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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
特別章 精霊の恋愛事情 《She shouldn't have loved him.》
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EX-9 ウォータージェットコースター

 紫姫が乗りたいと言ったウォーターライドは、遊園地でも定番の遊具だ。だからこそ各施設で名前が異なっている。ちなみにカオス・アイランド・パークでは、その見た目から『ウォータージェットコースター』と呼ばれていた。そして、そのアトラクションが在る場所は――中洲の突端だ。


「結構歩くな……」

「そうだな。でも、こうやって汗をかいておいた方が冷たくて気持ちいいだろ」

「確かにな。つか、紫姫は濡れることに抵抗無いのか?」

「無い。全身ずぶ濡れでなければ、あの気持ち悪ささえ無ければ、私は構わぬ」


 サバイバル訓練とか水難事故防止という名目のもと、着衣のままプールの中で泳がされることがある。水泳という体力を大量消費するスポーツで、体力を減らした上で更に削らされる例の魔の訓練だ。その内容は、水着を着たりゴーグルを着けたりしていいこともあり、その場合、本当の効果が得られるかは疑問がちらほらと残る。そして、その時に同時発生するのが『気持ち悪い服の感触』だ。


「あの気持ち悪さは嫌だよな……。水吸って凄い重いし、へばりつくし」


 訓練だと分かっていても、嫌なことを極力したくないのが脳の発達した生物の特徴だ。でも、やりたくないからやらないなんていう理論が通じるのは、せいぜい小学生修了まで。そこから先は実力社会でしかなく、嫌なことでも率先してやる必要がある。嫌いであろうが、その言葉に耳を傾けてくれるのは極少数だ。


「ここか」


 そんな中、稔と紫姫は次なるアトラクションのゲートの前へと到着した。目の前には筒抜けの建物が見える。パリの凱旋門やベルリンのブランデンブルク門に近い建物だ。建物は縦に長方形で、屋根の下には駅で見る改札機らしきものが設置されている。だが、それは待機コーナーだそうだ。


「稔に問いたいのだが、このアトラクションは二人乗りなのか?」

「確かに、待機列は二人組だな」


 屋根の下に設置された改札機のような待機コーナーで待っていた人々は、必ず二人組に分けられていた。と言っても、それほど混雑しているわけではない。三組待機しているだけで、他に待機組は居なかった。


「すぐ乗れそうだし、行こう」

「うむ」


 稔と紫姫はカップルではない。しかし、事情を知らない人が手を繋いで居る二人を見たら確実に勘違いする。これまでと同様に、『ウォータージェットコースター』のスタッフも同じく勘違いした。キャストは男性で、ベレー帽を着用している。また、その服装は海軍にしか見えない。だが、稔の内心には高揚があった。流石は、某これくしょんゲームで提督をしていた身である。


「カップル二名様ですね?」

「交際関係では無いです」

「ご結婚なされているのですか?」

「違います。友人同士です」

「あれほど仲が良いのに、二人は本当に友人同士でいいんですか?」


 だが、深く入ってくるキャストに、稔は返答を拒みたくなってきた。でもスタッフは、そういう客の心を理解してくれる。これ以上入り込むべきではないというのを見極め、ゲストいじりを止めたのだ。かわりに始めたのは、稔と紫姫を待機場所へ引導すること。咳払いして、彼は言った。


「では、四番で待機をお願いします」


 向かった場所は駅で見る改札機が設置されたコーナー。二人が案内されて定位置に着いた頃、右端に待機していたゲスト二名が船のような乗り物に乗船した。もちろん、船だとしても船長をしてくれるキャストなど居ない。これは、アトラクションは休憩がてらに乗れるものではないと遠回しに訴えているからだ。


「すみません。こちらの同意書にサインをお願いします」


 一番コーナーで待機していた二人を乗せた船のような乗り物が出発した直後、ベレー帽を着けた先程とは違うキャストが現れた。手に持っていたのは同意書。それが本当に必要なのは『バトルツリー』だという正論はさておき、稔は紫姫に対して問う。けれど、紫髪の考える時間などコンマ数秒しか必要無かった。


