シリアス……長持ちしません。
タイトル通りです。
ちょっとだけ、シリアスっぽくなるけど、あっという間に終了します。
エヴァンが禿げないか、心配です。
強制的に女神様との会話を終わらせた後、私はルーを変形させて戯れながら、リュートの起床を待っていた。
「ねちゃって、ました?」
健康優良児なリュートは、夕飯の時間の少し前に、お腹の音と同時に目を覚まし、照れ臭そうに体を起こす。
ちなみに、今のルーの形は、某ドラゴンなRPGな定番モンスターなスライムだ。
とんがり部分が可愛いよね。
まぁ、うちのルーは元々可愛いですけどぉ。ドヤァ。
(るー、かわいい?)
(世界一可愛いスライムだよ)
ちなみに、世界一可愛い男の子は、リュートなんで!
誰かに向けた訳じゃないけど、心の中で叫んでおいた。
「うっせぇよ!」
駄々漏れていたらしく、夕食だと呼びに来たエヴァンに怒られた。
理不尽だ。
あと、何かエヴァン拗ねてた。
夕食は、話を聞いた家政婦さんが張り切ってくれたそうで、なかなかのごちそうだ。
具だくさんのシチューに、謎な肉の分厚いステーキ。
固そうな丸パンに、みずみずしいサラダ? うん、サラダだよね?
(たしかに、青菜とは言うけど……)
リアルに青い葉っぱだよ、サラダが。
エヴァンもリュートも気にしてないし、普通にある野菜なのかな?
「うわぁ、ブルーリーフなんて、久しぶりです!」
リュートの喜び具合からすると、美味しいんだろう。覚えておこう。
私とルー用にも、同じメニューが用意されてる。
食器がワンランク下なのは、食器ごとってことかな?
食卓に着いて、眺めていると、含み笑いをしたエヴァンに撫で回される。
「それは、皿ごと食べていいように、用意してもらったんだよ」
(ふふ、ありがと)
(ありあと)
ルーと揃ってお礼を言うと、エヴァンに揃って撫で回された。
力強く撫でられ過ぎて、ルーがテーブルから転がり落ちるハプニングはあったけど、和やかに夕食開始となる。
相変わらず、リュートは気持ちいいぐらいの食べっぷりだね。
ルーもある意味、気持ちいい食いっぷりだけど、見た目はゼリー寄せ状態だ。
(うまうま)
かなり美味しいらしいく、高速ぷるぷるしてる。
味は混ざらないのかな、とか思うけど、大丈夫なんだろう。
しかし、リュートもだけど、エヴァンも食べる姿が様になってるよね?
二人共、がつがつ食べている風なのに、全く行儀悪くは見えない。
所作が綺麗なんだよね。
ま、美形補正もありそうだけど。
「どうした、ハル。口に合わなかったか?」
(ううん。二人の食べる姿に見惚れてただけ)
「そ、そうか」
訊かれたから素直に答えたら、エヴァンの挙動が不審になった。
リュートは嬉しそうににこにこ笑いながら、ご飯を食べ続けてるけど。
エヴァンは、口元を手で覆って横を向いてる。
あ、耳が赤い。
照れる要素がわからないけど、エヴァンも可愛いよね。リュートとルーの次に。
同じ上級冒険者でも、キモい彼とは、だいぶ違う……思い出しちゃった。
む。気持ち悪い。
もふもふをちょっとヘタらせながら、モソモソとご飯を食べるけど、あんまり味わえない。
「どうした?」
「何かありましたか?」
(まま?)
心配そうな視線がすぐに三対向けられ、私はホッコリとして、あっという間に気分は上々だ。
いやー、現金過ぎるよね、私も。
(昼間会った相手を思い出しちゃっただけ。心配させて、ごめん……て、なに?)
