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チートなしで敗戦国家を救うことになりました。  作者: 浅咲夏茶
一章 エルフィリア編Ⅰ 《Knowing another world and the country》
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1-14 EMCT/墓地 Ⅳ

 墓地と言っても、それは部屋の中にあって、地上にあったりしたわけではなかった。東京だとかの大都市であれば、日本でもビルの中に墓地があったりするのは確かだ。しかしながら、墓地がビルの中にあったりするのは、田舎人から見れば珍しいことであるのは言うまでもない。


「リート、一つ聞いていいか?」

「なんでしょうか、稔様?」

「いや、この国の墓地って、ビルの中にあるのが多いのかなって思って」

「ああ――」


 稔が聞いた質問に、リートは少し悲しげな顔を浮かべた。そして、話すのを躊躇う。


「な、なんか嫌な過去があ――」

「エルフィリアは、先の大戦で敗北するほどに大ダメージを受けました。王都が陥落し、暮らしていたエルフィートは奴隷として連れて行かれ、しっちゃかめっちゃかになりました」

「それはさっき聞いたが……」

「ええ、その延長線なんです」

「――どういうことだ?」


 稔が首を傾げる。『延長線』だとか少々ボカシがかかった風に言われても、察しの良くない稔のような人間からすれば、中々わからないものである。考えればいつか分かる可能性はゼロではないものの、時間を有効に活用したりする場合、それは論外である。


「元々、エルフィリアの墓地はビルの中になんて有りませんでした。――でも、大戦が激化していくに連れて、次第に建物で隠すようになったんです。自分たちの先祖を守るように、墓地の上を建物で覆って守るようになったんです」

「その頃は平屋だったのか?」

「はい、平屋でした。……ですが、ビルの技術とかが凄いものになった今現在、平屋の建物に墓地が有ったりすることは無いですね。基本、二階から一〇階程度のビルの中に入っています」


 二階から一〇階程度ということを考えた時、エルフィリア・メモリアル・センター・タワーズがどれだけ凄いものなのか、と改めて実感した気分に稔はなった。


「それに――。墓地を地上に置くと、我が国のような国土があまりに狭く、農業をする場所すら確保しづらい点からすれば、邪魔というか、迷惑というか、あまりいいようなものではないんです」

「場所を取るからか……」

「はい。……それに、国民は近づきたがりませんからね、こういった墓地だとかには」

「そうなのか……」


 確かに日本でもそれは同じである。必要のないときに墓地に入ったりすることはない。もっと言えば、廃墟に入ったりすることも、必要のない時以外は無いものだ。……とはいえ、必要のないときにも入るような人間は居なくない。そしてそういう奴が、基本的に廃墟だとかを荒らす原因を作っているのだ。

 

 ただ。日本で必要のない時に入る人が全て、廃墟だとかを荒らす原因を作っているということは断言できない。何しろ、肝試しだとかで訪れる人が居るからだ。礼儀正しい人でも、そういうことをすることは有る。――しかしながら、稔は非リア充であったのでそういう経験は無い。


「でもほら、肝試しとかで――」

「肝試し……?」

「いやその、日本の伝統行事でだな……」


 稔が『日本』という言葉や『伝統行事』という言葉を使って話をした刹那、リートの目がキラキラとしだした。――否、それはリートだけではない。一緒に行動してきた三人全員がそうなっていた。

 

「お前ら日本文化どんだけ好きなんだよ……」

「いや、異世界の文化って興味湧くじゃん?」

「そういうもんかねぇ……」


 確かに、『異世界』というおおまかな括りに関して言えば「興味が湧く」のは確かだ。ネットゲームだとかのやり過ぎか、それか厨二病を拗らせたか……。でも、基本的にその二つが『興味』を作り上げて、湧かせているのだ。異世界に行きたいとか、そういう風に思ったとしてもそうだ。

 ただ、『文化』と限定すると稔は賛同できなかった。

 今であればこうやって、異世界マドーロムという場所へ来て、魔力だとかいう事を言ったりしているが、現実世界で『魔法』だなんて言っていたら、ただの痛い人だと認識されたりする可能性がある。


 それに、現実世界の人間は『異世界なんて創りあげたもの』という認識が強い。マドーロムで稔が見たような景色は所詮、彼らの中では『空想上の話』にしか過ぎないのだ。


「ところでご主人様」

「な、何?」

「話、逸らすのも大概に……だよ?」

「そ、その旨はすいませんっ!」


 少々丁寧に謝った稔だったが、動揺の上で起こったことであった。勿論、何時もと違うような態度に見えたことも有り、召使であるラクトはそれを笑った。ただ、そもそも稔の心が見え――もとい、読めているので、謝られなくても良かったのはラクトの秘密である。


「それで、肝試しってのは具体的にどんなことをするのかな?」

「夏の日の夜に、廃墟や墓地に行ってある一定の場所まで行って戻ってくるとか、そういうことをする」

「簡潔説明ですか」


 簡潔、とか言われなくても稔は分かっていたし、そもそもそれを狙って至ったのだ。無理に難しい単語を並べて言うよりも、分かりやすい単語を並べたほうが『(自分の語彙が豊かな事を)自慢してんのか』とか思われなくていい。


