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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
最終章 現実世界編 《The last mission》
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サタン「ハイスクール・メモリーズ」

「あんまりくっつくな、暑い」

「手を握ることには文句言わないんですか?」

「言っても改善されなかったから諦めたんだよ!」


 マクドナルドで昼食を済まして次なるお店を目指す途中、サタンの猛烈なスキンシップに俺は音を上げそうになっていた。三十度を超える暑さの中、もはや痴女かと思うくらいの距離でぎゅっと手を握られる。ついさっき朝やっていたようなことをやめろと警告したのは忘れてしまったらしい。


「次は珈琲店に行きましょう!」

「サンマルクでいいか? スタバとドトールは一駅先にあるんだが」

「あー、珈琲店巡りもいいですね」

「お前は半径数キロメートルの間にいくら散財する気なんだ?」

「まあ、学生身分の方が困らない程度にします」

「そうしてもらえると助かる」


 サタンは諭吉が数枚飛んでいることを見抜いているようで、俺の財布を気遣ってくれる。ここ数日の企画の言い出しっぺであるがゆえに気を配っているのだろう。からかい言葉の隣に見える心優しい台詞を聞いていると、流石はホテル従業員、人の喜ばせ方をわかっているなあとつくづく思う。



 下らない話を交えながら炎天下のアスファルトの上を進み、俺とサタンは午後一時半すぎにようやくサンマルクカフェに到着した。彼女は店舗の対角線上に構えるスーパーに入っているファミレス店の広告に目に留まったようで、珈琲店に入店する直前に「夕飯はファミレスにしましょう」などと主張してくる。俺はそれを脳裏に刻みつつも「はいはい」と営業風にあしらった。


 店内は比較的賑わっていた。多くの学校が夏休みに入っていることもあってか、数名の学生が紙上にペンを走らせて勉強している。影を潜めている様子から珈琲一杯に座席代と時間代を払ってやっているんだからなどと高圧的な態度を取っているわけではないと推測されるが、それなりに席が埋まっている様子に少しは気を配れないものかと思う。もっとも、ついさっきまでマックでガヤガヤして一時間も席を専有していた俺が言うべきではないのだろうが。


 ホットコーヒーと、そして昼食を済ましてすぐだというのに焼きたてのクロワッサンを注文して、外をすぐ目の前に見ることのできるカウンター席をとる。冷えた店内で温かな珈琲を口に運ぶのもいい。サタンも温かな飲み物を飲んでいたが、こちらはカプチーノをだった。彼女は飲みやすいドリンクの方が性に合うというが、マックでシェイクを飲んでいたときよりも少量ずつ口に運んでいるように見える。


「はい、おやつ」

「……食べさせてください」

「はあ?」

「ダメですか、先輩?」


 こいつ、三桁の年齢の癖に萌えポイントをしっかりと把握していやがる。上目遣いと申し訳無さそうな言い方は後輩萌えに必須の条件だ。少し照れた様子が垣間見えるが、これは演技だろうか。仮にそうだとしたらサタンは超が付く演技派である。


「……今回だけだぞ」


 そもそもクロワッサンは俺が奢る予定だったので食べてもらうことは前提にあったのだが、まさかこうなるとは思わなかった。なんだか調子が狂うなあと嘆息を漏らしそうになるが、それではサタンが可哀想だと思って、少しの間を置いてから肯定的な回答をする。クロワッサンを大雑把に等分すると、左半分を持って言った。


「口開けろ」

「なんで命令口調なんですか!」


 と言いながらもサタンは口を開く。わりと小さい口なんだなと思ってさらに半分にしてから、俺は最初の四分の一の量になったクロワッサンをサタンの口に突っ込んだ。頼むからいかがわしい雰囲気を醸し出すなと思って紫髪の方を見ていると、流石に公衆の面前で意味深な行動を取るのはクレイジーだと思ったのか、はたまた俺の願いが伝わったのか、サタンはすぐに口を閉じて変な顔を見せずにもぐもぐと口を動かした。


「美味しいですね」

「昼飯食べてからちょっとしか経ってないけど、入るか?」

「デザートは別腹ですって」

「出たよ常套句。ゆうてデザートじゃないだろ」

「デザートと思えば、デザートなんです!」


 サタンはそう言って残していた分をパクっと頬張った。本当に幸せそうな顔を見せるので、サタンが暴食を司っているのではないかと思ってしまう。食べている幸せそうな顔を見ているとこちらまで幸せになってくるが、あまり凝視しても迷惑がられると思って、俺は珈琲を少し呑んでから話題を切り替えた。