「紫姫は乗船することに乗り気か?」

「無論だ。我は、初めての遊園地を楽しめるだけ楽しもうと思っているからな」

「そっか。じゃ、同意書にサインするぞ」


 名言こそ避けたものの、この遊園地を一緒に楽しんでいる者に対して最終確認を取る稔。紫姫は主人の意思を汲み取った上で頷いた。それを見て、稔は即座にキャストから同意書を貰い、一緒に渡されたボールペンを手に、内容を黙読していく。紫姫と相談するべき内容があるか確認を行い、どんどんと紙の下の方に視線を向かわせる。稔は最後まで読んだ上で、ペンキャップを取ってサインした。


「『ウォータージェットコースター乗船同意書』にサイン頂き、ありがとうございます。まもなく出港いたしますので、そのまま今しばらくお待ちください」


 キャストは言って一礼し、その場を去って司令室らしい部屋へと向かう。そんな中、二番コーナーで待機していた二人が戻ってきた船に乗船した。一方、そこから降りた二人は全身ずぶ濡れ状態である。とはいえ、二人とも体格の良い男子だ。当然のこと、透けブラを見られるなんていうイベントは発生しない。



 二番コーナーで待機していた二人が乗船してから約十五秒し、三番コーナーで待機していた二人が次に届いた船のような乗り物に乗った。それからまた一五秒して、稔と紫姫に向けたアナウンスが入る。同意書を求めたキャストの声だ。


「――四番コーナーの方々、乗船下さい――」


 アナウンスから数秒し、帰ってきた船から二人が降りた後。稔と紫姫の前で閉じられていた都市部の駅の改札機で見られるようなセキュリティゲートが、司令室からの操作で開けられた。同時、紫髪の手をとって黒髪男は前へと進む。


「紫姫、行くぞ」

「ちょ……」


 半ば強引に引っ張られ、キャラではない声を出してしまう紫姫。思わず出した声を撤回することなど出来ず、むしろ顔を紅潮させてしまった。そんな紫髪の表情に稔は失笑を浮かべる。とはいえ、乗船することになったのは双方同意から。それこそ同意書を書いてしまった以上、紫姫も後退することなど出来ない。


「顔真っ赤にしてんじゃねえよ」

「我らしくない声を出してしまったからだ。というか、言わせるな」

「勝手に紅潮させたくせに何を言う。でも、そういう紫姫も可愛いと思うぞ」

「へ……?」

「ほら、早く乗れ」


 そんな理由に稔はまた失笑する。けれど、こんなところで足踏みしたら遊園地側に迷惑でしかない。だから稔は、紫姫を慰める名目の上で乗船を急かした。紫髪の背中を擦って優しい言葉を掛けたかと思えば、彼女を押して自分の方へ寄せたのである。一歩間違えば、『チャラ男』とか『ヤリチン』とか『浮気』と思われてしまう行動であり、行った後で稔は猛省した。


「わっ、我は可愛いくないぞっ!」

「なんで褒め言葉を否定してんだよ、バカ」


 乗船した後の自動的にシートベルトが装着される間、稔と紫姫はそんな会話をしていた。そんな二人を見て、キャストは思わず苛立ちを隠せない。一方彼らには、バカップルという名のゲスト達に幸せになってほしいという思いもあった。そんな中、キャストは日常茶飯事なんて流すように船の静止を解除する。


「ではでは、サバイバルへ行ってらっしゃ~い!」


 司令室から手を振るキャストの顔が見える。同時、二人を乗せた船が起点港を出港した。船はレールの上を進み、水を左右に分けて押していく。そうして船は平坦な道を進んでいき、出発して五秒くらいで最初のカーブを迎える。それからすぐ、高さ一メートルくらいの坂が見えた。船はそれを上り、そして下る。


