ノリ突っ込みって言ったら殴られそう。
サブタイトルが決まらなかったです。
で、エヴァンに対してのハルの内心の呟きです。
久しぶりにハルが帰ってきたから、エヴァンと私のテンションがおかしくなりました。
「ただいま戻りました!」
馬車から降りたリュートは、門番の男性に挨拶しながら、身分証明書でもあるカードを差し出す。
「やぁ、お帰り。無事なようで、何よりだ」
色んな意味で有名なリュートは、すっかり顔馴染みなようだ。
私もルーも、門番の男性に、体を揺らして挨拶する。
「君達も元気そうだね」
おかげさまで、元気です。
門番の男性は、リュートに断りを入れてから、私とルーを撫でてくれる。
イリスさんは報告があるからと、先に冒険者組合へ向かったため、私達は大通りを歩いていた。
街の皆さんに帰還の挨拶をしながら、私達はのんびりと冒険者組合を目指して歩いていく。
「あ、お久しぶりです。ありがとうございます」
(ごちそうさまでーす)
(ぷぅ)
いつものおばあさんから、クズ野菜いただきました。
いつも持ち歩いてるんだろうか。
顔馴染みの屋台で買い食いをし、私達はのんびりと冒険者組合へ向かう。
途中、イリスさんと遭遇し、結局一緒に行くことになった。
どうやら、話好きなおばちゃんに捕まっていたらしい。
疲れたのか、ゆるさにキレがない。
そう言う私も、皆さんに撫でられまくり、少々疲れたので、リュートの外套にインしている。
ルーはまだまだ元気そうで、リュートの頭頂部でぷるぷるしてる。
「荷物置いてこようと思ってたんですけど〜」
捕まったせいで、時間がなくなったんだろうね。
あの白いもふもふクッションも、鞄の上に乗せられたままだし。
「ただいまです〜」
「ただいま戻りました!」
(ただいま〜)
ふるふる。
四者四様の挨拶をしながら、冒険者組合の扉を開ける。
これで、誰だよ? 的な空気で迎えられたら、ちょー気まずいよね、とか心配しちゃったけど……。
「「「「おかえり!」」」」
全然、いらない心配だったようだ。
そりゃ、ノクを離れてたのは一週間ぐらいだし、急に変わったりはしないか。
皆さん、相変わらずノリと人が良すぎだよね。
リュートが、あっという間にもみくちゃだよ。
私は、フードにインしてて良かった。何か、担ぎ上げられそうな雰囲気だし。
イリスさんは、慣れたもので、ゆるく受け流しながら、留守番組のアンナさんとウィナさんの元へ向かっている。
エヴァンは……いないみたいだね。
む。何か、思った以上にガッカリしてるな、私。
リュート以外と話せるのが、楽しみだったせいか?
私がフードにインしたまま悩んでいると、騒ぎに気づいたのか、奥からエヴァンが出てくる。
うん。今日もイケメンだ。
「ずいぶん騒がしいな……お、帰ってきたのか」
ニィと笑うエヴァンは、久々なせいか、イケメン度がアップしてる気がし、私は何と無く気後れしてしまい、フードの中からこっそりと様子を窺う。
近くにいる冒険者達には丸わかりだが、少し離れたエヴァンには見つからない……と思う。
エヴァンは、笑顔でリュートから帰還の挨拶を受けていたが、やがてその表情が怪訝そうなものへ変わる。
そのエヴァンが次に見たのは、受付カウンターにたどり着いていたイリスさんだ。
イリスさんは、お土産を渡すためか、鞄をカウンターへ置いたところだった。
イリスさんの鞄の上にあるクッションを見た瞬間、エヴァンの目がカッと見開かれる。
「どうした、ハル! 何で、こんなにみすぼらしく……っ。おい、しっかりしろ!」
そう吠えたエヴァンが掴んだのは、イリスさんのお尻に敷かれていたもふもふクッションだ。
って、おい。私と間違えてるな?
