2-60 605号室-Ⅶ
洗濯機の洗浄エリアから脱水エリアへと洗濯物を移し終わると、稔とラクトは一段落したと息を吐く。二人共々、下らないや遊戯で雑談で時間を潰してきたから洗濯物を移す時間が短いように感じていた。
「女衆四名の浴衣着付けは頼んだぞ、ラクト」
「任せておけ!」
そしてラクトは、稔に敬礼をする。洗濯物は下着だけ除外すればいいとの理由で稔を手伝わせたラクトだったが、浴衣の着付けは違っていた。下着を穿かないで浴衣を着用する者も居るが、女衆四名は当然の如く下着を着用するだろう。だからこそ、稔に見せるべきではない。それに、異性の体格を意識して帯を結べるというのだろうか。
色々と考えた末、稔からも承諾をもらって担当することになった。けれど言い換えれば、それは稔が数分間の間に洗濯機の置いてあるエリアからも出られないという意味である。即ち、行動の制限というわけだ。しかしラクトは、そんな稔に職を与えた。動いてはいけないという状況だからこそ、職を与えたのだ。
「脱水エリアに色々と移し終わったわけだけど、私が居ない間に色々とやっておいて」
「主人を雑用係に使うとはいい度胸だなと言いたいが、仕方の無いことか。――わかったよ」
「ありがとう。じゃあ、お礼にこの用紙を――」
ラクトは笑顔で言い、用紙を取り出した。そしてそれを、稔へと手渡す。そこには、色々な数字が書かれていた。数字ばかり書かれているから、連続して見続けていればゲシュタルト崩壊が起こるのは確実だ。でもラクトの一言で、それは大きく変わった。
「それ、私と紫姫とヘルとスルト、それにレヴィアとサタンのスリーサイズと身長と体重。カップ数は自己申告形式だけど、私のは正確だから。まあ、下着姿を拝めない代わりってこと。じゃ、よろしく!」
ラクトは右手でグッジョブポーズを決めると、即座に洗濯機の置いてある部屋から立ち去った。さり気なく音を立てずに扉を閉めるところには、普段の彼女の姿からは考えられない、気が利く行動をする性格が滲み出ている。そんなふうな事を考えながら、稔は貰った紙に目を通した。
「――」
稔は絶句してしまった。何故か自分のサイズが記載されていたのである。スリーサイズといえば女性のバストとウエストとヒップを表すものが大半だと思っていたから、唐突な自分のスリーサイズ記載には言葉を失ってしまった。
「しかも、ちゃんとチェストになってるし。でも、AAA未満とか書く必要ないだろ……」
稔は堪え切れず、抑えていた屁を出すように笑いを零した。無論、男性のバストサイズ――もとい、チェストのサイズからカップ数を推測するとは、馬鹿げた行為である。胸パッドを入れて女装するわけでも有るまい稔が、何故そのような情報を入手する必要があるのだろうか。
「しかも正確な情報……」
とはいえ。絶句してしまった要因の一つである、男なのにカップ数が書かれているところには評価は付けないとしても、稔はたいそう感心した。流石は心が読め、果ては脳という記憶媒体まで読めてしまう召使だと称揚できる。だが一方、プライベートな情報を正確に読み取れるというのは驚異だとも感じてしまう。
「ラクトは分かってたけど、レヴィアも結構なものを持ってるのか。着痩せするタイプなのか?」
スリーサイズが記載された表を見ていくと、それは順位で上から書かれていた。堂々の一位としてラクトのスリーサイズが記されていたわけだが、二位にレヴィアがランクインしているのは意外な話である。
「(……やっぱり、夜の職に就くとでかくなるのかな?)」
レヴィアとラクトの共通点を探し、発見したことを内心で言ってみる。ラクトは色々とあってそうなったこと、レヴィアも慰安婦として働いていたと話していたのを思い返し、稔は考察資料とした。
「まあいいや。取り敢えずこれに関しては終わったら見ることにして、まずは脱水作業だな」
