とーーちゃーく!
生きてました。
長らく放置していてすみませんm(._.)m
亀より遅い歩みですが、忘れていた訳ではないので!
待っていてくださる方がいるかはわかりませんが……
(ぶひ、ぶひ)
段々楽しくなってきたのか、ルーがぶひぶひ言いながら、リュートの肩の上で揺れている。
楽しいなら何よりだ。どうせ向こうには通じないし。
「トラク達、打ち解けてるみたいですね」
チラリと背後を窺ったリュートが、キラキラとした眼差しでこちらを振り返って話しかけてくる。
(……ソウダネ)
聞こえてくるのは、まさに口でのキャットファイト状態で。それを打ち解けてるって、リュートの発言じゃなきゃ嫌みだよ?
「ハルさんも参加しますか?」
(私の言葉通じないから)
「人の姿に……」
そこまで言いかけたリュートは、ハッとした表情をすると、私をギュッと抱き締める。
「……駄目です」
(うん、私も今はこっちが落ち着くから)
リュートと何の気兼ねもなくくっついていられるし。
もふもふボディを風に揺らしながら、私は目を細めてリュートを見つめる。
「ハルさん……」
きゅうん、と甘え声が聞こえそうな表情のリュートは、私を抱き締め直して顔を埋めている。
男前モードは終了して、今は甘えん坊モードのリュートらしい。
どっちも可愛いけど!
世紀末ヒャッハー以降敵襲はなく、遠くに見慣れたノクの門が見えてくる。
たった数日離れただけだけど、何かジーンと……。
「あれ? あそこにいるの、エヴァンさんじゃないですか?」
(本当だ。そっか、先に捕まえたの馬車で行ったもんね)
世紀末ヒャッハーを連れてってくれた冒険者達が、冒険者組合へたどり着いて、説明してくれたんだろうけど……。
(ぱぱ、ぱぱ)
ルーがエヴァンを見つけて、嬉しそうに高速ぷるぷるしてる。
それは可愛いから放置して、問題はエヴァンだ。
「エヴァンさん、機嫌悪そうですね」
(リュートにもそう見える?)
門番の脇で仁王立ちしてるエヴァンは、何でか知らないけど、かなり怒ってるように見える。
そう言えば、さっきの冒険者達もそんな事言ってた気がするし、何かあったのかもしれない。
「エヴァンさん!」
(エヴァン!)
声が届く距離まで来ると、リュートは身軽に走行中の馬車から飛び降り、エヴァンへ駆け寄る。
御者さんとトラクには、説明済み……と言うか、トラクが孫娘ちゃんからリュートを逃がすために、歩いて行けって言ってくれたんだよね。
トラクはすっかりいい子だ。元々、リュートをダメにしたような子なんだから、根はいい子過ぎるくらいいい子だ。
元祖いい子の肩にもふっとしがみつきながら、私はそんな事を考えてた。
エヴァンに掴まれてさらわれる一瞬前までは。
(ちょ、ちょ、エヴァン?)
