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トンコさん?

イリスさん視点です。

ゆるゆるふわふわな小悪魔さんです。


間違えたのわざとじゃないよ?という閑話です。


「女子会、女子会、ハルさんと女子会〜」



「イリス、うるさい…」



 受け取った書類を片付けながら鼻歌を歌うあたしに、同僚のウィナから小声が飛んできたけれど、今のあたしには気にならない。

 この面倒な書類を片付けたあとは、帰って来たハルさんと一緒に皆で女子会するのだ。

 いつもはリュートさんに(物理的に)張りついてるから、思い切り抱き締められないハルさんを、遠慮なくギューッとさせてもおう。

 あのどんな高級な毛皮にも勝てない最高のもふもふ感を思い出し、むふふ、と笑うあたしを、ウィナは不審者を見るような眼差しで見てきている。

 今日のあたしはかんよーだから、年下のウィナの失礼な態度も気にしないでおいてあげよう。

 初めてウィナが冒険者組合へ入った時は、年下の後輩ってことで可愛がろうと思ってたのに、先輩扱いしてくれないし、何だったらなんか小馬鹿にされてる気が……。

 思い出したら、ちょっとムカッとしたけど、別にウィナの事が嫌いな訳じゃない。

 それは置いといて、今はハルさんとの女子会のために書類終わらせないと……。

 いつもは気が進まない書類を高速で処理していると、


「……いつもそれぐらいやる気出す」


とか、そんなウィナの呟きが聞こえたけど、気にしなーい。

 いつもだって間に合ってるんだし、問題なくない?

 あたしはガリガリ仕事するような熱血タイプじゃないしー。

 ウィナの冷たい眼差しを気にせず、鼻歌混じりに書類を高速で処理していると、なんか周囲が微妙な空気になっていることに気づく。

 最近は全く感じないけれど、リュートさんがノクへ来たばかりの頃、お仲間モドキに邪険にされてた時のような、トゲトゲした雰囲気だ。

「…………何あれ」

 いつもはほとんど無感情なウィナの呟きに、明らかな嫌悪や怒りが混じるの感じて、あたしは処理していた書類から顔を上げる。

 そこにいたのは、




「リュートという冒険者を出せ!」


「こんな幼い少女を泣かせたんだぞ!」


「さっさとそいつを呼んできなさいよ!」




 そんな訳わかんないことを喚く、見知らぬ冒険者パーティーと、その背後でわざとらしくシクシクと泣いて見せる……えぇと、名前なんだったけ、ピンクのワンピースが似合ってなかったとしか正直覚えてない。

 村の代表者だっていう男の人は、爽やかだけど腹黒そうな人だったけど。

「……リュートさん、また絡まれる」

 ウィナの呆れたような呟きを聞き、あたしは状況をしっかりと理解する。

 どうしよう、来ないように連絡するとか?



「はっ? あり得ないな」



 あたしがぐるぐる考えてる間に、受けて立つとばかりに相手を小馬鹿にしきった表情で言い放ったのは、つい先日までリュートさんと臨時パーティーを組んでいたトラクさんだ。

 ノクへ来た当初はツンツンしまくって嫌われていたが、リュートさんとセットで過ごす間に、ちょっと素直になれないだけのいい子だと認定され、すっかりノクの冒険者に溶け込んでいる。

 今も声を出してくれなければ、あの美少年顔は見つけられなかったかも。

 侍らせてる思われている女の子達も、奴隷から救い出してもらったんだー、と本人達が広めたため、トラクさんを変な目で見るような人はノクにはほとんどいなくなった。

 すっかりリュートさんの親友ポジなトラクさんは、今も三人組相手に口でバンバン戦ってくれている。

 気付くと、トラクさんの彼女達も参戦してくれていて、ホッとしかけたあたしの目に映ったのは、最悪のタイミングで入って来たリュートさんの姿だ。

 アワアワするあたしの脇で、ウィナが静かに動き出す。

 向かっていったのは、組合長の部屋の方だ。

 組合長が来てくれれば安心だけど、その間も三人組はリュートさんを罵倒している。

 リュートさんに張り付くハルさんも、なんだかシュンとしているように見えて、あたしは何処かで何かがプチとキレる音を聞いた。



「お話し合い終わりましたか〜? えーと、トンコさんでしたっけ〜? ……何をされたか、言えるものなら言ってみてください〜。それが本当なら、ですけど〜。



 あ、見苦しく喚かないで、お話する際は人の言葉でお願いしますね〜?」



 にっこりと笑うのを意識して三人組と……もう名前はトンコさんでいいや、となった少女を見つめて首を傾げて見せると、何故だか固まられてしまった。

 こんな可愛いあたしを見て固まるなんて失礼な、と思ってたら背後から頼りになるアンナの声が聞こえてきた。

「あら? イリスがそこまでキレてるなんて珍しいわね」

 うふふ、と落ち着いた様子で現れたアンナの声に、ぷんぷんと言いながら振り返って訴える。

「だってぇ、そこの子豚……じゃなくて、トンコさんが、リュートさんを犯罪者扱いするんですよ〜? そんな事する人は許せませんよね〜?」

 同意を求めてアンナを見ると、困った子ね、と柔らかく頬を突かれる。

「基本的に冒険者組合としては、冒険者間の問題にあまり口出しはしないけれど──「さすがにここまであからさまにやられると、こちらとしても無視は出来ないぞ。しかも、ノク期待の星をいきなり犯罪者扱い、とはな」……私情を挟みすぎですね、イリスも組合長も」

 アンナの台詞を遮るように現れたのは、鼻の頭に絆創膏を貼った組合長だ。

 組合長の声に反応したのか、ハルさんの毛皮からポンッとルーが勢い良く飛び出して組合長へ飛びついた。

 ハルさんも可愛いけど、ぷぅぷぅ鳴くルーも可愛いとか思っていると、なんか雑音が聞こえた気がする。

 きっと気のせいだよね〜。

 とりあえず、あの三人組とトンコさんを追い出してもらって、残りの書類終わらせないと。




 目指すはハルさんとの女子会〜。




 ふん、と気合を入れ直していたら、苦笑いしたアンナから頭を撫でられた。


 三人組は…………気付いたら、いなくなっていた。





「……あの子、トンコじゃないから」




 隣に座るウィナから、そんな呟きが聞こえたけど、きっと気のせいだね〜。

名前つけたけど何だったけ? とリアルになったので、イリスさんに間違えてもらいました。


孫娘ちゃんの名前、気合を入れ過ぎて、覚えられません。(え?)

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