「そういや、サタンって学生時代何してたんだ?」

「普通の学生ですよ。強いて言えば読書家でした」

「へえ。罪源にも学校って概念あるのな」

「むしろ、罪源だからこそあるんですよ。『罪源』は貴族階級みたいな感じで魔族でも上位の存在でしたし。通っていた学校には時の皇女殿下もおられました」


 サタンの血筋を辿っていくと現在の魔族を治める皇帝家に繋がるそうだが、ラクトよりは薄いらしい。レヴィアはサタン以上ラクト未満の濃さだそうだ。だが、レヴィアについてはあくまでも推定らしい。理由は血筋が書かれた巻物などを目にしたことが無いから。――と、ここで新たな疑問が沸く。


「ちょっと待て。ラクトもサタンも家系図持ってんのか?」

「持ってますよ。ラクトさんのは頼んだら見せてくれました。どっちもレプリカじゃないのでガチです。流石に携帯してはいませんが」

「なんで悪魔組ってそんな高貴な身分だった奴ばっかなの……」

「でも、今は身分なんて関係ないじゃないですか」

「そうなんだが――」


 普通の平民のような俺を、かつて高貴な身分にあったラクトはじめ彼女の一家は優しく出迎えてくれた。だが、だからこそ、どこかで釣り合わないのではないかという不安が残っていた。でも、そんな自分をシンデレラか何かだと勘違いしたような考えは誰にも言えなかった。身分の話を聞いているうちに忘れてしまいたいと思って封じ込めていた心配が蘇ってくる。


「もしかして、『釣り合わない』って思ってます?」


 俺の心にどんどんと募っていく思いをサタンは見抜いていた。口を閉ざす俺に、サタンは優しそうな笑みをこぼす。


「大丈夫です。先輩は釣り合わないなんてことないですから」


 サタンはその言葉をきっかけにして次々と俺に対する褒め言葉を撃ってきた。その大半が思い出を回想するような形を取っていたので、弱っていた俺は冷静さを保つことなんて出来ずに恥ずかしくなって思わず下を向いてしまう。応援されることは嬉しくても、自分のしてきたことを半ば強制的に振り返らされるのはつらかった。


「マッチポンプみたいなことしてごめんなさい。でも、先輩が思い悩んでそうだって彼女さんから聞いてしまったので」


 俺が嬉しいような止めてほしいような複雑な心境でいるところに、突然サタンの謝罪が飛び込んできた。俺は思わず「え?」と聞き返す。


「そんなことないと思いますって何度も返信したんですけど、向こうから聞くように説得されたんです。思い悩んでるところも一緒だなんて、ホントにとんだバカップルですね。爆ぜろ」

「最後の最後で罵倒すんな」

「嫌だなあ。最高の褒め言葉じゃないですか。『呪ってやる』的な」

「祝えよ!」


 書く時に漢字を間違うならまだしも、話す時に間違うのはあからさまな煽り言葉だと思って俺はツッコミを入れた。そんな俺の変化を見てサタンが顔を綻ばせる。


「ちょっとずつ表情が緩んできましたね」

「そうか?」

「たまに見せる笑顔も素敵ですよ」


 サタンがそう言うので俺は変顔をしてみる。


「ぷっ、あはははっ! それは竹!」


 普段の澄ました顔しか想像できないようでサタンは腹を抱えて笑ってくれた。草を通り越して竹が生えるほど面白く感じてもらったところで、あまり笑いすぎても他の客の迷惑になるため笑うのをやめさせようとする。でも相当インパクトが強かったようで、俺の顔を見ただけでサタンは思い出して笑ってしまった。


 私語はそれからも続いたが、紫髪罪源の笑い袋が収まるとお騒がせの大きな波はそれ以来無かった。お互いの身の上話や将来の夢、またインターネット上を騒がせたニュースなどを話し、およそ二時間の滞在を終える。近くにはまだ多くの珈琲店があったが、退店したのが午後三時台というザ・おやつタイムであったため、サタンの強い要望により次なる目的地はミスタードーナツとなった。



 駅前に佇む比較的小さめの店舗に入り、おぼんとトングを取って出来たてのドーナツが並ぶコーナーを進んでいく。俺の先を行くサタンは、色気より食い気を体現するかのごとく美味しそうなおやつ達に目を輝かせていた。


「先輩、おすすめって何かありますか?」

「ポン・デ・リングとフレンチクルーラーは外せないな」

「なるほど」

「個人的にはオールドファッションとゴールデンチョコレートを推したいところだが」

「ふむふむ」


 サタンは俺がおすすめした商品を迷うこと無く取っていった。気がつけば、ファミレスで夕飯を食べたいと主張していたとは思えない量がおぼんの上に乗っかっている。流石に「太るぞ」なんてドストレートな発言はできないので、俺は遠回しに忠告する。