稔は言い、指南書を目視した。脱水の為に洗濯物がエリアを移動したことまで終わっていると頭に入れてみておけば、次の作業が何であるかは容易に読めば分かる。だがイラストだけ見たのなら、雑すぎてお手上げになりそうだった。
「脱水ボタンを押します、か。了解」
稔は確認をして作業に移る。脱水ボタンが何処にあるかを絵で示してくれているのは大変助かるわけだが、彼の眼中になど無い。無論、あのような雑すぎる絵を書かれてしまっては、見る気も失せて当然だ。
そうして、稔は雑用係としての仕事を全うしていった。
一方でその頃、ラクトは女衆四名を風呂場から上がらせるために奮闘していた。
「おいこら、もう二〇分くらいも入ってんだから上がれ!」
「まだまだ、みんな洗い終わってないっすよ。誰かさんがいちゃラブしてドアを大開きにしたお陰で」
「でも、洗い終わった人は居るでしょ?」
「ああ、居るっすね。紫姫とサタンの二人っす。私は責任もって最後を務めるんで、スルトも湯冷めない程度に温まったら上がると思うっす。なんで、もう浴衣の着付けは始めてもらってオッケーっすよ」
「分かった。じゃあ、紫姫とサタンには上がってもらおうか」
ラクトとヘルの間の会話だけで話が進行しているわけだが、紫姫は少々のぼせ気味だったために逆らう気を見せなかった。一方のサタンは、浴衣という貧乳が勝つ衣服に着替えられることを喜んでいたため、ホイホイとラクトに付いていく。抵抗など、二人共にない。
「私もいいですか、ラクトさん」
「スルトも上がるんだね。オッケー。んじゃ、水回りの後始末はヘルのお仕事ということで」
「了解したっす、セカンドマスター」
「セ、セカンド……マスター?」
ヘルは平然といったのだが、その言葉がラクトの耳から離れなかった。『第二の主人』と言っているのだから大体の意味は予想できる。だがラクトは、敢えて心を読まずしてヘルからの説明を待つ。けれど、そのヘルは扉を閉めてしまった。そのかわりとして、スルトがラクトへの説明を行った。
「イチャラブシーンを見せつけられたので、私とヘルとサタンの三人は『セカンドマスター』と呼ぶことにしたんです。だってラクトさん、現在進行形で彼女になりつつあるじゃないですか」
「でも、先輩に対して私たち以上に好意を持っている紫姫は、それに賛同しなかったんです」
「取り敢えず。貴方は三人の間であれば既にマスタークラスです、ラクトさん」
「マスターっていうより、リーダー的な立場だよね?」
ラクトが言葉を変えて言うと、スルトとサタンは共に「そうですね」とコメントする。ラクトは尊敬してもらえたら大歓迎だし、それが義務的なものじゃなければ尚更いいものだと感じていた。けれどやはり、「マスター」にはなれない。せめて「リーダー」であると、そう考えていた。
そして、そんな心をスルトとサタンは察す。もちろん、ヘルだって身体を洗いながら察していた。ラクトが少し遠慮しているのは稔への配慮であろうとも考えたが、だからといって言われたくない名前を呼ぶのは、後々負い目を感じるだけだ。
だから、スルトは許可を取った。「セカンドマスター」ではなく、「リーダー」と呼ぶために。
「では、これからは『リーダー』と呼んでいいですか?」
「別に構わないよ。あと、湯冷める前に下着を穿きな。風邪は引いても困るし、引かれても困るからな」
「でも、下着って何処に有るんですか?」
「下着の在処なんて、普通に考えて分かるだろ」
ラクトはスルトを嘲笑した。しかし、嘲笑をされてもスルトは何処に有るかが分からなかった。むしろ焦ってしまって、余計に混乱したのだ。けれどそんな時、サタンがそれを補助した。ラクトの視界に入るように部屋の中を歩いて箪笥の前まで向かい、そこを指さして言う。
「ここですよね?」
「そうそう、そこそこ。でも、浴衣が置いてあったから有るだろうって考えなんだよね」
