第12話 二人は若い
――時はミッシェラがアーガイル達と出会う前にまで遡る。
ジャック・リーパーを含むミッシェラ陣営の二人に加え、ミッシェラの護衛役兼ジャックの監視役である近衛騎士アゼルの三人は、戦線の左端を担当するアーガイルと、中央を担当するアニトラの丁度間の辺りをアゼルの先導によって進んでいた。
「お二人とも、絶対に私の側を離れないように。」
アゼルが二人に対してそういった言葉をかける。ミッシェラは聞いてもいない様子だが、アゼルがそう念を押すのには2つ理由がある。一つは護衛対象のミッシェラを危険に晒さないようにするため、そしてもう一つは、大罪人ジャック・リーパーに変な動きをさせないためである。
「それにしても貴様、余を宮殿まで歩かせておいて、さらにここからまた長い道のりを歩かせるつもりか?全く不敬極まりない。ジャックお前、そうは思わんか?」
「...嫌なら来なくとも良い。『終焉」を殺すのは私だ。お主に関係はない。」
「ふっ、ジャックお前、主である余に対してそのような口ぶりとは...フフフ、だからお前を気に入ったのじゃが。」
終始気を緩めず、自分の主であるはずのミッシェラに対してまさに不敬ともとれる発言をなんの恐れもなく口にするジャック。だが当のミッシェラはその事を逆に気に入っている様子で、扇を口に当て薄笑いを浮かべている。
そのような事は真面目を突き詰めたようなアゼルにとって信じられないものだったが、ここの陣営の者達に常識は通用しないと見て、すぐに考えるのをやめた。
「全く、わざわざ竜車を降りずとも良いではないか。相手に見つかるのを恐れて余に苦労をかけるとは。貴様には賛同できんな、騎士アゼルよ。」
「敵に見つかる頻度は低ければ低いほど良いものです。まず王選候補者である方々がこのような場に来られているだけで本来はあり得ない事。安全性を重視するのは当然です。」
「――それだというのに護衛はまとめて三人だけなのか?」
「それは...賢人会の方々の事もありますし、我々近衛騎士は騎士団の要。その者が前線に立つと立たないでは戦の結果は大きく違うものです。これもアダム団長の考え。きっとこれが最善の選択です。」
アゼルは自分達の直属の上司であるアダムの事を信じてやまない。彼は王国の治安維持に名実共に最も貢献してきた男である。600年続く大国の治安維持を任される重圧は、他の者が想像できないほど重いものだろう。だが彼はそのプレッシャーをものともせず、就任から今に至るまで国を危機に晒したことはない。
アゼルはその男の下で、人々のために働けることに誇りを持っていた。自分も彼のように万民を守り、国のために貢献したいという気持ちはきっと騎士団の誰よりも強いだろう。しかしそんなアゼルにもミッシェラは冷ややかな目を向ける。
「...確かに忠義や信念は美徳そのものじゃ。それに背かぬよう生きる者は尊敬に値するじゃろう。しかし貴様のそれは盲信に過ぎない。騎士団の長は絶対に正しいのだという思考停止の無条件の信頼。そのような物は飾りにもならん屑の類よ。今すぐに捨ててしまえ。」
「...そのような発言、たとえミッシェラ様とて容易く見過ごすことは出来ません。どうか撤回を。」
「考えてもみろ小坊主。本当に護衛を付けるべきなのは余や他の候補の物達じゃろう。ウィンストンが死ぬまでの奴らは、ただ机を囲んで下らん談義をするだけの穀潰しの堕落した貴族共じゃ。そのような者はいくらでも代えが利く。お前とて分かっておるはずじゃ。じゃが余達はどうじゃ。あの条件に当てはまる候補者は国中を探してもたったの六人だけ。どちらにより価値があるのかなど考えるまでもないじゃろう。」
