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ごぶりー、うまうま。

今回のサブタイトルは、ルーの一言(笑)


感想ありがとうございます。

 心配そうな御者のおじさんは、何とか説得して寝てもらい、私達は野営場所を見渡せる位置に陣取る。

 たき火にあたりながら、リュートはもっふもふな物体と化した私に背中を預け、うとうとしている。

 トラブルくん達に見られたら、嫌味を言われるのはわかりきってるから、周囲を警戒しつつ、トラブルくん達のテントも警戒しておく。

 今のところ、ゴソゴソ動いてるけど、出てくる気配はない。

 と言うか、ケダモノじゃないんだから、ちょっとは我慢する気はないんだろうか。

 別に、トラブルくん達が、末代まで語られるような恥ずかしい死に方しても、私は構わないけど。

「っくし」

 リュートがくしゃみっぽいものをしたので、少しだけもっふとリュートを収納する。

(ルー、何か気配はある?)

 それから、周囲を遊び回っているルーへ話しかける。

(たべたー)

 何かいたらしい。

 思い切り、事後報告だよ。

 まぁ、人間を食べる場合は、私の許可を得なさいって教えてあるから、野性動物か、モンスターだね。

 ルーは、なかなかに暗殺向きかもしれない。

 私の耳にも、何も聞こえなかったし、馬達も怯えていない。

 またルーが無言になり、しばらくしてから戻ってくる。

 ちなみに、私には、ずっとぷぅぷぅ歌う声が聞こえてるけど、何かを始末する時は無言になるようだ。

 戻ってきたルーは、一回り大きくなってた。どれだけ食べたんだ?

(何がいたの?)

(えと、ごぶりー)

 なんだそりゃなんだけど。ラブリーのパチモンみたいな生き物?

 いや、ラブリーは生き物じゃないか。

(ごぶり、ごぶり。いぱい、いた)

(……あー、もしかして、ゴブリンか)

 正解だったらしく、ルーが嬉しそうに激しく振動する。

 おぉ、新機能だ。

 ついに進化しちゃうか?

(しないお)

 残念、まだしないのか。

 しかし、体を傾げて、円らな瞳で見てくるルーは、可愛いなぁ。

 カナ村の近くまで来たから、そこの巣のゴブリンなのかなぁ。

 ほっこりしてたら、ルーが、ぷっ! と男前な鳴き方して飛び出して行った。

 また、新たな獲物かなぁ。

 そう言えば、討伐したのがわかるように、体の部位とか必要だったっけ?

(リュート、ゴブリン倒した証明って、どうするの?)

 可哀想だけど、熟睡しているリュートを、軽く揺らして問いかけると……。

「みぎみみ、れふ……」

 れふ、って何だ、可愛いじゃないか。

 じゃなくて、右耳ね。

(ルー、ゴブリンだったら、右耳だけ溶かさないで持ってきてね)

(あい!)

 いい子なルーの返事を聞きながら、いまだにゴソゴソ動いてるテントをちらりと見やる。

 私とルーを信頼しているリュートが、すやすやと寝ているのはわかるけど、トラブルくん達はよくナニしてるよね。

 信頼してない相手に見張りを任せて、どんだけ無防備になってるんだか。

 それとも、通常運行なのか、あのピンクな状態。

 対抗して、私もリュートを愛でてやろうか。

 ――うん、止めておこう。

 せっかく可愛い顔で寝てるんだし。




 リュートの可愛い寝顔で癒されてると、もう片方の可愛いうちの子が戻ってくる。

(まま、ごぶりー、みみ)

(偉いね、ルー。ちゃんと右ってわかったんだね……ってか、若干グロい)

 誉めて育てろってことで誉めたけど、半透明ボディの中で揺れる尖った耳、とか新しすぎる。

 モンスターになってからグロいの耐性出来たみたいだから平気だけど、昔の私なら卒倒ものだ。

(るー、えろい?)

