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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
一章 エルフィリア編Ⅰ 《Knowing another world and the country》
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1-29 ボン・クローネ観光-Ⅵ

 稔とラクトは、素早く去った司書長に対して言葉をかけようと思った。だが、その言葉を掛けることすら不可能だった。別に司書長がテレポートを使用したわけではないが、稔もラクトも、「司書長が機嫌を損ねたのだろう」と考え、喉の奥で言葉を押し殺した。


「しっかし、相当な蔵書数だな……」

「図書館はこういう場所だと思うけどなぁ。日本だと、図書館ってこんなに本無かったの?」

「まあ、本は結構有ったぞ。地方の図書館でも、充実しているところはあった」


 しかし、地方の図書館にエスカレーターはほとんど無い。有ったとしてもエレベーターである。エスカレーターが図書館にあるとは非常に珍しい。


 床は木で作られていて、外壁と非常によくマッチしていた。そのためなのか、エスカレーターも木製で作られている。もちろん動力は電気だが、機械は木で作られていた。 


「エスカレーター、乗ってみる?」

「木製エスカレーターとは珍しいしな。後で乗ろう」

「三階のカフェコーナーに行くために乗るの?」

「どうせ立ち読みで済ますんだし、借りる訳じゃないのだからそうだろうよ」


 そう言って、俺はラクトを鼻で笑う。


「そっか。取り敢えず。私も知らない知識が有るかもしれないから、本を読んでいこう!」

「だな」


 ラ行。『ル』の本が並ぶ棚に、稔とラクトはカオス・アマテラスに案内されてきた。当然のごとく、彼女は司書である故、九九パーセント嘘の場所を示すことはない。


「この本は?」

「『幼児でもでもわかる、失われた七人の騎士ルーズ・セブン・ナイトの本』? ……お前、俺を馬鹿にしてるのか」

「ごめんごめん。――本命はこっち」

「『L.S.K.写真集』? でも、これは役に立ちそうだな」


 『L.S.K.』というのは、『ルーズセブンナイト』を英語表記にした際の『Lose_Seven_Knight』を、大文字三文字……言葉を変えれば、各単語の最初の文字を略したものである。


 写真集は、最初に目次が書かれていた。写真集とはいえ様々な人が出てくるわけであるし、目次が書かれているのは助かるものである。


九路根クロネ新聞社……?」

「稔はそんなのもわからないのか」

「な、なんだよ……」


 鼻で笑われた仕返しと言わんばかりに、ラクトは稔を弄る。


「それで、この王国の王女と近い関係にあるのか?」

「やめろ、ここは公衆の面前だぞ」

「サキュバス様に、そんなのは関係ありませーん」

「正確には、『サキュバスの娘が転生した女の子』だろ」


 弄るラクト、それをツッコむ稔。そんな二人だったが、本を持っているのはラクトだったので、本のページを捲る権利のようなものは、ラクトが持っていたりする。でもそれは、暗黙の了解のようなものだ。


「さっき、司書さんが言ったじゃんか。『神風織桜』って女性の名前を」

「なんだよ。そんなに知名度高いのか?」

「そりゃそうさ。なにせ神風さんは、エルフィリア王国の世界遺産維持・管理委員会の会長だぞ」

「えっ……」


 写真集を持ちながら、ラクトは話を続ける。


「ボン・クローネ市長である上に、ボン・クローネの多くの施設の副施設長をしている、偉い女性だぞ」

「権力者か……」

「バーカ。稔が神風さんと敵対してどうするんだよ? 敵対したら、この国は大変なことになるぞ?」

「それもそうだよなぁ。……って、もしかしてその人がリートが言っていた女性なのか?」

「まあ、リートが正確な名前を出していない以上、私が断定することは許されないのだが、恐らくそうだろう」


 そんなことを言いつつ、ラクトは写真集のページを速くめくる。稔は、写真集が『神風織桜』という女性とどんな関わりがあるのかは全然知らず、何故写真集をラクトが速くめくるのか、少し疑問に思った。


「この女性が、彼女だ」

「この女、日本人じゃないだろ……」


 ラクトの示したページには、金髪の女性の写真が掲載されていた。金髪碧眼のその女性は、黒色の鎧を着ており、胸を除いては女性的なラインをしっかりと映し出している。


「この人がお前やカオス・アマテラスが言うような、『神風織桜』なのか?」

「書いてあるだろ」

「あ――」


 とはいえ、大きな文字ではなかった。目立つといえば目立つが、右側のページに書かれていることもあるので、稔も『そりゃ、左ページだけ見たらわからないわな……』と言いたくなった。