アゼルが抱くアダムへの信頼や憧れを冷ややかな声色と理論的な言葉で徹底的に打ちのめしてゆくミッシェラ。確かに考えてみれば彼女の言う事は至極真っ当だ。肩入れせずに考えればだれもがそう思うだろう。だがそのような事を言われてもアゼルの信頼はそう簡単に動かない。動かないはずだと自分に言い聞かせる。
「...貴女は何がおっしゃりたいのですか」
「余はあの者を全く信用しておらん。必ず裏がある。余がそう言うのじゃ。何より信頼に足る言葉じゃろう?」
「――――」
彼女は自分が今まで最も信頼してきた正しさの象徴に対して疑いの気持ちを持っている。確かに今の話を聞けば今回団長の行った作戦にはいくつも穴がある。だがそんな事は考えたくない。自分の信頼するものが純粋な正義ではない事など。
「貴様はまだ若い。もっと柔軟な思想を抱くべきじゃな。そうでなければ生き残れはせぬ。肝に銘じておくが良い――まぁ敵が何人、何十人、何百人来ようが関係はないし、護衛など元々必要のないものじゃが。余の身の安全はジャックが居る限り安泰じゃ。お前はせいぜいジャックの監視をするフリでもしながら適当に付いて歩いているだけでよい。」
「...私は騎士です。仕事に手は抜きませんし、私は2人の護衛です。貴女の身を守るのは私だ。」
「貴様が私を守る?フフフ...――おっと」
ミッシェラがアゼルの事を嘲笑的な目で見ながら肩を小さく揺らし始めた瞬間、彼女に向かって火を纏った矢が3本降ってきた。ミッシェラは軽い身のこなしでそれを躱し、特に驚きもせず矢が飛んできた方向に目を向けると、並ぶ町並みの屋根には敵と思われる影が無数の大群で立っており、皆武器を携えているのが見えた。無論たった3本の矢で攻撃が終わる訳はなく、それを切っ掛けとして火矢の豪雨が降り始める。
「クソっ、なんて数だ!」
アゼルは一瞬のうちにミッシェラの前に出ると、鍛え抜かれた騎士剣を抜き、尋常ではないスピードで飛んで来る矢を切り落としてゆく。数え切れない量の矢を最低限の動きで防ぐべき範囲を完璧に守り通している。しかしだれがどう見ても生存を諦めるような状況。万に一人の剣才を持つ彼でも矢をたたき落とすので手一杯だった。
「これでは守りばかりで手詰まりだ...なんとかしないと...!」
そうは思えどなかなか状況は変わらない。なにせ武器はこの剣だけ。良くも悪くも剣の道を極めはしたものの、その剣では相手に反撃を打つことはできない。近接武器としては強力、さらには遠距離にも対応できる移動スピードも兼ね備えてはいるものの、今は守らなければならない者がいる。いや、いなかったとしてもこれほどの猛攻の中を無傷で打開することはできないかもしれない。
だがそんな中でたった一人だけ、降り止まぬ火矢の豪雨に対して攻勢に出られる者がいた。
ミッシェラの従者ジャック・リーパーである。
彼は降りかかる無数の火矢を、腕に付いた小さな防具を使い、武器を使わずにそれらを次々に弾き落として行く。だが落とすだけでは収まらない。彼の腕は矢を弾き落とす動きの中に、さらに攻撃を加えているのだ。矢とは違う、小型の薄い刃のような物体が矢よりもさらに圧倒的な数、かつもの凄いスピードで彼の腕から射出されていく。
一体あの黒装束の中にどうやってあれだけの武器を収納していたのか。武の真髄を究めた者ですら見ることを許さないほどの速さで動く彼とその武器は、敵に逃げる猶予さえ与えずに屋根の上の敵を一掃して見せた。火よりも赤い血の飛沫が、火矢の雨とは違う雨となり降り注ぐ。
「...なんて事だ」
すっかり止んだ雨上がりの街に騎士剣を携えたアゼルは思わずそう呟く。その原因は今まさに目の前で行われたジャックの戦闘によるものだ。
――あまりに圧倒的すぎる。