 あー、確かに、ちょっとえっちぃラノベには付き物だよね、美少女の服を絶妙に溶かすスライムとか。

 ハッ!? 違う違う、ルーは言い間違えてるんだよ…………たぶん。

(ルー。えろい、じゃなくて、え・ら・い。えらい、だよ? 言ってみて?)

(え、ら、い?)

(そう、上手だね、ルー)

(るー、えらい?)

(そうそう、偉い偉い)

 もっふもふと、巨大化したボディでルーを高い高いして誉めると、楽しそうにぷぅぷぅ鳴いてる。

 向こうのテントでは、ナニか鳴いてるようだけど、気のせいだよね。

「はるさん、だいじょぶですか?」

 お、リュートが珍しく朝じゃないのに目を覚ました。

(ん? 特に何にもないよ?)

 ルー曰く、ごぶりーが襲撃して来てるけど、ルー一人で撃退出来てるし。

「なんか、おんなのひと、ないてる……」

 寝惚けてるね、リュート。

 それでも、女性の泣(鳴)き声聞こえたから、反応して起きたのか……え? 聞こえたの?

 おい、うちの子の情操教育に良くないんですけど、あのピンクなトラブル集団。

(猫の声じゃない?)

 あっちで発情しているメス猫の。

 あっはっはっは。

「ハルさんが無事なら、いいです……」

 安心して、蕩けきったリュートの笑顔には、男前の片鱗が見える。

(あと何年かしたら、エヴァンにも負けない男前になりそうかな)

 その時、私はリュートの隣にいられる?

 なんて、弱気になっちゃ駄目だよね。

 向こうから聞こえるメス猫の声のせいだな。

 もふもふを揺らしてため息を吐くと、またルーが、ぷっ! と鳴いて飛び出していく。

 今日一番の功労者は、ルーだね。帰ってきたら、目一杯愛でてあげよう。




 朝方まで騒いでいたトラブルくん達が早起きする訳はないだろうけど、私は念のため、朝早くリュートを起こす。

(リュート、朝だよ)

「……ん、おはよ、ございます」

 相変わらず目覚めの良いリュートは、くしくしと目を擦りながら、私のもふもふから抜け出してきた。

 んー、と伸びをする姿に、眠気の名残はない。

 一晩中大活躍だったルーは、私の中に戻って、すぴすぴと寝息を立てている。

 ルーが集めてくれたごぶりーな右耳は、リュートの魔法袋詰め済みだ。

「やぁ、おはよう」

 御者のおじさんもよく眠れたのか、朗らかな笑顔でやって来たので、トラブルくん達に絡まれる前に朝ごはんを終わらせることにする。

 御者のおじさんにもお裾分けして、平和に朝ごはんが終わった頃、やっとテントの中からトラブルくん達が出てくる。

 そりゃ、朝の待ち合わせの時間も遅くなるよね。

 私が一人で納得してると、早速リュートへ絡んで来てるよ。

 まぁ、人懐こい笑顔と、責められたら、普通に謝ってしまうリュートの態度で、思い切り肩透かし状態なんだけど。

 くふふ、と意地悪く笑ってると、ご機嫌ですね、とリュートに撫でられる。

(うん、リュートが笑ってると、私も嬉しいから)

「俺も、ハルさんが笑ってると嬉しいです」

 うふふ、えへへ、とどこぞのバカップルのように笑い合ってると、トラブルくん達は不審者を見るように見てくる。

「まだそんな役立たずなモンスター連れてたのかよ?」

 夜の間に捨てておけと? 意味がわからない。

「臭いそうよね」

 リュートとエヴァンが、ちゃんとシャンプーしてくれてますぅ。

「可愛くないよねぇ」

 少なくとも、可愛いって言ってくれる人が五人はいますぅ。

「そもそも、あれは生き物なんですか?」

 いや、普通に動いてたの見てませんでしたかぁ?

「……ハルさん、面白可愛い顔になってますよ?」

 ほら、可愛いって言ってくれる一人目だけど?