「そんなにいっぱい食べれるのか?」

「二人分ですよ?」

「いや、割り勘でいいって」

「それは呑めません。さっき奢ってもらっちゃいましたし。あ、私が代表して買うってことにします? 先輩、まだおぼんすら取ってないですし」

「お前が馬鹿みたいにバンバン取っていくから萎縮しただけだぞ」

「……始めに言っておくべきでしたね」


 先を行く実質暴食担当罪源が馬鹿みたいに盛り付けている魂胆がわかったので、俺はおぼんを持たないで彼女の横についた。その刹那、サタンが既に六個もドーナツが載っているおぼんにさらに追加しようとしたので、流石に夕食が入らないだろうと静止して会計に半ば強制的に向かわせる。


 別に飲み比べる意図は無かったが、サンマルクに続いてミスドでも俺はブレンドコーヒーを注文した。サタンはドーナツのお供にロイヤルティをチョイスする。おかわり自由という言葉に誘導されたらしい。


「フレンチクルーラーって髪型にありそうですよね」

「ありそうも何も実際にあるし」

「どうですか? 似合いますか?」


 サタンはそう言ってフレンチクルーラーとエンゼルフレンチを取ると、自分の耳のちょい後ろの上あたりにそれを近づけた。茶髪、水色または金髪なら類似キャラ的な意味でしっくりくるが、紫髪となるとちょっと違和感が出る。いや、茶髪や水色でもドーナツの色的に違和感ありまくりだけれども。


「食べ物で遊ぶんじゃない」

「父親みたいなこと言いますね。あ、もうすぐなるんでしたっけ」

「このスクープ記者はデタラメしか言えねえのか」

「捏造は記者の本分ですゆえ」

「こいつぁひでえや……」


 そんなやり取りをしてからドーナツを食べ始める。サタンはお遊びに使ったフレンチ系二種は自分が責任を持って食べると主張し、おぼんの自分側の方へ寄せた。それならと思って、俺はポン・デ・リングをありがたく頂く。隙を突かれてサタンはハッと驚いていたが、時既に遅し。OはCに変わっていた。



 入店してからざっと二時間したところで、ちょっとずつ席が埋まり始めたので退店することにする。おかわり自由という言葉に釣られたサタンは最終的に十五回もおかわりしていた。一方の俺は三回。珈琲を飲みすぎて離席する回数をむやみに多くしたくないという気持ちの現れであった。


「どうする、まだ梯子するか?」

「うーん、これ以上飲むとお腹壊しそうな気がするのでやめておきます」


 店を出て数歩したところでサタンがギブアップ宣言を出した。もうちょっとあっちこっち行ってからこの結論に達すると思っていたので意外であったが、時間帯を考えれば妥当な答えである。時刻はまもなく午後六時、ドリンクバーで粘る目的なしにファミレスに入っても問題はない。


「じゃあ、そろっと夕飯とするか?」

「そうですね」

「だが、その前に」

「その前に?」

「学生らしく夕方の河川敷に行こう」

「……陳腐なイメージ像ですね」

「ファストフード店巡れば学生らしいってのも大概だぞ」


 歩きながら言い合った末に導かれたのは、俺もサタンも陳腐なイメージのお遊びしか想像できないという結論だった。でも、一日中座って駄弁りっぱなしで体を動かしていなかったこともあって、陳腐な発想ながらも河川敷沿いを歩くという提案はすんなりと受け入れられた。


 飲食店街を抜け、マンションの立ち並ぶ住宅街を抜け、ぶつかった堤防に設けられた階段を登る。右手の方には橙色に染まった太陽が見えた。左手ではその斜陽を浴びて電車が走っている。俺がそれを見ている裏でサタンは河川敷を降りていった。でも、じきにしゃがみ込む。


「絵になりますね」


 サタンは空を仰いで言った。釣られて俺も上を見る。まるで今にも空から隕石が降ってきそうなくらい綺麗な空だった。辺り一面に広がるキャンバスには橙色と空色と桃色が混ざっている。東の空には白い月が見えて薄明るく染まっていた。


「ああ、そうだな……」


 サタンの隣に立って吹いてくる風を浴びるのに合わせて、俺は夕暮れの河川敷に郷愁を感じる。もっと大きい川なら広い空が見れてさらに心が洗われるのかもしれないし、もっと小さい川なら癒やしを感じるかもしれない。でも、この住み慣れた街の生活感がほどよく溢れる川も味がある。


「先輩、食べ終わったらここに来ませんか?」

「ああ」


 含みを持たせた発言の裏に隠れているであろう言葉は何となく想像できた。でも、まだそれを考えるのには尚早だと思う。臭いものには蓋というわけではないが、俺は首を上下に振ると、すぐにサタンを連れて一番近いファミレス――サイゼリヤを目指した。