「触り心地も、こんなに悪くなって……。そんなに死闘だったのか!?」
受付嬢達が、きょとんとしている中、エヴァンが詰め寄るのは、当たり前だけど、リュートだ。
「そう、ですね。ハルさんがいなければ、何人かお亡くなりになったかと……」
リュート以外は、エヴァンがクッションと私を間違ってると気付いたらしく、ニヤニヤしてる。
ノリが良いよね、やっぱりノクは。
しかし、なかなかに失礼だな、エヴァン。
私の方がクッションより、もふもふしてて、白さも勝ってる……よね?
意外と大差ないのか? 何か不安になってきた。
その間にも、エヴァンはクッションを揺さぶってる。
「……エヴァンさん、何でクッションを揺さぶってるんですか?」
あ、リュートが、裸な王様に素朴な突っ込み入れた子供みたいな、シンプルでダメージ大な突っ込み入れたよ。
「あ? ……クッション、だと?」
「はい〜。それは、私の使ってたクッションです〜。ハルさんカラーにしてみました〜」
「紛らわしいんだよ!?」
哀れなクッションは、照れ隠しなエヴァンにぶん投げられ、無表情なウィナさんにキャッチされた。
「……む。確かに、いまいち」
「ハルさんが、規格外なんです〜」
ウィナさんにまで酷評され、イリスさんは可愛らしくプンプン怒っている。
「じゃあ、ハルは何処だ!?」
どうしよう、今さら出にくい。
エヴァンは、何か恥ずかしさで振り切れたのか、げきおこっぽいし。
フードの中で息をひそめていると、何かにガシッと掴まれ、ゆっくりと体が持ち上がる。
「…………よう」
おずおずと目を開けたら、満面の笑みを浮かべたエヴァンと目が合う。
(えへっ)
怒られる、と身構えていると、エヴァンは深々とため息を吐き、そのまま柔らかく抱き締められる。
「よく帰ってきた。ハル、リュート、ルーも」
(……えぇと、ただいま)
「はい、ありがとうございます!」
(ぷ?)
リュートにぎゅうぎゅうと抱き締められるのとは違い、この抱き締められ方は、むず痒い。
脱出を試みるが、意外と力加減が素晴らしく、抜け出せない。
諦めて、リュートより厚さのある胸板へ体を預けると、ふふ、と柔らかく笑われた。
(イケメン、禿げろ)
「久々に言われたな、それ」
今度は、がしがしと遠慮無しに撫でられる。
やっぱり、こっちの扱いの方が落ち着く。
「組合長、ハルさんとイチャイチャしてないで、報告させてください〜」
「別にイチャイチャはしてないだろ。……おい、リュートも来い。俺の部屋で話を聞かせてもらうからな」
イリスさんのゆるい突っ込みに、エヴァンは苦笑いで応じ、私を抱えたまま執務室へ向かって歩き出す。
「あ、はい!」
エヴァンに呼びかけられ、冒険者達にもみくちゃにされていたリュートが駆け寄ってくる。
素直についてくるリュートだが、微妙に拗ねている。たぶん、というか、私をエヴァンが抱えているせいだ。
でも、相手がエヴァンだから言い出せず、うぅって唸っているのが、エヴァンの肩越しに見える。
甘えん坊め。
よく見たら、ルーも、高速でぷるぷるしてる?
こっちも、甘えん坊……なのか?
どっちにしろ、イリスさんが、一人と一匹を微笑ましげな顔して見てるぞ?
「それで、ギルバートさんは元気だったか?」
お。エヴァンも、ギルバートさんを、さん付けなんだ。年上だからか?
「はい、お元気そうでした〜。組合長の師匠なんですよね〜?」
「あぁ。冒険者としての心得とか、色々教えてもらったよ」
(へぇ、そうだったんだ)
ソファに腰かけ、テーブルを囲んだ私達は、一通り形式的な報告を終え、世間話に突入していた。
私を抱えたまま、エヴァンは昔を懐かしむような眼差しで、遠くを見ている。
ギルバートさんなら、体育会系な厳しい師匠だったろうなぁ。
「腕の怪我さえなければ、今でも現役だったろうな。残念だよ」
……いやぁ、そう言えば、現役復帰宣言してたような?