近衛騎士団に史上2番目の年少入団を果たしたアゼルから見ても、ジャック・リーパーの戦いは凄まじいものがあった。あの火矢が大量に降り注ぐ状況下、自分は剣でミッシェラを守るだけで手一杯だった。任務は遂行できていたものの、この場に彼がいなかったならどうやってあの状況を脱していただろうか。自分も魔法も使えなくはないが剣に比べて練度が低い。恐らく魔法を使いながらでは全力で剣を振るう事はできないだろう。
しかし彼はアゼルの何倍も素早い動きと、アゼルの何倍も繊細な所作で矢を躱し、同時に攻撃を加えていたのだ。それも魔法ではなく投擲で、大量の武器を射出していた。完全な体術のみであの状況を切り抜けたのだ。このような圧倒的な戦闘が行える者を、アゼルは自分の17年の人生で彼の他にまだ1人しか見たことがない。
「無事か」
戦闘を終えた黒い死神が息一つ切らさずに低く冷め切った声をかけてきた。
「...貴様なんぞに感謝の気持ちを持つことなどあり得ないが、お陰でミッシェラ様を守ることはできた。」
「私も人に礼を言われるほどの者ではないと自覚している。情には無縁だ。」
「――そんな事を言う者が情に人生を狂わされたというのだから皮肉よの。」
睨み合うアゼルとジャックの間に無傷のミッシェラが口をはさむ。目から下は扇で隠しているので見ることは叶わないが、目だけでも自分の従者を嘲るように微笑んでいるのは分かる。
「...いくらお主といえどもその事を軽く口に出すならば命はないと思え。」
ジャックは自分の主を見ているとは思えないほど殺気に満ちた目でミッシェラを睨み付ける。常人ならその視線だけで恐怖のあまり気を失ってしまいそうな迫力だ。
「フフフ、怖い怖い。」
だがそれすらもミッシェラの心を揺るがす事はできないようだ。彼女はいつもと変わらないどこか飄々とした雰囲気を醸している。だが今はそれに構っていられる時間はない。
「敵はあれで終わりか?」
「...すぐに分かる。」
アゼルの問いにジャックが静かにそう答えると、視線を逸らした。それに続いて同じ方向を見ると、遠くから先ほど殺した者達の2倍以上もあろうかという程の敵の大群が道の前後から一行に迫って来ているのが見えた。
「覚悟はしていたがまさかここまで多いとは...前方の騎士団は何をしているのだ...!」
アゼルは想像の何倍以上にもなる敵を見て、前方の騎士団が壊滅的な被害を受けたのではないか、とそう思った。しかしこの状況では前の心配はできない。まずはここを突破しなければ。そう思いアゼルは再び剣を構える。しかし――
「――無用。」
その声を聞いた途端、アゼルの意識が体を離れる。
「なっ」
どうやら首筋に手刀を当てられたようだ。すぐに意識が体から乖離していく感覚。視界はボヤけて白んでゆく。意識を完全に失う前に、アゼルは黒い死神がまるで噎せ返るような深い憎悪に満ちた声でこう呟くのを聞いた。
「...復讐を。」
それから数分も経たないうちに街角の広場は血で赤く染まった。中央に立つ2人を除いて――
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「はぁ、はぁ、着いた~!!」
そう呟くのは透き通るような金髪を持つ美しい少女だ。彼女は息を切らして膝に手を付いている。そう遠くはない道のりではあったものの、道中危険な目にあったせいか、気付かぬうちに緊張していたのだろう。だがここまで来れば安全だ。
首都北部の最前線より少し後方にあるのがここ、「ウェリス北部総力戦(隼太仮命名)」における対策基地だ。「終焉」の戦闘員から取り返した廃墟に机と椅子、その他諸々を置いただけの質素な作りをしている。中には騎士団の制服を着た者が数人円を描くように座っている。1人だけ違う装いをしているのが少し気がかりだが。
「レティシア様、それと皆様。無事でなによりです。」
同性が聞いても思わず美しいと感じるような男性の声が聞こえた。まず隼太たちに声をかけてきたのは、宮殿内で「剣聖」と呼ばれていた金髪の美丈夫だ。騎士団の制服に身を包み、腰に備え付けた剣は静かに佇んでいるが、それだけで脅威と感じるほどのオーラを放っている。