 それよりも、稔は驚いたことが有った。


「お前、いつの間に着替えたんだ?」


 鎧という言葉でふと気が付き。稔が見てみれば、ラクトはいつの間にか着替えていた。


「戦闘モードを終わらせると同時にテレポートしてくれたから、気づかなかったんだね」

「戦闘モードって、その場所を離れたら効果が切れるのか?」

「おうよ」


 ラクトはそう答える。


「まあ、取り敢えず説明を読んでいくことにしようじゃないか」

「長ったらしい文――じゃないだと?」

「写真集だからな。お前、写真集読んだことないだろ……?」

「――」

「しかも、理由が男の本能で引くわ」

「悪いか……」


 稔は、別にエロティックなことに興味が無いわけではない。男性的な事は大体出来るような高校生だ。一方で、彼は自分専用のパソコンを所持しており、そのフォルダに様々なゲームソフトとダウンロードしたエロ画像、きわどい画像などが入っているのである。


 つまり、彼はエロ雑誌を買う必要性がないのだ。そしてそれは、写真集を見たことがないという理由にもなる。


「取り敢えず、説明」

「うん」


 稔の裏の一面を見たラクトだったが、彼女は引かなかった。主人であるということではなく、実行に移さなければ問題ないという判断である。

 ラクトからすれば、パソコンのディスプレイにエロ画像を映し、夜な夜な行為をしているような哀れな男という位置づけだった。画像しか見ていない人間が、実物を見たところで――という話だった。


 ただ、そんな事はもう水に流し。稔に対して「可哀想だ」という感情を抱くだけだったラクトは、失われた七人の騎士の一人、金髪碧眼貧乳の日本人離れした美女に関しての説明を行った。


第七の騎士(サバーナイト)、『ペリドット』」

「あれ……?」


 稔は、『神風』の『か』の字すら出ない事に疑問を感じた。だがそれには、心を読んだラクトがすぐに回答する。


「『ペリドット』っていうのは、通称名みたいなものだ。石の名前、それが通称名」

「石の名前……」

「稔の場合だと、『アメシスト』または『アメジスト』。稔の好きな方で言えばいいさ」

「俺は『アメジスト』の方がいい響きだと思うけどな」

「んじゃ、それでいいだろ」


 ラクトは会話を交えながら、箇条書きで書かれている右のページの説明を読んでいく。


「『ペリドット』は、『エルフィリア帝国・陸海空軍、全ての隊の司令官の者の意思が宿る石』だそうだ。暗くても石が見えるから、『夜明けはかならず来る』という事で持っていたらしい」

「そんな意味が隠れていたのか」


 土佐の偉人、坂本龍馬の残した『夜明けは近いぜよ』に限りなく近い言葉である。とはいえ、何に関して言っているのかは違う。坂本龍馬の残した言葉は違うとしても、隠された意味というのは何時の時代、何処の国でもあるものだ。


「ともかく。『ペリドット』みたいに、失われた七人の騎士には石が関わっているんだ」

「石……」


 石と聞くと、どうしても野道に転がっているような小石を想像してしまいがちだが、ラクトが言っている石はそんなものではない。宝石、鉱石、水晶……と、そういったものである。


「んじゃまあ、紹介を続けることとしようか」

「おう」


 神風という金髪碧眼の女性の事は一旦置いておいて、ラクトは紹介を続ける。


第一の騎士(ワヘッド)は『アズライト』。シアン属性で――ほら、この人」

「水色の髪の男か。でも名前とか、何処で暮らしているのか書いていないんだな」


 水色の髪の男は藍色と緑色の線が入った、下地が黒色の鎧を着ていた。剣の色にもそれは繋がっており、持っている剣の刀身部分は表が藍色、裏が緑色だった。つかは茶色だ。そして、男は顔を隠すため、黒色のサングラスを着用していた。