 梯子酒ならぬ梯子ファストフードを終えて落ち着いた中で入店したこともあり、夕食では昼間やっていたような馬鹿騒ぎをすることは無かった。だが声量的な意味での静かさとは裏腹に、あれだけ日が出ている間にファストフード店を回ってドリンクを飲んだ上、「流石に体が心配」とか言っておきながら、俺もサタンもドリンクコーナーに行きまくっていたので、クソ学生客と思われたかもしれない。


 しかし、俺らのようなドリンクバーに命かけてる系の客は他にも居たので、声に出して注意を受けることはなかった。冷静になって考えてみると、ドリア、パスタ、そしてティラミスしか頼んでいないのに一時間近くに渡って、それもディナータイムの時間帯で席を譲らなかったのはド畜生の所業な気がする。


 食事を終えた後、俺とサタンは先程の河川敷へ出た。十九時半を過ぎてすっかり日は沈み、あたりを照らす街灯だけが隣にいる者のことを知らせる。ちょうど向こうの昼間のような温かさで、半袖シャツの夏服で居ると肌寒さも感じられた。でも、スマホで見る分には二六度と本来ならば不快指数は低めな気温である。


「今夜は満月ですね」

「そうだな」


 東の空に浮かぶ月はあと数時間で天満月あまみつつきとなる。


「レヴィアから罪源の契約解除方法は聞いてますよね?」

「あれって正式なやり方なのか」

「そうですね。個人的には精霊との契約解除よりも負担軽いと思いますけど」

「昨日までは俺もそう思ってたんだがな」

「まあ、レヴィアには私にはない立派なモノがありますからね……」


 サタンは視線を下に落として大きな溜息を吐いた。俺としては、体がほぼ触れ合うことで心臓の拍動などが伝わってきてこっちまで恥ずかしくなってくるところが負担が重いと思うポイントだったのだが、どうやら考えに相違があるようだ。


「サタンの魅力はそれだけじゃないと思うけどな」


 俺はそんなに重要視していないというのと慰めの二つの意味を重ねてその言葉に託した。サタンが落ち込みから回復して欲しいという思いで言ったのだが、紫髪はその言葉を聞くと、逆にプルプルと全身に震えを走らせる。そして、言い放った。


「先輩の漁色家! すけこまし!」

「ちょ……」


 立ち止まって話していたのが災いし、俺はサタンに胸のあたりを掴まれる。


「なんで気づいてくれないんですか! 私だって! 会ったときから、ひぐっ、先輩がっ、……好きだったんですよ! ……なのに、いつも……ひぐっ……いつも、いつも! 私は便利屋なんかじゃないんですっ! 私は、誰かの代わりなんかじゃないんです!」


 サタンの頬には涙が伝っていた。


「ラクトさんが呼び捨てで呼んでて、紫姫さんが古風に呼んでて、マスターとかご主人様とか下の名前にさん付けとか、そんなの絶対出来ないなって思って、それで……それで……それで、やっと、私だけの特別な呼び方が出来たって思ったのに! なのに、なんで、ひぐっ……こんなに声に出しても振り向いてくれないんですか?」


 ――ここで嘘を言ってもダメだ。はっきり言わなければサタンが傷つく。


「すまない。親愛の情だとばかり思ってたんだ」

「本当に、気づいてなかったんですね……」

「ああ」

「……良かったです。あえて無視してたわけじゃないんですね」


 サタンは涙を流しながら笑みを浮かべていた。矛盾した表情が出てきているのを見れば彼女は無理をしていることくらいすぐに分かる。そんな少女を見ていると俺の心には申し訳無さが募ってきた。そして俺は、慰めるようで結局は相手を傷つけることに繋がる行動に出てしまう。


「この期に及んで契約解除しないでくださいよ……」

「これはそういう意味じゃない!」

「……バカですね。わかってますよ、それくらい」


 サタンは優しく俺の背中に手を回してきた。彼女の思いがシャツを湿らせる。


「――もう少しだけ叫ばせてください」

「……近所迷惑にならない程度に頼む」


 嬉しさと悲しさが入り混じった言葉がサタンの心臓の拍動とともに俺の胸に響く。最初のうちはどれだけ俺が背中を擦っても叫び声が止むことはなかった。でも、思っていることをどんどんと声に出していくことでサタンの心の中に残っていたモヤモヤが解消され、少しずつ「悲しさ」が「要求」に変わっていく。


「先輩。もう一つだけお願いです。――目、瞑ってくれますか?」

「別にいいけど――」

















 ちゅ。

















「私の我儘に付き合ってくれたお礼です。大事にしてくれなきゃ嫌ですからね?」


 サタンの頬は街灯が無くても分かるほど赤くなっていた。彼女は照れた表情を見せながら顔を綻ばせていたことを隠すように異世界へ向けてテレポートを急ぐ。


 輝夜姫のようなお騒がせな少女は俺の動揺が収まった時にはもう居なかった。でも、着ていた夏服には確かに人肌の温かさが残っていた。

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