「おお……」


 坂を超えた先のエリアは、起点港から坂までの水深よりも深くなっていた。左右には森林に見立てた木々が生えている。だがもう、そこは観光船と同じように扱えるエリアではない。前方方向に何もないと思った矢先、二人を驚かす物体が現れた。レールが途切れていないと考えた刹那、油断が生んだ結果である。


「キィィィッ!」


 鳴き声と同時に浮上したのは、サメだ。そして間もなく、口から水鉄砲を発射する。現れたのはレールの前方方向だったが、近づいて初めて分かったのはそれが線路の左側だということ。左側の座席に座っていた稔は、その攻撃を一身に受けてしまった。夕時の勢いある水しぶきは、それなりに冷たい。


「冷て!」

「我をイジったバチが当たったんだな」

「そうかもな」


 稔はそう言い、鼻から「ふん」と声を出して自分のことを嘲り笑った。直後、突然現れたサメは帰路に着く。そうして現れるのが二つ目のカーブだ。その先に見えたのは洞窟で、セカンドステージは暗闇らしい。それを察した瞬間、紫姫が稔の服の右裾を抓るように引っ張った。


「怖いのか?」

「怖くなど、無い……」

「痩せ我慢も大概にしろよ? お化け屋敷で悲鳴上げまくった癖に」

「五月蝿い、煩い、うるさい!」


 と言いつつ、紫姫は稔の服の右裾を引っ張ったままだ。怖いなら怖いと素直に言えばいいものを、強情かつクールに振る舞っている為に言えないのである。稔はそんな紫姫を「可哀想」と思った。でも小動物のようで愛らしいから、黒髪男は戦友を突き放したりしない。そんな中、船は洞窟へと進入する。


「明かりが見えねえ洞窟だな、おい……」


 洞窟内に電灯はない。もちろん非常灯が無いわけではなくて、緊急時以外は点灯しないという特別仕様なだけだ。そんな特性をアトラクションは存分に活かしていて、そんな場所へ進入したのが運の尽きと言わんばかりに恐怖度を増していく。その初手、使われたのはコウモリの鳴き声だ。


「きゃあっ!」


 暗闇の中、紫姫は更に稔へと接近する。だが、バカップルにしか見えない『黒白』に対して報復攻撃でも仕掛けているかのように、アトラクションは紫姫虐めを続けた。進入して十秒程が経過し、突如として船が停止したのである。


「え……?」


 目を丸くして何が起こったのか状況確認を行う紫姫。だが、二人の近辺に担当者が居るはずない。でも、一人勝手に緊迫状態に陥っていた紫姫だ。稔の服を引っ張っていたのを止めてまで係員を捜索する。すると、その刹那のことだ。洞窟上部に取り付けられていた電灯が突然点灯したかと思うと、奥から恐竜が近づいてきたのである。もはやそれは、サバイバルなんていう括りではない。


「来るな! 来るな!」


 自分にとっての敵だと分かり、即座に暴言を吐露し始める紫姫。一方稔は、照明が突然点いたことに衝撃を受けてビックリしてしまったが、恐竜に関してはプロジェクトマッピングと同じシステムであることを見抜いて、あまり恐怖を覚えなかった。だが、アトラクションは予想の斜め上を行く。


「……は?」


 恐竜が突進する勢いで近づいてきたかと思うと、停止していた船体も前方方向へ進み始めたのだ。それも、先程の三倍くらいの勢いである。坂を下っているかのような感覚が身体を走る。それに加えて、恐竜が自分たちに近づいてきているのが分かった。ドスドスドス……と、大きな足音がスピーカーから聞こえる。


「来ないでくれえええ!」


 猛烈な勢いで顔を左右に振る紫姫。そんな彼女は、犬が水を飛ばすために頭を振っている時に似ている。だが、アトラクションのコントロールは司令室の役割だ。紫姫がそれをコントロールすることは出来ない。だからこそ、悲鳴を上げることしか出来ないのだ。恐竜が近づくにつれ、紫姫の悲鳴も大きくなっていく。