 攻撃する時に剣の刀身から出る光は、藍色と緑色が左右でしっかりと分かれた色だった。


「そりゃそうさ。狙われるからね」

「――どういうことだ?」

「いやいや、簡単だろ。ただ単に、権力が有るか無いかの話だ」

「えーっと……?」


 つまり織桜は、自分自身以外にも――正確に言うと「自分自身と自分の召使以外にも」、護衛をする者が居る状況を掴みとったため、何処に居るかを書くことが出来るのだ。市長という座に就いた上、多くの役職が回ってきた織桜は逃げる必要性がないのである。


 一方でそれ以外の六名は、何処に住んでいるかなど書くことは無理だ。護衛してもらえるのは召使のみで、他の者からは護衛などしてもらえない。その石を狙うものは必ず現れるのだから、書いたら大変だ。


「――ってことだ」

「今のはお前が言っていたのか」

「おう。……それじゃ、続けるぞ」


 ラクトがまたページをめくる。


第二の騎士(イトネーン)は『モルダバイト』。ビリジアン属性で、この人だ」

「ビリジアンなのに、何故銀髪なんだ?」


 銀色の髪の男もまた、黒色のサングラスを掛けていた。下地が黒色の鎧を着ていたが、第一の騎士同様に線が入っていた。第一のその線の色は異なり、銀色と緑色の線だった。

 剣の色は柄が緑色で、刀身の色は銀色だった。


「それは、『モルダバイト』が天然ガラスだからだと思う」

「ガラスだから、銀色ってことか?」

「そういうことだと思うけどね」

「でも、攻撃している時に発する光は緑色だな。それも、黄緑っていうか――」

「そうだね。これは、属性を表しているんだ」


 ラクトはそう言うと、次に進んだ。


第三の騎士(タラータ)は『アメシスト』。ブラック属性で、この人だ」

「こいつ、爆弾魔の男じゃねーか! つまりこれは――」


 今日、ついさっき。稔は、アメシストの石がついているネックレスを爆弾魔の男から譲渡されたのだ。発行されたのは今日ではない。そのため、稔の写真が掲載されているはずがないのだ。


「そういえば」

「なんだ?」

「稔は第三の騎士なんだから、呪文を唱えればだけど、爆弾魔の男が着ているこの衣装に変身することが出来るよ。流石に、ここで変身しろとは言わないけどさ」

「そうなのか」


 稔のネックレスについている紫色の水晶、『アメシスト』。呪文を唱えれば、変身することが出来る。そして変身を実行すれば、魔法の効力も強くなる。


 黒色の下地の鎧は変わらず、線の色は紫色。柄を持っていれば、剣の刀身の色は漆黒の光が包んでいるために黒く見えるのだが、剣の刀身の色の本当の色は紫色であった。


「ちなみに、失われた七人の騎士が持っている石は、魔法の効力が適応しているかしていないかで変わるんだけど、二倍から二〇倍までに魔法の効力を強めてくれる、有り難い存在なんだ」

「それって、効力は固定か?」

「そうだ。適応能力によって『一〇倍』とみなされれば、以後一〇倍より上昇することはない」


 その言葉に、稔は口ごもった。


「悩むな悩むな。なんなら、図書館出たら変身すればいいさ」

「それもそうだな」

「聞いた話によればだけど。召使と属性が同一で、カムオン系の召使が一体でも居れば、適応能力は高いらしい」

「ということは?」

「稔の魔力が二〇倍になる可能性は否定出来ない」


 ラクトの言葉に、稔は大喜びする。とはいえ、ここは図書館。稔も場所をわきまえ、大喜びしていてもそれを声には出さない。手をぎゅっと握り、目を瞑って喜んでいた。


 そんな稔の一面を見たラクトは微笑んでから、ページをまためくった。


第四の騎士(アルバー)は『ソーダライト』だ。シアン属性でこの人」

「第二の騎士と同じで、こいつも剣は銀色なんだな」

「そうだね。まあ、ソーダライトがナトリウムを主としているからだと思うよ」

「剣が発する光は濃青色か」

「だね」


 第四の騎士もまた、黒色の下地の鎧を着ているわけだが、線の色が異なる。濃青色の線が、左右一三本引いてあった。濃青色ではなくても、一三本線が引いてあるということでアメリカ合衆国の国旗と共通する。


