来てるのに……。
「いえ、あの俺達は……」
おばちゃんの勢いと、相手が女性のせいか、リュートもあわあわしてるし。
うむ、しどろもどろなリュート、可愛い……じゃなくて。
(リュート、村長さんから許可をもらってるって伝えて)
「あ、はい。俺達は、村長さんから許可をもらって……」
「そんなことはわかってるの! 問題なのは、あんたがモンスター連れだって事! さっきの冒険者の子達が教えてくれたのよ? あんたが危険なモンスター連れてるって」
おばちゃんの勢いは止まらないね。
まぁ、ゴブリンに進行形で襲撃されてるような村なんだから、仕方ない…………とか思わないよ?
明らかに、トラブルくん達のせいなトラブルだし、これ。
「で、危険なモンスターってのを、何処に繋いでるんだい? まさか、放し飼いなのかい!?」
ある意味放し飼いか、私とルーって。
おばちゃんは鼻息荒く、キョロキョロと辺りを見回すが、おばちゃんの想像しているようなモンスターは何処にもいる訳なく……。
「え、あ、あの、俺の大切な仲間の、ハルさんとルーです」
(ども)
(ぷ)
へにゃと眉尻を下げたリュートは、肩の上にいた私を両手で抱え、おばちゃんが見易いようにしてくれたので、私はもふっと膨らみ、ルーはちょこんと姿を現して挨拶する。
挨拶は大事だよね。
人(?)付き合いの基本だし。
「………………これが、危険なモンスターかい?」
「え、あ! ハルさんもルーも強いですが、人を襲ったりはしないです!」
ルーは時々襲うけどね。ってのは、空気を読んで、黙っておく。
「どう見ても、危険なモンスターには見えないね」
おばちゃんは普通の良い人だったから、リュートの真っ直ぐな言葉と、おとなしい私とルーを見て納得してくれたらしい。
「はい!」
「二匹共おとなしいモンスターなのに、怒鳴って悪かったね。ゴブリンの襲撃で気が立ってて、つい頭に血がのぼっちまったよ。村の皆も、ピリピリしてるから、いくら二匹がおとなしくても、放したりはしないよう気をつけな?」
おばちゃんは謝ってくれた上に、そんな忠告をくれ、
「寝る場所が決まってないなら、うちに来な。一応この村唯一の宿屋をしてるんだよ」
と、さらに有難い提案もくれた。
「ありがとうございます、気を付けます。それで、ご好意は嬉しいですが、ゴブリンの侵入に備えたいので……」
いい子なリュートは、笑顔でお礼を言ってから、申し訳なさそうな表情でゆるゆると首を振る。
私とルーも、一緒にふるふるしておく。
「そりゃ、ありがたいね。なら、食事だけでも食べに来な」
おばちゃんは、そんな優しい言葉をくれて、来た時と同じぐらいの勢いで去っていく。
最初の勢いは、怒っていたからではなく、ただただせわしない人だったらしい。
なんか、ほっこりした。
ヤる気満々なトラブルくん達とは反対側へとやって来た私達は、野営の準備をしてから、早速おばちゃんの宿へご飯を食べに行くことにした。
ヤる気満々なトラブルくん達なんて、知ったこっちゃねぇって感じだ。
あのまま、ヤり過ぎて依頼失敗すればいい。
ヤってる最中、ゴブリンに襲われて、囮になってくれたりしても、私としては万々歳だ。
見た目真っ白、中身真っ黒なことを考えていた私は、ふと不安を覚えてしまい、両手で抱えてくれているリュートを見上げる。
(リュート、例えばだけど、他のパーティーと組んだ依頼で、明らかに片方のせいで失敗した場合とか、片方だけが契約不履行したって場合、どうなるの?)
トラブルくん達が失敗するのは勝手だけど、巻き込まれるのは嫌だからね。
確認大事。
「それは、事前の話し合いというか、内容によりますね。ちなみに、俺とトラクは協力しあうって話になってるだけで、俺が失敗したとしても、向こうに不利益はないです」
(……ふぅん)
よし、つまりは向こうが失敗したとしても、リュートには何の影響もないってことだね。
最悪見捨ててもいいよね?
内心でむふむふ笑っている内に、優秀な移動手段でもあるリュートのおかげで、いつの間にか宿まで来ていたらしい。
「こんにちは!」
元気良く挨拶しながら、リュートが扉を開ける。
そろそろ夕方だろ? なんて、野暮は言わないよ。可愛いから。
「おや、さっそく来てくれたのかい?」
おばちゃんはすぐに出てきてくれ、リュートとにこにこ会話しながら、私達を壁際の目立たないテーブルへと案内してくれる。
小さな村だから、一階はレストランというか、食事処とか居酒屋を兼ねてるらしく、入ってすぐに丸テーブルが並んでいて、奥には二階へ続く階段があるみたいだ。
ま、外で寝る私達に関係ないけど。
あと言えるとしたら、全体的にノクの宿屋よりこじんまりしてる。
まぁ、掃除は行き届いてるし、おばちゃんの好意百パーセントで迎えてくれる笑顔はプライスレスだよね。
そんなちょっと失礼な事を考えつつ、私とルーはテーブルの端へと大人しく鎮座する。
時間が中途半端だったせいか、私達の他に客はいないので、テーブルに乗っていても怒られたりはしないだろう。
「今日のオススメで構わないかい?」
「はい!」
「ハルとルーは何なら食べられるんだい?」
(何でも)
(ぷ)
通じないのはわかってるけど、私とルーは揃っておばちゃんを見上げて答えてみる。
「ふふ。二人共、何でも食べられますから、俺と同じメニューと、あといらない皿とか鍋とかあったらください」
(私とルーで、美味しくいただくんで!)
