入浴タイム
前半はのんびり入浴タイムです。
イチャイチャ足りなかったと後悔してます。
「痒いところはありませんか?」
(大丈夫だよ)
現在進行形で精神的な部分がむず痒くて、色々削られてるけど……。
(ルーは痒いとこ、ある?)
(だいじょぶ)
リュートに泡まみれにされた私のもふもふを使い、ルーを洗ってるが、ツルツルして落としそうだ。
今現在、私達は仲良く入浴タイムだ。
全員一糸纏わぬ……うん、私とルーは、元々服は着てないから関係ないけど。
リュートは自分の体を洗うのもそこそこに、私を膝に乗せて洗ってくれている。
(いい匂いだね)
「はい、俺もお揃いです。流しますから、目を閉じてください」
(はいよ)
ルーは閉じなくても平気か、とか思いつつ、私は目を閉じると、泡に包まれたルーを抱え直す。
私が目を閉じたのを確認し、リュートはザバと勢い良くお湯をかけてくれる。
三回目で泡はなくなったみたいで、リュートの手が濡れたもふもふを探ってくる。
「シャンプーは落ちたみたいですね。じゃあ、浴槽に入りましょうか」
(うん。ルー、お風呂だよ)
(ままと、おふろ〜)
目を開けた私は、嬉しそうにぷるぷるとしているルーへ話しかける。
そのまま、私とルーはリュートに抱えられ、適温のお湯が張られたお風呂へ浸かる。
浴槽は、エヴァンの屋敷の物より小さめだが、ほぼリュート一人で入ってるようなもんなので、全然狭くはない。
「あったかいお風呂、いいですね」
(疲れがとれるよね)
(ぷかぷか)
私とルーは沈まないようリュートの膝に乗りながら、お湯の中をゆらゆらと楽しんでいる。
「気持ちいいですか?」
(うん。寝ちゃいそう。ルーは、寝ちゃってるし)
リュートの問いかけに、私は上機嫌に体を揺らして答える。寝ちゃったルーは、万が一にも溺れないよう私の上に乗せている。
「今日は大活躍でしたからね」
(そうだったね)
ぷぅぷぅ、可愛らしい寝息を立てているルーを、リュートは優しい眼差しで見下ろしている。
そのリュートを、私が見上げていると、ギュッと抱き締められる。
(リュート?)
「ハルさんが無事で良かったです。引き離された時はどうしようかと思いました」
あー、ならず者にさらわれた時か。リュート達が。
(私もリュートとイリスさんが無事で良かったよ)
絞られるタオルな気分になりながら、私はリュートをもふもふで抱き締め返す。
「ハルさん、ハルさん」
(はいはい)
甘えん坊モードにスイッチが入ったのか、リュートは私を何度も呼びながら、濡れて少しだけ萎んだもふもふに頬を寄せてる。
うむ、可愛い。
(そう言えば、体を拭くとこ見られるの恥ずかしがってたけど、全裸は平気……じゃないみたいだね)
私がふと思い付いた、今さらな疑問を口にすると、リュートの頬が一気に赤くなる。
「え、あ……っ」
と言うか、リュートの全身が赤くなった。
のぼせてるね、これ。
(そろそろ上がろうか)
倒れられたら困るし。
「は、はい……」
シューッと湯気が出そうなリュートを促し、抱き上げてもらって浴槽から上がる。
視線を下へ向けようとしたら、リュートに無言でギュッと抱き締められる。
さっきバッチリ見たけど、ってのは、言わないでおこう。
私を洗うのに夢中で、気付いてなかったみたいだし。
すぐに復活したリュートは、自分の体を適当に拭くと、私とルーをまとめてバスタオルで包む。
正直、こんなバスタオルじゃ、私を拭くには間に合わないけど、リュートが楽しそうなんで拭かれておこう。
でも……。
(まずは、リュート、せめてパンツ履かない?)
「あ……」
また、生娘みたいな反応されました。
リュートが下着を履き、再び私をバスタオルで拭いてくれる。
ルーはすっかり乾いたので、ベッドの上でぴょんぴょん跳ね回っている。
私はリュートが拭くのに合わせて、徐々にもふもふの水分を吸収していき、最終的には、いつも通りリュートの髪を水分を吸収して終了だ。
リュートはパンツ姿で、私を抱いてベッドへ飛び込む。衝撃で、ルーが弾んでる。
「いつも良い匂いですけど、俺の選んだ匂いがハルさんからするって、なんか、いい……」
あ、リュートの電池も完全に切れたみたいだね。
私のもふもふに顔を埋め、リュートからはすーすーと穏やかな寝息が聞こえて来ている。
(おやすみ、リュート。……相変わらずの寝つきの良さだよね)
いつもの宿屋ではないから、戸締まりは『今度こそ』きちんとしてもらってあるので、私はサイズを変えて、リュートを包み込む。
(まま、まま)
ルーも眠くなってきたのか、ぼふっと勢い良く私の中に突っ込んで来る。
(うん、ルーも、おやすみ)
(おや、すみ)
落ち着ける場所を見つけたのか、もぞもぞしていたルーは、すぐに動かなくなる。
子育て気分に浸っていた私は、ふと、気付く。
ルーは、私を『ママ』って呼ぶけど、身近な男性であるリュートを『パパ』とは呼んでない。
リュートは『お兄ちゃん』って感じだからかな?