 面白可愛いって、誉められてるのか、謎だけど。

 駄々漏れないように気を付けながら、突っ込みを返していると、もっふもふとリュートが撫でてくる。

 うん、落ち着いた。

(リュート、ちょっと寝るけど、何かあったら起こしてね)

 何もなくても起こしても良いけど。

「はい。おやすみなさい」

 リュートの笑い声混じりの優しい挨拶を聞きながら、私の意識は浅い眠りに落ちていった。




 次に意識が浮上したのは、馬車の止まった気配と、言い争うような声を聞いたから。

(何かあった?)

 リュートの肩の上で身震いすると、周囲から息を呑むような音がする。

 今さら、私に驚いたのか、と周囲を見渡すと、トラブルくん達以外にも人がいた。

 どうやら、向こうに停まっている馬車に乗ってた旅人らしい。

 リュートも馬車から降りてるけど、向こうの旅人も降りてきて、同じ方向を見ているようだ。

「いえ、ちょっと問題が……」

 困り顔リュート可愛いなぁ、とか思いつつ、リュートの視線を追うと、トラブルくん達がいた。

 誰かに詰め寄ってるなぁ、と思えば、それは御者のおじさんで。

 御者のおじさんの隣にも、同じような格好のおじさんがいるのは、あっちの馬車の御者なんだろう。

(何で御者のおじさん達、怒られてるの?)

「原因はあれです」

 私のもふもふを整えながら、リュートが示したのは、御者のおじさん達の背後に横たわる大木。

 見るからに重そうな上、道を完全に塞いでいる。

(あー、通れないんだね。でも、何でそれを御者のおじさん達に言うの?)

 彼らが置いた訳じゃないし、責める意味がわからない。

「御者なら、道の状況ぐらい把握していろ。俺達は急いでるんだ。契約不履行になったら、お前らが金を払え、みたいな事を、トラクが……」

 うん、進行形で今も同じ事ほざいているね。



 馬鹿か? 馬鹿なのか?



 情報伝達技術が発達してない世界で、どうやって道の状況を事前に知る事が出来ると思うんだ?

 せいぜい、人づてに聞くしかないよね?

 今回は知らないから、この道を選んじゃった訳だし、意味不明な言いがかりつけてる暇があるなら、さっさと別ルート向かってもらうべきだよね。

 と言うか、言いがかりつけてるの、トラブルくん達だけじゃん。

 あっちの旅人、明らかに迷惑そうな顔してる。

 トラブルくん達、あっちの御者のおじさんにも絡んでるもんね。

 こうしてる間にも、無駄な時間は過ぎてくし、御者のおじさん達も辛そうだし……。

 どうにか出来ないかな、と悩んでいると、もふもふ内で動く物体が。

 ルーが起きたんだな、と知覚した瞬間、手っ取り早い考えが浮かぶ。

(ルー、あの倒れてる木、食べちゃって)

(あい!)

 誰に似たのか寝起きバッチリなルーは、元気良く返事をして、たしたしと独特の音をさせて跳ねていき、揉めている集団の脇を通り過ぎる。

 トラブルくん達は、あんな雑魚モンスターなんて、みたいな表情でルーを一瞥し、すぐに御者のおじさん達を睨んでいた。

 けれど、その表情はあっという間に凍りつく。

 そりゃ、あれだけの大木が、瞬きする度くらいのペースで溶かされていったら、普通驚くよね。

 早回し映像かって言いたくなるペースで、頼んだ私も正直驚いてる。

(けふ)

 可愛らしくゲップをしたルーは、若干重さを増したような気がする音をさせ戻って来ると、するするとリュートを這い登り、私のもふもふ内へ消える。

(ありがと)

(ごちそ、さま)

 ルー的には、朝ごはんだったようだ。

 うむ、これで道は通られるし、ルーは朝ごはん食べられたし、良い事ずくめだよね。

「これで問題ないな、トラク!」

 善意100パーセントで出来たリュートのきらきらとした笑顔に、トラクは引きつった笑顔で頷くのみだった。





 ――勝ったと思ってしまう私は、心が狭いかもしれない。


気分がノッてたので、一気に書き上げました。

テンションがおかしいかもしれません。


感想返信、お待たせしてすみませんm(__)m

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