 剣の刀身は攻撃時が濃青色、通常時が銀色だ。当然、サングラスを掛けている。体格的には女性だ。


第五の騎士(ハムサ)は『クリーダイト』。カーマイン属性でこの人」


 第五の騎士の鎧は、黒色ではなかった。白色の下地の鎧を着ていて、そこにオレンジ色の線が左右計六本走る。


 剣の刀身は、攻撃していない時は銀色。同じ時、柄の部分はオレンジ色で、赤色の蛇のようなものが巻き付いているデザインになっている。


 当然のごとくサングラスを掛けていたのだが、白色にオレンジ色と明るい色だからなのか、第五の騎士が男性であることを示す体格が凄く分かる。


「発する光は……オレンジか。眩しいな」

「そういうものだろ。赤色は情熱を表すもんだし」

「それもそうだな」


 そんな会話の後、ラクトはページを更にめくる。


第六の騎士(シッタセイバー)は『アポフィライト』。カナリヤ属性でこの人。本来は、『第六の騎士』は『シッタ』って呼ぶんだけど、これに関しては、今の第六の騎士が呼び名を変えたんだ」

「へえ、呼び名って変えられるのか」

「だから、稔も好きな様に変えていいぞ」


 第五の騎士同様、第六の騎士の鎧は白色が母体だった。白色の母体の色に、淡黄色の線が七本走っている。


 剣の刀身は攻撃していない時は白色で、柄の部分は淡黄色だった。特に凝ったデザインはない。そして当然のごとく、攻撃する際に発する光の色は淡黄色だ。


 サングラスの色が黒色なのが似合わないほどの明るさだったが、体格を見る限り、第六の騎士は男性だ。


「『タラータ』か。どう変えればいいんだろう?」

「そりゃ、私には分からないよ」


 日本人のネーミングセンスというのは、戦前戦中の頃の軍艦などは非常にいいのだが、戦後はあまり良くない方向に向かってきているのは確かである。故に、稔は少し躊躇う。


「ラクト。『タラータカルテット』はどうだ?」

「勝手にしろよ」

「お前なぁ……」


 とはいえ、時間もなく。稔は、『第三の騎士(タラータ)』という自分の呼び名を、『タラータカルテット』という呼び名に変更した。


 稔が採用した『カルテット』という言葉の裏には、ラクト、ヘル、スルト、そして自分……。自分と召使、魔法を使える者の数を数えて『四人』だったためにそうしたのである。


「それで、最後が『サバーナイト』。これはさっき説明したからいいよね」

「おう」

「それじゃ最後に。第一の騎士から第六の騎士まで、誰の意思が石に宿っているかを説明しよう」


 ラクトはそう言いつつも。正確な情報で伝えるべく、稔の為にとページをめくった。そして、書かれている内容を読んでいく。


第一の騎士(ワヘッド)は、『エルフィリア帝国海軍・東方艦隊司令官』の意思が石に宿っている」

「うん」


第二の騎士(イトネーン)は、『エルフィリア帝国陸軍・北方戦線司令官』の意思が石に宿っている」

「うん」


第三の騎士(タラータカルテット)は、『エルフィリア帝国空軍・防衛飛行隊司令官』の意思が石に宿っている」

「おう」


第四の騎士(アルバー)は、『エルフィリア帝国海軍・西方艦隊司令官』の意思が石に宿っている」

「おう」


第五の騎士(ハムサ)は、『エルフィリア帝国陸軍・南方戦線司令官』の意思が石に宿っている」

「んでんで」


第六の騎士(シッタセイバー)は、『エルフィリア帝国空軍・攻撃飛行隊司令官』の意思が石に宿っている」

「んでんで」


 石に宿っている意思を説明し終えたラクトは、稔に苛立ちをぶつけた。


「……って、一々相槌が耳障り!」

「悪い。『お前が真剣な顔をしていると、凄い無防備なんだな』って思って、つい」

「なっ――!」


 稔は言って、ラクトの頭を撫でた。稔は、「自分が思う相手の喜ぶことをした」だけだ。


「なんだよ、いきなり撫でて……。ともかく、これで失われた七人の騎士に関しては分かっただろうから、三階へ行くぞ」

「脳を休めるために?」

「それもある。けど、私はアイスコーヒーが飲みたい」

「ホント、ラクトはアイスが大好きだな……」


 ラクトは稔からそう言われると、写真集を置いて稔に抱きつく。


「胸が当たってるぞ」

「デートだっつの、デート」

「……ったく」


 笑顔を見せるラクトを右に、稔は三階までエスカレーターで向かった。

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