だとしたら、誰なら『パパ』に……うん、何か、嫌な予感がするけど、気のせいだよね。
明日は甲冑アリ狩りだし、ゆっくり休んでおかないと……。
「では、あたし達は後方支援してますから〜」
当たり前だけど、イリスさんはそう言って、トイカの受付嬢のマノンさんと私達に手を振って見送ってくれた。
手を振ってたのは、イリスさんだけで、マノンさんは頭を下げていたけど。
私達とクロウパーティーは、これから甲冑アリの巣を目指し、巣の近くで野営する事になっている。
「よし、抜かるなよ?」
ギルバートさんも、前線基地代わりとなる野営地までついて来るそうだ。
さすがエヴァンの友人だけあって、戦闘好きなのかもしれない。
甲冑アリは数が多いので、一日で駆除は無理らしく、数日かけて各個撃破で兵隊を減らし、最後は女王を狩って終了だそうだ。
『繁殖力は高いけど、幸いにも成長速度は遅いから、そこまで苦労はしないはずよ。
女王さえ倒せば、巣は機能しなくなるから、あとは楽よ。
あと、お腹の部分は、焼くと美味しいわ』
以上、鑑定による女神様通信だ。
うん、女神様、食べたんですね、甲冑アリも。
どんだけ食い意地張った女神様なんだか。
(リュート、甲冑アリ、お腹を、焼くと美味しいって)
「そうなんですか? 楽しみです」
森の中の最短距離を進みながら、リュートは私の言葉に笑顔で頷く。
片手で、襲ってきたサルみたいなモンスターを、ぶら下げながら。
クロウパーティーがどん引きで、ギルバートさんは、ふむ、と感心してる。
鑑定によると、かなり素早いサルらしいけど、リュートの頭に乗ってたルーを狙った結果、リュートに捕獲された。
一瞥もしてないリュートに。
リュートは、ブンと腕を振ると、サルを遠くへ放り投げる。
遠くの方で、ギャッという声が聞こえたけど、気のせいだろう。
(りゅー、つおい)
ぷぅぷぅと鳴くルーは、上機嫌な様子で、何より可愛らしい。
「じゃあ、行きましょうか」
今度は四つ足の魔物――ヤマネコが襲ってきたが、リュートは鞘に入れたままの剣で殴り倒して昏倒させる。
ちなみに、私の知っているヤマネコとは、随分違う。簡単に言うと、可愛くない。もふもふ感もいまいちだ。
そう言えば、未だに私以上なもふもふには、この世界で出会えてはいない。
せっかくだから、異世界産なもふもふも楽しみなんだけど。
(ごはん、ごはん)
リュートの頭からスルスルと降りてきたルーは、楽しそうにぴょんぴょん跳ね回り、可愛くないヤマネコを体内へ飲み込んでいく。
ま、ぷるぷるも可愛いから、いいか。もふもふな子も可愛いけど、やっぱりうちの子が一番だよね。
(しっかり溶かして食べるんだよ? あ、牙だけは残してね?)
ヤマネコは人間には食べられた味じゃないみたいだし、ルーのおやつにちょうどいいよね。
また、ギルバートさん以外は、どん引きだけど。
スライムのお食事タイムって、衝撃的だから。
ルーが吐き出した牙をもふもふへと収納し、収納を終えた私と、おやつタイムが終わったルーをリュートが抱え、再び一行は進み出す。
リュートがさくさく進むので、こんな休憩をしてても、野営地には予定通り着く事が出来た。
まずは偵察に少人数が向かい、残りは野営地の準備をするという話になり、私達は偵察組になった。
ま、妥当だよね。
私もルーも、偵察向きだし。
私達の他は、ギルバートさんと、残念なマリオンだ。
三人プラス二匹で、甲冑アリの巣を目指して歩いていると、私とルーの鋭敏な耳に、耳慣れない音が聞こえてくる。
例えるなら、甲冑姿の兵士が歩いてるような、そんな感じの音だ。
(まま、がちゃがちゃ)
(そうだね。リュート、何か変な音があっちからするんだけど)
ルーにも聞こえたみたいだし、幻聴ではないと確信し、私はリュートへ方向を示す。
「変な音、ですか?」
(んー、金属みたいな、ガチャガチャ? こっちへ近づいてくるよ)
「おい、変な音がするって言ってるのか?」
私とリュートの会話に、ギルバートさんが険しい表情で入ってくる。
リュートは気にした様子もなく、コクリと頷いて、私が示した方向を指差す。
「あちらから、金属みたいなガチャガチャという音が、近づいてきているそうです」
「そりゃ、高確率で甲冑アリだな。数は?」
(数? 一、二、三匹だね。ルー)
耳を澄ませて数を確認した私は、ルーに思念を伝えて、形を変えさせる。
スリーピースにしようか悩み、無難に三本角にしておいた。うん、可愛い。
「……スライムに角が生えたんだが」
「甲冑アリが三匹いるって、伝えたいんじゃないかと」
「そうか。リュートがいない時には、便利だな」
微妙な表情で、そう呟くギルバートさん。
つまりは、リュートがいる時には、便利じゃないと?
確かに、口頭の方が早いか。
(るー、できた?)
でも、誉めて誉めてアピールする、うちの子が可愛いからいいんですぅ。
「三匹なら問題なく倒せるな。あいつらは、下手に攻撃すると仲間を呼ぶんだ。仲間を呼ばれる前に叩くぞ」
ギルバートさんの言葉に、リュートはもちろん、空気になりかけていたマリオンも頷く。
「抜かるなよ。――特にマリオン」
あ、空気だったマリオンがずっこけた。
恨めしげに見てくるマリオンを、ギルバートさんもリュートも、華麗にスルーし、私とルーが示した方向を油断なく窺っている。
ガチャガチャ音がかなり近くなり、リュート達にも届くようになったのか、マリオンの雰囲気にも緊張感が満ちる。
「先手必勝で行くぞ」
「「はい!」」
ギルバートさんの号令が、甲冑アリとの開戦を告げる――。
次はゆるーく戦闘です。
いつも通りだと思います。