「エヴァンさん!?」
痛くはなかったが、久しぶりの乱暴な扱いにわたわたしてる私に、リュートもわたわたしてる。
可愛いなぁ……じゃなくて、今はエヴァンだ。
「……体は、その、平気なのか? 俺に触られて、嫌じゃないか?」
怒ってるように見えたエヴァンは、何処か泣き出しそうに見える表情で私を見つめている。
空気を読んだ門番さんが、少し離れた場所でトラク達が乗った馬車を通してるのが視界の端に見える。
「ハル……」
なんだろう、むず痒い。
思わずもふっと身震いすると、エヴァンの顔がさらに怒気へ染まる。
「……ハルに触れた全員、ぶち殺したい」
ボソリと吐き出された言葉に、私はエヴァンの怒りの理由を悟り、もふもふな体で遠慮なくエヴァンの胸板へ体当たりし、
(未遂だったから大丈夫だよ。リュートが助けてくれたから)
と、しっかり告げる。
「……そうだったのか」
「エヴァンさんもハルさんを心配してくださったんですね」
空気を読んで黙っていたリュートが、エヴァンの怒りの理由を悟り、安心した様子で笑って言い、納得している。
(心配かけて、ごめん)
「……あぁ。本当に、寿命が縮んだ」
そのまま優しい力加減でギュッと抱き締められ、相当心配させてしまった事を思い知る。
本当に優しくて、内面もイケメンだ。
(……エヴァンになら、抱かれてもよかったかなぁ)
思わず心の声を駄々漏れさせると、
「「!!」」
二方向から声と言うか、驚いたような気配がして、私は駄々漏れた思考を誤魔化すように、もふっと膨れておく。
って言うか、二人共、ちょっと失礼だよね。
エヴァンは何か真っ赤になって顔を手で覆ってるし、リュートは今にも泣きそうな顔をしてる。
この反応を見る限り、うん、抱いて! って、言う前で良かったかな。
(アンナさん達も心配してくれてるよね? 組合へ行こう?)
「あ、あぁ、そうだな。報告を聞きたい……はぁ」
「……ハルさん」
こら、エヴァン、ため息吐くな。
リュートは……どうしたんだろう?
あとで聞いてみるか、と思い直し、私はエヴァンの肩上へ移動する。
門番さんが、視界の端で胸を撫で下ろしてるのが見えた。
機嫌の悪いエヴァンが、ずっと脇で仁王立ちしてたんだもんね。
ホッとしたんだろう。
「ほら、行くぞ」
よそ見をしてたら、エヴァンの腕の中へと再び抱え込まれた。
(リュート、行こう?)
「……はい」
私を取り返し損ねたせいか、リュートの返事に元気がない。
それでもいい子なリュートは、話しかけてくる人がいれば、人懐こい笑顔で答え……またしゅんとするを繰り返してる。
可愛いなぁ、とホッコリしてる内に、いつの間にか冒険者組合へ到着していたらしい。
「ハルさぁ〜ん!!」
突撃してきたイリスさんが、私をエヴァンから強奪し、そのまま受付嬢三人娘の所まで運ばれる。
「……おい」
エヴァンの声はスルーされた。
リュートは、と視線を送ると、トラク達と一緒に冒険者達に囲まれてる。
「おかえり!」
「よく帰ってきたな!」
「改心したのかよ!」
「どっちにしろ、ハーレム羨ましいわ!」
相変わらずノリノリだな、ノクの冒険者組合は。
そう言えば、孫娘ちゃんの姿がない。
「なんか〜、リュートさんがぁ〜、とかうる……少々お騒がしいこむす……女の子は、依頼達成の報告してもらって〜」
「叩き出した」
イリスさんが緩く誤魔化してたのを、ウィナさんが無表情でぶった斬った。
あの子、一体何をしでかしたんだろ。
「リュートさんへ、デートして欲しい、と指名依頼を出そうとしてたのよ。で、断ったの……」
私の表情で察したのかアンナさんが説明してくれ、
「もー、大変だったのよ? 子豚ちゃんみたいにぴぎーぴぎー騒いじゃって」
と、近寄ってきた女性冒険者が付け足して、ゲラゲラと豪快に笑った。
(やぱ、ぶた?)
(かもね)
何か光景が想像できた自分が嫌だったり?