「はい。確かに、腕が治ったので、マノンさん……奥様と狩りへ行くとおっしゃってました」
「は? いや、だが、あの傷は、高位の回復術師でもないと、治せない……と――」
無邪気に告げるリュートに、エヴァンは訝しげに返すが、言葉は中途で勢いを失くし、問うような視線が私へ落ちてきている。
「……ハル、何か俺に言うことは?」
(いやー、戦力不足だったから、つい、ね?)
「ったく、相手がギルバートさんだから良かったものの……」
(ごめんなさい)
やっぱり、軽率だったよね。
反省してシュンとしてると、エヴァンに無言でがしがしと撫でられる。
見上げた顔は苦笑してるが、怒っている様子はない……?
「あの〜、二人の世界作らないでください〜。リュートさんが、怖いですぅ」
エヴァンと見つめ合っていると、イリスさんからゆるい突っ込みが入る。
「あ、あぁ、悪い」
(リュート?)
あの可愛いリュートが怖いと?
振り返ると――。
うん、確かに少し怖いな。
瞳孔開いてるし、瞬きしてないし。
(ぷぅ〜……っ)
あと、握り締められたルーが、地味にうにうにしてる。
(リュート、ルーが苦しそうだから)
「え」
無意識だったらしく、リュートは慌ててルーから手を離す。
すぐにいつもの葛まんじゅうに戻ったルーは、ぴょんぴょんと跳ねて、リュートの頭頂部へ陣取る。
確かにそこなら握られる心配はないよね。
私はエヴァンの膝からテーブルへ移動し、リュートの膝へ飛び移る。
「ハルさん、ハルさん」
(ん、放置してごめんね)
リュートは意外とヤキモチ妬きなんだから、放置するのは駄目だったね。
もっふもふとリュートを甘やかしていると、エヴァンが深々とため息を吐いた。
「組合長、頑張れ〜です〜」
イリスさんが、ゆるく応援してるけど……あ、報告書のボンボンの名前に気付いたのか。
あれは、ため息を吐きたくなるよね。
あとで、サプライズをして、楽しませてあげるべきか?
色々同情めいた眼差しを送っていたら、さらに深々とため息を吐かれ、最終的にデコピンされた。
なにゆえ?
納得がいかず、体を傾げていると、リュートに抱き締められた。
「そろそろ宿へ行きましょうか。部屋とれないと困りますし」
(そうだね)
(ぷ)
疲れたと思われたらしいが、あえて訂正せず頷いておく。あと、言葉が通じるようになっても、さすがに、ぷ、だけじゃ伝わらない事もあるよ、ルー。
そんな私達のやり取りを聞いていたエヴァンが、言いづらそうに口を開く。
「あー、前金払ってないなら、今日は宿は空いてないぞ? 確か、しばらく満室だとおかみが言って、リュートのことを心配していたからな」
馬小屋掃除するかね、とも言ってたが、と付け足し、エヴァンは訝しげに見てくる。
「じゃあ、また馬小屋お借りしましょうか」
(私がいれば、寒くはないしね)
「リュートさん、馬小屋で寝るんですか〜?」
「はい! 以前もお借りしました。ハルさんと一緒なら、俺は何処でも大丈夫です!」
イリスさんが、可哀想な子を見るような目で、リュートを見てるね。
馬小屋泊が決まったのに、ニコニコ笑ってるから、か。
「……何処でも大丈夫なら、俺の家に来るか? 部屋は空いてるぞ? 飯は出せないが」
「組合長、お願いします!」
想像通りだったらしく、私達が反応する前に、勢い良く立ち上がったイリスさんが、エヴァンへ向けて頭を下げてる。
ゆるさは何処へ……?
「あ、あぁ、了解した」
こうして、私達が何も反応しないうちに、エヴァン宅への宿泊が決定した。
「馬小屋、快適ですよ?」
リュートは不思議そうに呟いてるけど。
イリスさんの目が、さらに可哀想な子を見るような感じになったから、止めなさい。
その後、やっぱり、と言うか、帰り際、受付嬢達と悪ノリした冒険者達から、たくさんの励ましとご飯とお菓子をいただきました。
やっぱり、息抜きには、もふもふですね。
次回は、エヴァン宅へお泊まりです。
感想、ありがとうございます!いつも楽しく読ませていただいております。