てへ、と笑いながら謝った私だったが、途中で持ち上げられ、腕の持ち主であるエヴァンを見やる。
「そんな不快になるようなヤツと会ったとは、聞いてないが?」
(あれ? そうだっけ)
すっかり話したつもりになってた。
何人か殺した? と訊きたくなるような目付きのエヴァンに、ハァ、と深々とため息を吐かれた。
「そう言えば、お伝えしてなかったですね」
グイグイと丸パンをルーに食べさせて(埋め込んで)いたリュートが、あ、と今さらな感じで呟いたから、言い忘れていたらしい。
「俺がハルさんを見つけた時、上級冒険者だという人物と一緒だったんですが、ハルさんもルーも、警戒していたんですよね。俺も、見覚えがあるような気もしましたし……」
二個目の丸パンをルーに埋め込みながら、リュートは記憶を辿るためか、首を捻っている。
「上級冒険者? 名前は?」
(んー、何だっけ。確か、レイトだったかなぁ?)
逆さまにしたらトイレだな、とか考えてたし、間違いないだろ。
珍しく名前を覚えていられたのが嬉しくて、えっへん、と胸(?)を反らしていると、エヴァンに軽く抱き締められ、ポンポンと背中を叩かれる。
ん? ゲップは出ないよ?
パチパチと瞬きをし、リュートと一緒になって訝しんでエヴァンを見つめていると、今度は深々とため息を吐かれる。
「……ったく、どうして問題がある相手とばかり関わるんだ、お前らは」
(やっぱり、何かあるの?)
キモかったし。
「ハルさんもルーも、ずっと警戒してましたね」
(だって、キモいし)
(あいつ、きらい)
丸パンを食べながら、ルーが不機嫌そうに高速で震えている。本当に嫌らしい。
「野性の勘ってやつか。いや、素行に問題と言うか、女関係がな……。他の街では、ヤツのせいで、いくつものパーティーが崩壊してる。ヤツの押しつける『優しさ』とかいう傲慢でな」
ついにノクに来たか、と呟くエヴァンは、文句無しにイケメンで。
とりあえず私は――。
(イケメン禿げろ)
「……マジで禿げそうだから止めてくれ」
照れ隠しで、エヴァンを凹ませといた。
「しかし、ここまで来ると、因縁というか、運命的としか言い様がないな」
しばらくし、復活したエヴァンに、もふもふな体で癒しを与えていると、唐突な呟きが聞こえ、私は目線で意味を問う。
すると、エヴァンは膝に乗せた私を撫でながら、リュートを見やり、その表情を確認して首を捻る。
「リュートから聞いてないのか?」
(何を? 好みの女性のタイプとか?)
「何でそうなった!?」
「え? ……優しくて強い女性が」
「リュートも答えるな!」
(駄目だよ、近所迷惑になるよ?)
「誰の、せいだと……」
ちょっとからかい過ぎたようだ。
また今度にしよう。
息を整えている間、エヴァンは私のもふもふにリボンとか、髪飾りとか着けていたようだけど、普通に一休み出来ないのか?
見上げたエヴァンの顔は満足げだし、リュートにも好評みたいだから、突っ込まないことにする。
突っ込んだら負けだよね。
(それで、リュートがどうしたの?)
「リュートには直接関係はないが、いや、ある意味関係はあるか。そのレイトと名乗る上級冒険者が本物なら、見覚えがあるのは当然だ。
――レイトは、ノーマンの兄だからな」
まさか、という驚きと、それでか、と納得が同時に訪れ、私は大きく目を見張る。
視界の端では、リュートがのんびりと穏やかに、そうでした、と納得したように頷いている。
リュートは、もう少し驚くべきだと思う。リュートだから、仕方ないけど。
(……似てないよね)
見た目も、実力も。
そう言外に含ませて呟くが、エヴァンにはきちんと伝わったらしく、苦笑いされる。
「残念ながら、実の兄弟だ。どちらかが愛人の子とかではないぞ?」
(違うんだ)
「兄弟揃って優秀なんですね。そう言えば、遠目で一度だけお会いしたような気がします」
(……だから、見覚えがあったんだね)
ボンボンが優秀かについてはスルーして、後半部分にだけ頷いておく。
リュートは、未だにボンボンが優秀だと信じているらしいけど、もう嫌味だよね、逆に。
リュートの方が美少年だし、色々と優秀なのは、誰が見ても明らかだし。
そんな色々と優秀なリュートが、第三者から見て絶対的に劣る相手を誉めちぎり、素晴らしいと宣う。
うん、リュートの性格を知らない相手が見たら、完全なる嫌味だよね。
「逆にダメージがありそうだな」
しみじみとしたエヴァンの独り言に、私は大きく体を揺らして頷く。
確かに、と思わず言いかけるぐらいに、その通りだな、と思うよ。
普通の神経なら、グサグサ刺さって、再起不能じゃない?