「嫌ァァァ!」


 紫姫の悲鳴とともに、加速した船体が恐竜と衝突した。それから間もなく暗闇を演出するために閉じられていた扉が開き、二人を乗せた船はそこからトップスピードで洞窟を抜ける。光を視界に捉えて紫姫はホッとするが、抜けた先は下り坂。恐怖感を消し去るかわりに、紫髪は水飛沫を浴びることになった。


「冷たいな」

「人が変わりすぎだろ、紫姫」

「我はお化け屋敷というか、暗闇全般が苦手でな。許してくれ」

「謝れとは言ってねえよ」

「そうか。それなら良かった」


 紫姫はそう言い、前方方向に視線を移した。稔も同じ方向に目をやる。セカンドステージを抜けた先は、ファーストステージ同様に木々が茂っていた。それが設置されている理由は単純である。暗闇から新緑の季節を思わせる青々とした緑を目にして、ゲストの恐怖心を消し去る狙いがあるのだ。


「お?」


 そうこうしていると、二人の目の前にカーブが現れた。船体はトップスピードで洞窟を抜けてから徐々に減速していたから、カーブで陸地と隔てるためのブロックにぶつかることはない。同じ頃に猿や鳥が周囲に現れ始めたが、洞窟と比べたら恐怖心を煽ることなど出来ない。


「カーブが多いな」

「そうだな」


 一つ、二つとカーブを曲がって、船体は曲がりくねったコースを進んで行く。そんな中、銀色に輝く鉄だけで組まれたゲートが現れた。そこには、上下に一単語、『FINAL』『STAGE』との記述。乗船者を落ち着かせる意図で恐怖心を煽らないでいた洞窟からのエリアが、サードステージなのだ。


「ちょっと待て、稔。あれは一体なんだ?」


 ファイナルステージに突入してすぐのカーブを曲がった時のことだ。それまで木々が茂っていたりしてカモフラージュされていた、パーク全体でも一二を争う巨大な塔が見えた。稔も紫姫も、それが何を意味しているのかは分かっている。だが、またも二人の予想を裏切る展開が訪れた。


「おい待て。あれ、まさか回転台じゃ――」

「回転台って、鉄道のか?」

「そうだ」


 『回転台』ではなく『転車台』であることには触れないでおいて、取りあえず、稔は紫姫の報告の意味がこの先のどこに隠れているか確認する。視力が特段悪い訳でもなかったから、紫髪が見つけたように黒髪男も容易に見つけられた。そしてそれが、本当に転車台であることも確認できた。


「転車台が在るということは、つまり……」

「バックで落下するんだろうな、恐らく」


 二人とも唾を呑んだ。ジェットコースターなら地面に触れることはないが、これは水を有するジェットコースターだ。どうしても船体は必ず水面に触れる必要がある。進行方向に何が在るのか把握できないまま水面へと向かうのだから、それ相応の恐怖があるのは言うまでもない。


「来たぞ」


 そうして、転車台へと船体は差し掛かる。すると『黒白』の予想通り、二人を乗せた船は一八〇度回転した。そして、それまでの車輪から後ろ向きに走行するための車輪に切り替えられる。そして、まだ心の準備が終わっていない中で船体は走り出した。背中が引っ張られるような感覚で、例の塔へと船は進む。


「……」


 転車台を越して十秒ほど。遂に、船が塔内へと進入した。数秒して船全体が格納されると、エレベーターのように扉が閉まる。続けて、船が運んできた水が抜かれた。そして、レールという突起物を抱える特殊な密閉空間が上昇し始める。それから間もなくして、皮肉なことに、稔と紫姫の視界に現在の高度を表す数字が入ってしまった。これでは、心を必死に落ち着かせたのが水の泡である。


