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報告しよう。

タイトルまんまで。


降りて来たので、一気に書き上げられました。

一時間クオリティ。村の名前、あってるよな?と思いつつ書いてます。


最初は第三者視点で。


後半はいつものもふい視点で。


ハルは盛大にフラグを建ててます。

【とある冒険者の報告書】




 ノクの冒険者組合の執務室では、珍しく渋面で届けられた封書を睨むエヴァンの姿があった。

「……カナ村から急ぎの連絡? リュートかトラクに何かあったのか?」

 エヴァンは、受付嬢三人組の一番年上であるアンナから渡された封書を眺めつつ、首を捻って問いかける。

 トラクはともかく、エヴァンが認めた実力者のリュートは、ゴブリン程度にやられる訳はなく……よって、エヴァンの疑問は当然だろう。

「それは冒険者の持ってきた急ぎの報告書を読めばわかるんじゃないかしら?」

「話は聞いてないのか?」

「相当急いで来たらしくて話せる状態じゃなかったから、話はまだよ」

 エヴァン以外の人目がないため、アンナは不安を隠さず、表情を曇らせてゆっくりと首を横に振って告げる。

「ひとまず組合に待機はさせてるな?」

「えぇ、もちろん」

「――内容を見てから考えるか」

 ガシガシと乱雑に髪を掻き乱したエヴァンは、とある冒険者がもたらした封書を開き、読み始め……大きくため息を吐く事になり、最終的に執務室の机に崩れ落ちた。




【カナ村におきるゴブリン騒動について】



 封書の中身には、そんな題名がつけられていた。

 まずはリュートとトラクが受けた依頼の内容の説明から入り、その依頼はほぼ完遂された事が書かれており、村長のサインもある。ある意味簡易の終了証明書だ。

 そこまでは良かった。

 何でお前が報告してるんだよ、とか疑問はあるが、たいした問題ではないだろう。

 次の項目の方がたいした問題なのだから。



「アンナ、その冒険者は一人だったか?」

「いいえ。パーティーメンバーと、そう言えば兵士と来ていたわ」

 アンナの答えに、エヴァンは深々とため息を吐き、報告書をアンナの方へ滑らす。

「……え? ゴブリンの度重なる襲撃は魔物使いによる人為的なもの? 犯人は指名手配犯? リュートという名の冒険者が捕まえた……そう、なら、良かったんじゃないかしら。リュートさんなら、大丈夫でしょう?」

「そうだがなぁ……どうして、ただのゴブリンの巣を潰しに行って、指名手配犯なんか当たるんだ、あいつは」

 心配半分呆れな半分なエヴァンの台詞が誰に向けたものか気付いたアンナは、うふふ、と笑って流しつつ、ペラと何と無く報告書の次のページをめくる。

 最後に追加されたらしいそのページは、まだエヴァンも目を通してないページだ。

「……嘘、でしょう?」

 余裕だったアンナの表情が固まり、手から報告書が滑り落ちる。

「どうした?」

 アンナの様子を訝しみながら、エヴァンは報告書を手に取る。

「あー、被害報告か。どうやら、とんだゲス野郎達だったらしいな」

 踊る文字の中に、大概の女性なら嫌悪するであろう犯罪の事と、その被害者であるトラクの仲間の事が書いてあり、エヴァンは一瞬納得しかけ――うん? と未だに固まっているアンナを見る。

 冒険者組合の受付嬢という仕事柄、アンナは所謂肌色系な荒事被害も見てきている。しかも、アンナは受付嬢の中で一番の年嵩で、肝も据わっている。

 どうしてここまで怯えたような顔を? ……エヴァンがそう悩んだのは、ほんの数秒だった。

 報告書の文字を追ったエヴァンから、隠そうとしない殺気が、ゆら、と立ち上る。

「……冒険者は、待たしているんだったなぁ?」

「っ、えぇ。――犯人達は、領主から兵士へ引き渡し済みだそうだけど」

「チッ、犯人はいない、か」

 凄みのある笑顔で舌打ちをするエヴァンを見ながら、アンナは固まった思考の中で犯人が引き渡し済みな事を感謝する。


 でなければ――。


「犯人達は殺されてたかもしれないわね」



 元々捕縛は生死問わず。

 今のエヴァンなら、殺気を向けただけで相手を殺せそうだ。

「まぁ、私も出来る力があるなら――、




引き千切ってやりたかったわ」

 何処を? とハルがいたら突っ込むだろうが、突っ込みは不在。

 うふふ、と不穏な笑い声を洩らしながら、アンナはエヴァンを追って執務室を出ていく。

 机に読み終わった報告書を残して。



【カナ村における被害報告】


 食料や金品強奪などが主で、人的被害は少なかったようだ。

 これはお眼鏡にかなう女性がいなかっただけらしく、現にゴブリン掃討に来た冒険者の少女達が捕まり、被害に遭ってしまっている。

 幸いにも少女達には怪我はなく、守るために戦ったパーティーメンバーの少年トラクも怪我で済んでいる。

 精神的なケアはトラクに任せれば問題はなさそうだが、犯人達へのさらなる厳罰をお願いしたい。



 追記事項。


 村長の孫娘にあたる少女も被害に遭ったが、こちらは冒険者の少女達のおかげで未遂。

 その少女から話を聞く中で、姿を消した被害者がいる事が判明。

 冒険者トラクも目撃しているため、見間違いなどの可能性は低い。

 姿を消した少女は村人ではなく、かなり目立つ容姿をしていたらしい。


・真っ白な長い髪に、金色の瞳。

・守ってあげたくなるような雰囲気の美少女。

・服装は一般的な冒険者。


 これが目撃者二人の共通していた行方不明少女の特徴である。

 犯人側からも、

「舐め回したくなるイイ女」

などという情報もあるため、主人を失ったゴブリンにさらわれた可能性も捨て切れない。

 捜索は急を要すると思われる。




「……これは、組合長がぶちギレるの納得」

 執務室へ静かに入ってきた受付嬢三人組の一人、ウィナは無表情で呟き、報告書をきちんと揃えて、定位置へ置く。



「……もげろ」



 だから何処が? ハルがいたら突っ込むだろうが……以下略。



 謎の行方不明被害少女の正体は、ノクの一部職員の中ではバレバレだったようだ。



[ハル視点]