(ぷ!)
「そりゃ、あたしは構わないが、まぁ、飼い主が言うんだから間違いはないね」
豪快に笑いながら去るおばちゃんを、気分だけ敬礼して見送ってると、ルーが隣で真似て胸(?)を反らせて転がる。
勢いがついたらしく、テーブルから落ちそう……あ、リュートにキャッチされた。
摘まれてぷるぷるしながら、ルーがテーブルに戻ってくる。
そう言えばルーってゴブリン食べまくって大きくなった筈なのに、いつの間にか戻ってる?
(ま、いいか)
魔力とかに変化してるとか、体全体で貯めて消化してるから、とかなんだろう。
ファンタジーな世界で、無粋な突っ込みしちゃだめだよね。
ま、そんな私も、かなりファンタジーな生き物ですし?
「はい! お待たせしました!」
元気のいい少女らしき声に、無駄な思考を終わらせた私は、三人分の料理が置かれたテーブルへ視線を向けてから、それを持ってきてくれた少女を見上げる。
「これ、割れちゃったお皿と、穴の開いた鍋なんですけど……」
料理を置いた時とは別人のように、おずおずと皿と鍋を差し出してくれたのは、リュートより少し年上っぽい少女だ。
茶色の髪を一つにまとめ、人懐こく笑うそばかすのある顔は、あのおばちゃんに似ている。
と言うか、娘なんだから当然とも言えるけど。
ちょこっと鑑定させてもらっちゃった。
どうやら、あの村長の孫娘と幼なじみらしいね。
私的には、この子の方が可愛いと思うんだけどなぁ。
あっちは、化粧と寄せて上げてな感じで誤魔化してるし。
なんか、女神様が含み笑いで教えてくれたよ。
(まま、ごはん〜)
動かない私に焦れたのか、ルーが高速ぷるぷるで訴えてくる。
可愛いけど、テーブルがヤバいな。
(そうだね、いただこうか? リュート、代わりにお礼を伝えてくれる?)
私が頷くと、ルーは嬉しそうにぽよんと一跳ねし、早速割れた皿を数枚取り込んでる。
「はい。ハルさんが、ありがとうございます、と伝えて欲しいと。もちろん、俺もありがとうございますと言わせてください!」
「え、あ、どういたしまして?」
リュートのキラキラとした笑顔に、おばちゃんの娘さん――ちなみに名前はココちゃんだ――は、少し戸惑いながらも、はにかんだ笑顔を返してくれる。
おばちゃんも、離れた場所でニコニコ笑って、愛娘を見つめている。
ちらほらいるお客さんも、あたたかい眼差しをココちゃんへ送ってる。
ココちゃんは、ご近所さんのアイドル的な存在なのかな?
もふっと鍋を飲み込みながら、私は親戚のおばちゃんな気分で、違う席へと呼ばれたココちゃんの背中を見送っていたんだけど。
そこへ、私の内心を代弁するような呟きが近くから……?
「可愛いですね」
お、もしかして、これはリュート脈ありか、とワクワクしながらリュートへ視線を戻す私。
――何故か、バッチリ合ってしまう視線。
(………………ちなみに、何が可愛いの?)
何となく……そう何となくで察してと言うか察せてしまったが、万が一もあるので、鍋をもぐもぐ吸収しながら訊いてみた。
間髪入れずに、キラキラとした笑顔で、何の迷いも照れもない、真っ直ぐな答えが返ってくる。
「鍋を食べているハルさんです!」
(やっぱりか!)
脊髄反射で突っ込んだ私は、脱力感に襲われながら、ドヤ顔のリュートを見上げるしかなかった。
しかし、本当に揺るがないなぁ、リュートは。
ま、私も……。
(そんなリュートが、可愛くて大好きだよ?)
揺るがないよね。
(まま、るーは?)
(もちろん、ルーも可愛いし、大好きだよ?)
(りゅー、より?)
(……どっちも、同じぐらい大好きだから、比べられないかなぁ)
嘘です、ぷるぷるしてるルーの円らな瞳に、ちょっとぐらつきました。
うちの子、可愛すぎ!
ハルさんを書くと癒されます。
せめて月一更新ペースに戻りたいです。