 だが、ゲストが覚悟を決めるまでの時間などもう無いに等しい。十メートルを四秒で通過する速さの上昇スピードでは、消えた覚悟を取り戻す時間を確保するのに十分な時間など出来なかった。もちろん、無慈悲な展開は否定されない。


「三十メートル、だと?」


 高度上昇がストップしたのは、高さ三十メートルの地点だ。即座に扉が開き、同時に稔と紫姫は深呼吸を始めて最後まで抵抗を続ける。しかし、その声は司令室に届くはずがなかった。届いたとしても、彼らが止めるはずなかった。


「うおおおっ!」

「きゃああっ!」


 レールの上を加速して下っていく船体。それを防ぐ魔法など無く、稔も紫姫も声を上げる。ジェットコースターが得意な二人だったが、流石に水相手の後ろ向きジェットコースターでは恐怖心を覚えていた。だからこそ、声を出して払拭するのだ。怖いという気持ちを楽しいという気持ちに変え、満喫するのだ。


 そして船体は水面へと着水する。もちろん、後ろ向きで。だが、恐怖心を捨て切った二人は楽しんでいた。稔に至っては手を上げるほどである。髪から靴まで全てを水が濡らしたが、それでも二人は最高の時間を過ごせたと思った。




 それから船体は起点港へと帰還を始め、そして到着してアナウンスが流れた。稔と紫姫が乗り込む時に聞いたものと同じである。とはいえ、その内容は二人を早く降船させる旨を遠回しに告げていた。だから、早急に退避する必要があると思って二人とも急いで降りる。それからすぐ、キャストが二人に寄って言った。


「ご乗船ありがとうございました。シャワールームへご案内致します」

「シャワールームが在るのか」

「はい。瞬間乾燥機もありますので、どうぞご利用下さい」


 キャストはそう言ってシャワールームで出来ることをアピールした。稔は紫姫に聞いてから結論を出すつもりでいたので、質問を受けて紫姫に問う。


「紫姫は使うか?」

「使うに決まっているだろう。サバイバル訓練後の格好で歩く気はない」

「そっか。じゃあ、案内してください」


 稔はそう言い、キャストにシャワールームまでの案内を任せた。稔と手を繋ぎながら、紫姫もその部屋へと向かう。スタッフは上から吊るされた看板が在ったところから左折し、二人もそれに付いて曲がる。そして少し進んで、目の前に扉を見た。けれどキャストは、閉じられていた扉を開けてくれない。


「私の案内はここまでです。あとはゲスト様達でお願いします」

「でも、操作の説明とか……」

「中に資料が設置されていますので、それをご利用下さいませ」

「そうは言っても、扉が開いていなければ……あれ?」


 稔がキャストと話し合って折り合いを着けられそうになった頃、ふと前方方向を見ると扉が開いていた。黒髪男はいつの間にか進んだ展開に一驚を喫する。けれど、時間が経過している以上は話の潮流が止められるはず無い。


「入って左側に資料が御座いますので、そちらを御覧くださいませ」


 キャストは少し冷たい言葉を稔に浴びせた。指示された場所には確かに資料が設置されている。それこそ、シャワールーム直前で足踏みしてまでスタッフに案内させた意味、問うてここまで来た意味を失うことはない。だから稔は、半ばキャストに流される感じでシャワールームへと進んだ。紫姫も同様に進む。


「どうぞ、疲れた体を慰めて下さい」


 稔と紫姫が扉の向こう側へ進んだことを確認すると、キャストは笑顔を見せて言った。そして、遠隔操作で扉を閉じる。同時、シャワールームの扉の上に設置されていたランプが一つ点滅を始めた。これは、使用されているか否かを区別するために用いるものである。また、扉の上のランプが点滅しているということは、入った利用者が何処へ入るか確定していないことを示している。


 でも、点滅はすぐに止まった。利用者が何処で汗を流すか確定させたのである。それを確認して、キャストは司令室へ戻った。

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