(うー、何かブルッとした)

 テントの中で妙な寒気を覚えた私は、もふもふをもふっと揺らし、リュートにくっついて暖をとる。

 私の方があったかいだろ、とか思わなくもないが、気分だ。

 ゴブリン来ないか確認見張りも、今日の夜で最後だ。

 すっかり夜担当私達、昼担当トラブル君改めトラクパーティーになったので、ここしばらく昼夜逆転生活気味だ。

 ま、夜の見張りは私とルーがいれば問題無いんだけど、それだと村人が安心できないからね。

 そんな事を思いながら、私はリュートの上でヘタッとし、毛布代わりになる。

 私が寒気を感じるぐらいだから、気温が下がったのかもしれないし。

 真っ昼間で晴天だけど。

 そう言えば、下卑A達と報告を頼んだ冒険者達は、もうノクへ着いたかな?

 エヴァンに伝言頼みたかったけど、私は元の姿だったし、リュートは事後処理で走り回ってたから。

 心配かけ……ないか。

 犯人は捕まってるし、ゴブリンならリュートの敵じゃないし、トラクはツンデレ系ライバルに進化したし。

 最後は関係ないか、と内心で笑ってると、リュートの手が蠢いて私をしっかりとホールドする。

 夜の見張りまでは、まだ時間があるし、私も眠ろう。

「はる、しゃん……」

 リュートの可愛い寝言を聞きながら、私はゆっくりと目を閉じる。

(るーも)

 テントの中で跳ね回っていたルーは、その勢いのまま私の中へ突っ込んできた。

 ボフッと音がし、私のもふもふ内をルーが泳ぐように遊んでいる。

(寝るんじゃなかったの?)

 クスクスと笑いながら、ふと思い付いてルーを鑑定する。

 もしかしたら、進化してる可能性が……。



【もうちょっとよー。頑張って!】



 通知表ですか?



【あ、あのね、魔法使えるようになったわ! 誉めてあげて!】



 だから、通知表ですか?


(ルー、魔法使えるようになったの?)

 脱力感に襲われながら私は、ルーに確認する。

 かなり高速移動してるが、私のもふもふ内での移動なんで、位置は何と無くわかる。

 目で追えないけど……。

(あい! るー、まほ、つかう、できる!)

 張り切ってる、張り切ってる……って、マズイ!

(ルー、あとで、お外へ行ってから見せてね?)

 張り切ってたルーが、一気にしゅんとへたれて胸が痛む。

 でも、さすがにここで魔法はヤバい。

 どの属性だろうが、テントの崩壊する未来しか見えない。

 次はリュートか……。

 レベルはあんまり上がってないか。

 高くなると上がりにくいだろうし。

【狂戦士に変わる新しい称号が付いたわよ〜】

 おー、良かった、良かった。

【守護者……愛する者を守るために強くなる。

素敵でしょ〜! 狂戦士の百倍素敵!】

 ゆる女神様のテンションが高い。文字だけなのに伝わってくる。

(ふふ、でも本当に素敵ですね)

 ゆる女神様に向けて呟きながら、私は眠るリュートの頬をもふっと撫でる。

 急に治ったりしたらおかしいので、リュートの頬には小さな切り傷が複数残っている。

 私を助けるため、森の中を突っ切った時に出来た傷だ。



(大好きだよ、リュート)



「おれはあいしてます!」


 起きてるんじゃないかってぐらいの寝言が返ってきて、ビックリした私とルーが飛び上がるが、リュートは相変わらず寝ていた。

 寝たフリとかではなく、熟睡状態だ。

 思わず鑑定したから、間違いはない。



「どうした!」



 驚いて様子を見に来たトラクは、熟睡状態のリュートを確認し、



「心配した訳じゃないからな!?」



なんて、てんぷら……じゃなくて、てんぷる……でもなく……うん、THEツンデレっていう台詞を言って去っていった。

 ちょっと可愛いなぁ、とほっこりした。

 その瞬間、カッと覚醒したリュートは、さらに可愛くて全身で愛でておいた。



 さぁて、明日はノクへ帰れるから、最後の見張り頑張らないとね。



(ぱぱ、あいたい)



 私の駄々漏れ思考でルーがエヴァンを恋しがり、慰めるのが大変だった。

 エヴァンはパパじゃないって教えた方がいいんだろうか?

 本人に確認してみようかな。

 知らない間にモンスターのパパ扱いは嫌かもしれないし……。



 エヴァンへ確認事項を内心でメモし、私はいつの間にか再び眠っていたリュートの寝顔を見つめていた。


ハルの危機。主に貞操的な。


たぶん、聞きたい事はかなり地雷案件。


でも聞いちゃうのがハルクオリティ。


感想、コメントありがとうございます。

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