そう考えると、ボンボンは打たれ強さだけは、素晴らしいのかもしれない。
心臓が、私並みにもふもふなのかな?
まったく触りたいとは思わないけど。
「ダメージ?」
きょとんとしているリュートは、ボンボンとは違う意味で打たれ強いよね。
脈絡はないけど、小首を傾げるリュートが可愛かったので、衝動のままに飛びかかっておいた。
軽く現実逃避したかったし。
夕食後、私はもふもふなまま、リュートとのお風呂を終わらせ、寝かしつけてからエヴァンの元を訪れていた。
リュートがなかなか離してくれなかったので、ルーとブラを身代わりに置いてきている。
ルーには、ぷぅ、と寂しそうに鳴かれちゃって、後ろもふ引かれたけど、エヴァンに相談があったので仕方ない。
あまりリュートには聞かせたくない話だし。
ノックはしないで、自分でも器用だな、と思いながらドアを開けて室内へ侵入する。
エヴァンは部屋の奥で、書類仕事中らしい。
意味なく気配を殺して、もっふもふと移動して近寄っていく私。本当に深い意味はないよ?
そのまま、書き物中のエヴァンの体をよじ登ると、気付かれていたのか、驚かれる事はなく、くく、と笑うのみだ。
ちっ、さすが上級冒険者ってことか。
「レイトのことか?」
内容も見抜かれてたか。
イケメン禿げろ。
(……まぁ、そんな感じ)
濁しつつ、私は書類を避けて、机の空いていたスペースに落ち着き、エヴァンを見上げる。
膝をぽんぽん叩いていた残念なイケメンは、スルーしましたけど、何か?
「そんな感じ? レイトのことだけじゃないのか? まさか、もう手でも出されたのか!?」
焦った様子のエヴァンは、私の毛並みに埋もれそうな勢いで顔を寄せてくる。
いやぁ、ゼロ距離でもイケメンだよね。
(大丈夫だよ。それに、向こうには、可愛いらしい連れがいたし、私なんかに手を出す訳ないよ)
エヴァンは心配しすぎだと思う。
私みたいなモンスターをレディ扱いしてくれる男性なんて、リュートとエヴァンぐらいなのに。
そんな本心が駄々漏れたのか、エヴァンは何処か悲しそうと言うか、切なそうな顔をして、私の毛並みを撫でている。
しんみりとした空気が嫌だったんで、私はエヴァンの腕をもふもふな体で包み込む。
腕を飲み込まれる体勢に、エヴァンは軽く目を見張ると、すぐにニヤリと笑う。
あ、何か嫌な予感。
「ほう、俺の腕を食うぐらい腹が減ってたのか?」
ジリジリと距離を詰める肉食獣、と言うか、私がエヴァンの腕を抱えてるのか。
はい、調子に乗りました。
だから、擽るのは、止めてって!
気分的にだけど、擽ったいんだからね?
まぁ、しんみりとした空気は、当初の予定とは違うけど、吹き飛んだので、よしとしよ……って、まだ触るの?
擽らないなら良いよ。
ん? あれ? 何の相談に来たんだっけ?
肝心の相談内容も、吹き飛びました。
エヴァン、残念なイケメン認定されました。
ハルさんは、相談内容を忘れました。
次回には、思い出してくれるかな、と。
リュートは、まだハルのブラを離してなかったようです。
感想、コメント、ありがとうございます。