「それで、ハルさん。組合長が平常運転に戻ったって事は……その未遂だったのよね?」
アンナさんが珍しく歯切れ悪くおずおずと、話しかけてくる。
「リュートがいたから平気だったそうだ。……俺だって、その場にいたら、助けにいけたのにな」
私がイリスさんとウィナさんに揉まれながら、どう答えようか悩んでると、代わりにエヴァンが答えてくれた。後半は意味不明だったけど。
「「よかった〜」」
エヴァンの言葉を聞いた瞬間、珍しくユニゾンしたイリスさんとウィナさんの声と同時に、両側からギュッと抱き締められる。
「本当に、よかったわ」
むにっと潰れた私を、優しく微笑んだアンナさんが撫でてくれる。
「よかったな、ハルー」
「本当によかった、よかった」
「本当になぁ」
ノリノリな冒険者達が訳もわからず囃し立ててくれ、やっとリュートとトラクが解放されたようだ。
トラクは何かやつれつつ、リュートはキラキラ笑顔で近寄ってくる。
その後ろからは、トラクの彼女達がついてきてる。はにかんだような笑顔が可愛いなぁ。
え? もちろん、リュートの方が可愛いですけど!
(るーは?)
(ルーも可愛いよ!)
もふもふからポコッと出て自己主張したルーは、すぐにまた引っ込んだ。私の答えに満足したらしい。
「よし、とりあえず俺の部屋で詳しい話を聞く。リュート、トラク、ついてこい」
エヴァンは何か言いたげだったが、ここで話す事でもないと思ったのか、階段を上りながら手招きする。
「彼女ちゃん達は、ここで休んでてね〜」
トラクの彼女達をイリスさんが案内している隙に、私はウィナさんの腕からぬるっと抜け出してリュートへよじ登る。
「……残念」
「お帰りなさい、ハルさん」
早速リュートからもぎゅっと抱き締められるが、ひょうたん型になる程じゃないので気にしない。
「本当に仲がいいな、お前ら」
「……トラクでも、ハルさんは渡さないからな?」
交わされるトラクとリュートの会話は、いかにも同年代の友人っぽくて、私は微笑ましさからリュートの腕の中で目を細める。
事態を知らないエヴァンは少し驚いた顔をしたが、すぐ何事も無かったように歩き出した。
「で、何があった? 簡単に説明しろ」
執務机に肘をついて、某ゲン○ウさんなポーズのエヴァンに促され、リュートが元気よく答える。
「はい! ゴブリンがいました!」
(倒した!)
私もついでに便乗してみた。
「お前らは、簡単にし過ぎだ! ……トラク、頼めるか」
駄目だったらしく、トラクへ全ては丸投げされた。
「えぇ、と、はい。では、まず依頼との相違ですが……――最後は、召喚したモンスターに裏切られ、召喚主は倒れ、そのモンスターであるゴブリンメイジもリュートが倒したので、残党の問題もないと思います。依頼との相違に関しては、依頼人には悪意もなく、知る由もない事態だったので」
トラクの説明は意外な事に簡潔でわかりやすく、ちゃんと村人の事も見て、話を聞いてたのだと感心してしまう。
「あぁ、わかってる。罪には問うような事ではない。まぁ、多少の増額は仕方ない」
「示しがつかないですからね」
シリアル……シリアスな会話の脇で、リュートは私を両手でもふもふしながら、
「俺は別にいいんですが……」
と、困ったような笑顔を浮かべている。
「リュートが良くても、他の冒険者までも同じ扱いをされたり、同じようにしてくれると思われたら、他のヤツラが困るだろうが」
はぁ、とため息を吐いて、淀みなく説明しきったトラクは、遠慮なく肘でリュートの脇を小突いている。
「そっか、トラクは頭いいな」
「お前が考えなさすぎなんだよ」
仲良しでいいなぁ。
「依頼達成は確認した。依頼料は、明日になるが構わないか」
「はい!」
「はい」
小突きあってた二人は、エヴァンの声に仲良く背筋を伸ばして返事をする。
「…………いや、本当に、お前ら、何があったらそんなに仲良くなるんだよ」
二人のあまりの息の合いっぷりに、エヴァンが軽く引いたぐらいだ。
シリアスは苦手なんです。
疲れてるとどうしても展開がピンクになりかけて、何回かボツだしました(´・ω・`)