「まあ、そういうことを将来的にしたいよね」

「まあ、したい気持ちは山々だけど――」

「まずは参拝、というところだよね」

「そうそう」


 心を読めていることが理解できている以上、頷くだけでは何処か物足りないと稔は思った。そのため、一応返答をする時に言葉を用いた。動作ではなく、敢えて言葉で伝えたのだ。


「それじゃ、リートとスディーラ」

「俺(私)に、礼儀作法を教えて下さい」


 まるで打ち合わせしたかのように声を重ねる。それはもう、見事だった。


「重ね完璧だな、お前ら。……まあいいや。んじゃ、僕とリートが見本を見せるよ?」

「お、おねがいしますっ!」


 そんな事を言わなくても、丁寧な言葉に近づかなくてもいいことは稔は分かっていたのだが、口から出てしまうものである。現実世界でどういうふうに生きてきたか、それがマドーロムというこの異世界で、反映されているのである。


「――それじゃ、参拝方法を説明するぞ」

「は、はい……」


 やはり何故か、稔は動揺が止まらなかった。たかが説明だというのに、何故ここまで動揺するのか、正直な所、わけがわからなくなっていたところもある。


「まず、エルフィリアでは他人が墓参りするときに敬礼しないのは『無礼』に当たるから注意な」

「お、おう!」

「それで、だ。まずは、墓を目の前にしたら二礼する。他人は計三礼だな」

「うん」


 そこまでは口頭で説明したスディーラだったが、口頭のみでの説明の限界を感じたのか、動作を入れた説明をした。


「そしたら、次に右手をへそに並行になるようなところに添える。左手は身体の左側にピッタリじゃなくていいから、力を抜いて付けておく。そして、その後に二礼だ」

「ふむふむ……」


 二礼、という作業が多く有ったものの、基本動作はそこまで凝ったものではなかった。――が、日本人である稔からしたら、少々違和感がなくはなかった。日本で神社に行って参るときのように手は叩かないところ、日本で自身の墓地などに行って参る時のように合掌しないところ、そういうところに違和感を感じたのだ。


「まあ、やってみなさいな。僕らエルフィリア国民からすれば、こんなのは出来ないと恥ずかしいものだ」

「そうなのか……」


 日本国民が用事で神社だとか行く日は、基本的に祭りとかの日が多い。が、祭りということは出店があったりする。要は、神社で参拝することが最大目的で言っている人ばかりでないということを意味する。


 そしてそれが何を生むかといえば単純である。それは、「神社での参拝方法を忘れる」ということだ。


 鳥居を一揖して、手を手水舎で清め、一揖して鈴を鳴らし、御賽銭を入れて二礼二拍手一礼、そしてきた道を戻って鳥居を一礼して帰る――。これまで日本人なら分かって当然と言えるようなことが、わからない人が出てきたりしているのだ。

 ……と言っても、それは一般的なものであって、違う作法でしなければならない神社は少なからず存在するのは確かだ。


 しかしながら、日本人が忘れかけてきている『礼儀』みたいなものを、エルフィートが持っているのだということを、稔は身に染みて感じれた。忘れてはいけない作法みたいなものを忘れたままにしておくようにしている日本と、作法が出来て当然のエルフィリア……。そう考えた時、稔は作法に関して日本人が再度学ばなければならないように感じた。


「ところでご主人様、早くしてみて下さいよ。私、待ってるんですからね?」

「別に俺の先にやってもらっても構わないが――」

「いえ、やはり召使は後から追わなければいけません。師であるご主人様より先にするのは、心が痛みます」

「三尺下がって師の影を踏まず……か」

「ことわざですか?」

「まあな」


 この場合、召使であるラクトは『弟子』として捉えていいのかは曖昧な定義なところであったし、加えて、召使であるラクトの『礼儀』は、ある意味の『制約』みたいなものである。……そして、取り敢えずことわざの意味は、『弟子は師とする者を尊敬し、礼儀を忘れぬようにせよ。という戒め』 だ。


「んじゃ、そういうことなら俺からしなければならないわけか」

「そういうこと」

「全く、仕方ねえな。これだから俺の召使みたいに喋る奴は――」

「ちょっと心に刺さるね、それは。まあでも、そう思っているようなら、ご主人様が希望するようであれば獣コスチュームも考えなくはないけど……」

「なん……だと……?」


 きつめの言葉を浴びせたつもりだった稔だが、結局はコスチュームという言葉に釣られてしまった。挙句、自分の欲望に駆られる。


「――魔法を使えば出来るのか?」

「まあね。簡単に変更できるよ。勿論、僅か一秒で水着にだってなれるよ!」

「流石、熟練された召使は違うね」

「そんな、褒めても何もでないのに……」


 稔とラクトがそんなやりとりをしている裏で、彼らのやりとりを全くいいように感じていなかった人たちが居た。――言うまでもなく、それはリートとスディーラである。


「お前ら、イチャコラしないで早く参拝しろや! 待ってんだよ!」

「ごっ、ごめんなさいっ!」


 稔は謝罪した後、教わったとおりに参拝した。

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