「いや全然無事ではねぇよ...死ぬかと思ったぞマジで...」
隼太がそう小言を漏らすが、「剣聖」以外の者には聞こえていないようだ。
「なるほど、やはり先行していた暗殺部隊がいたか...十分な護衛を付けられず申し訳ない。そういえば君の名前を聞いていなかったね。僕はフローレンス・ノーリッシュ。近衛騎士という身に余る大義を背負わせて頂いている。」
「自己紹介ありがとうございます。俺は大原隼太っていいます。どうぞよろしくお願いします。」
「ふむ、珍しい名だね。よろしくハヤタ。僕の事も呼び捨てで構わないよ。出来るだけ気さくにいこう。」
「剣聖」は微笑んでそう言った。隼太は一従者に過ぎない自分にここまで低い腰で対応する義理はないとは思うものの、厚意はできるだけ受け取っておくのが良い関係を築く上で大事になることは知っているのでタメ口で適当に応答する。フローレンスは満足そうに笑った。
「そういえばお前は『剣聖』とか呼ばれてたけど、そんな奴がこんなとこに居ていいのか?」
「ふむ、君の対応力の高さにいささか驚かされたが...別に僕も好きでここにいるわけじゃないんだ。」
「...というと?」
「簡単に言えば、僕みたいな非力な控えが出なきゃいけないほど緊迫した状況じゃない、って事かな。前線はエルヴィスが指揮を執っているし心配ないよ。」
彼は苦笑いを浮かべておどけて見せるが、素人から見ても彼は非力とは正反対、そんな例えを出すことすらおこがましく感じるほどのオーラを漂わせている。彼が実際に剣を握っているのを見たのは宮殿での一瞬だけだが、それの姿を見てしまった後ではどうやっても彼に敵うイメージが沸いてこない。本能が彼と戦うな、と耳鳴りを起こすほど叫んでいるのだ。
「...余裕があるならもっとこっちに護衛を回してくれても良かったんじゃないのか?」
「その事に関しては本当に申し訳ない。できる事なら僕もそちらに飛んでいって君達の手助けをしたかったと心から思う。それは本当だ。...詳しく理由は答えられないがどうか分かって欲しい。」
彼の言葉に嘘はない。隼太は心理学や人間の行動に関してもそれなりに造形は深いが、そういうところで測るよりも先にそれが心からの言葉であると確信できた。だが流石にバラバラに行動することが事前に決まっていたのなら候補者の人数分の護衛は最低限付けるのが普通ではないのか。
「...無事だったのは結果論だ。もうレティシア達をあんな危険な目に遭わせるような事はしたくない。」
「そうだね...君の意見は正しい。救援に駆けつけられなかった自分を不甲斐なく思うよ。でも、君達は無事にここへ辿りついた。」
「だからそれは...!」
「すまない。君の怒りはもっともだ。君の言う事は全て正しいよ。でも僕はそのことについて許可なく話す事を許されていないんだ。理不尽なのも、身勝手なのも分かる。だがいつか必ず分かることなんだ。もし君の怒りが収まらないのなら、僕を気が済むまで殴ってくれ。僕はそれくらいの事しかできないが、それで少しでも君のためになるのなら...」
彼はそう言うと目を閉じ、手を広げ、無抵抗を示して見せた。ついさっき出会っただけの自分に彼はここまでできるのか。だが隼太はここでわざわざ手を出すような馬鹿ではない。
「はぁ...ったく、そんなマネできるわけねぇだろ。分かった。ここはとりあえず納得しとくよ。それにそんな自分ばっかり責めんな。悪いのはお前じゃないだろ。俺も言い過ぎた...悪い。」
「ハヤタ...すまない、ありがとう。君は僕の友人だ。次に君に危険が及んだとき、いつでも僕を呼んでくれ。僕のような凡才がどれだけ君の助けになるか分からないが、誠心誠意励むと誓うよ。」
「ならその時は頼んだよ、友人。」
その掛け合いに互いに少しの笑みが零れる。隼太は自分の浅はかさを反省すると同時に、とりあえずこの場は何事もなく収まって良かったと思う。
目線をずらすと、騎士団員とレティシア、アロイジウスが話しているのが見えた。どうやら野戦病院でレティシアの手を借りたいようだ。無論彼女が断るハズもなく、快諾したように見える。アロイジウスの隣で欠伸をかいている精霊も声を掛けられており、面倒くさそうに対応している。
「なぁ、あの人精霊使いなのか?」
「いいや、違うよ。ここにいる精霊使いはアロイジウス様だけだ。僕ら騎士団の人間にシクリー様が見えるのはこれを使っているからなんだ。」
フローレンスの手には透明な液体が入った小瓶があった。
「これは『霊調液』っていうんだ。僕も詳しくはなんだけど、これを直接目に入れると目の表面に特殊な膜のようなものができてそれが目に入る光や魔力の流れを調節するとかなんとかで...それによって高位精霊様達が見られるようになるんだ。貴重な品だから滅多に市場には出回らないし、知らなくても不思議じゃないよ。」
そう言いながらフローレンスは自分の目を隼太に近づけて見せたりした。よく見ても正直違いは分からなかったが、『精霊が見られるようになる目薬兼コンタクトレンズ』のような品なのだろう。
「それにしても、ハヤタにはシクリー様が見えているような様子だったけれど...高位じゃないにしても君は精霊使いなのかい?」
…まずい。気を抜いていた。隼太が精霊使いであることは自陣の者には周知の事実であるが、隼太の精霊のグロースは88体の高位精霊とはまた別の高位精霊。この事が安易に知れれば混乱を招きかねないと思い隠してきた。が、さすがに剣聖の目を欺くことは出来なかったらしい。
「とにかくごまかさないと...!」
「ん?何か言ったかい?」
「あ、いいや、なんでもない...いや、別に俺も見えてるわけじゃないんだよ。なんて言うか、ずっと一緒にいるもんだから声だけでなんとなくの方向が分かるというか...妙な気配を感じるというか...」
隼太は自分が持てる演技力の全てを使って誤魔化していく。小手先の演技ならばうまくいかないだろうが、隼太の演技力は一流だ。演芸会などでは上手すぎて逆に引かれないかの加減が必要なのだが。
「...なるほど。そういう事なんだね、納得したよ。」
フローレンスは再度顔に微笑みを浮かべたあと、机を囲んでいる彼の上司らしき人からの呼び出しがあり、そちらの方へ行ってしまった。隼太は悟られないように安堵の表情を浮かべると、レティシア達と合流する。
「あ、ハヤタ。フローレンスと仲良さそうに話してたけど、お友達になったの?」
「なんとも可愛い言い方だけど...まぁそんなとこかな。レティシアはこれからどうする?」
「あ、うん。私はお爺さまと野戦病院に行って怪我をした騎士や兵士の人達の治療をするの。」
どうやらレティシアは当初の目的通り、怪我をした者の治療を行うようだ。しかし隼太はその言葉に一抹の違和感を覚えた。
「......ん?俺は?」
「えっと...ハヤタは――」
「ちょっといいかい、ハヤタ。」
レティシアが俯き加減で答えづらそうにしていたところに、先ほど言葉を交わした「友人」が入ってきた。
「私の我が儘を聞いて頂きありがとうございます、レティシア様。」
「...レティシア、これはどういう事なんだ?」
「え、えっと...私は隼太についてきてもらいたいのよ?でもフローレンスがどうしてもって言うから...」
「ちょっと待ってくれ、話が全然掴めないんだが」
「その説明は僕がするよ。」
金髪の青年は爽やかにそう答えると、隼太が全く予想もしていなかった言葉を口にした。
「ハヤタ、ちょっと僕と一緒に、前線に来てくれないかい?」