「でも、推測としてはいいと思います。ラクトさ――」
「もういいよ、その呼び名で。サタンからは『ラクト様』の方がいい」
サタンはラクトから妥協策のように言われたため、「でも――」と反論をしようとした。けれど、ラクトは主張を変えることをしない。これまでそれで通してきたこともそうだが、『リーダー』と呼ばれなくても『ラクト様』で主君に忠誠を誓うように聞こえているからだ。意味合い的に同じなら、変える必要はない。
「いいんだってば。サタンからラクト様、スルトとヘルからはリーダー、紫姫からは貴様かラクトとか。私だって稔には逆らえないんだし、名前なんて上から二番目の奴がどうこうする話じゃないっての」
ラクトはそう言って、自らを憫笑した。というよりも、異性との間でもないのに呼び名を気にする必要はないと思ったのだ。もっとも、それは本妻の余裕だとか揶揄されてなんぼの理論だが。
「それはそうと、こっから浴衣の着付け作業に入らなければいけないわけだ。まだ洗濯が終わっていないから乾かしなんてやってないけど、乾いたら、今みんなが着たり穿いたりしたものは洗濯して返す」
「当然畳むんですよね、リーダーが」
「すぐ終わるって。最悪、稔を雑用係として働かせるから大丈夫」
「マスターの扱いが可哀想な扱いになってきていませんか?」
スルトが心配そうにして問うと、ラクトがそれの返答をしようとした。だが丁度、サタンが割って入る。
「ラクト様の武器はなんといっても大きい胸。外見から見ても分かってしまうような、その『でかさ』を駆使し、先輩――マスターのことなんてイチコロするんですよね?」
「まあ、そうなると思う。けど恐らく、稔は私が困っていたら助けてくれると思うな」
「いい関係ですね、リーダーとマスターって」
スルトは目を細める。マスターと召使が信頼し合える関係を築けているのは素晴らしいことだし、それは自分も出来ていると感じていた。でも、ラクトと稔の関係はそれ以上だと感じていた。意思疎通が自分とマスター以上に出来ているし、何より恋愛感情を互いに抱いているように思える。
「恋愛感情があるからこそ、先輩がラクト様を助けると思えるんですね」
「でも、いざという時には助けると思う。私は臆病とか言って冷笑したりするけど、今日一日で変わってきてる気がするし。――てか、そうじゃなかったら主人じゃないって」
ラクトはそう言って笑う。それと同時、紫姫が湯冷めたことでくしゃみをした。のぼせて倒れてしまうよりは湯冷めたほうがいいのだろうが、それでも風邪を引いてしまっては元も子もない。そのためラクトは笑っていた表情を真剣なものにし、紫姫の方へと近づいて言う。
「……大丈夫?」
「だ、大丈夫……だ」
紫姫は言うが、鼻水を垂らしているところを見れば肯定なんて出来ない。もちろんラクトだって、自分を慕っていない人間には一切の助けをしないような人ではないから、紫姫にティッシュを箱ごと届けることにした。
「ほら。これで擤鼻しなよ。片方の鼻だけかむのが一番いい」
「す、済まない……」
紫姫はラクトからのアドバイスを貰うと、まずはティッシュペーパーを二枚箱から取り、それを鼻へと当てた。アドバイス通りに片方かむことにしたのはよかったものの、彼女は耳がキーンとしたらしく、不快感を覚えている。
「バカだな。なんで強くかんでるんだっつの。そんなことしたら、耳壊すぞ?」
「そうなのか? だが、我はそんなに簡単に壊れるような者では――」
「稔の前で二人きりになった時はデレた顔を浮かべてるくせに、よく言うね、『壊れない』なんて」
「そ、それは見間違いではないのか?」
紫姫はそう主張したが、ラクトは「そうかな?」と言って笑みを浮かべた。それは紫姫の秘密を知っているという意味しか伝わってこない笑みそのものである。言い換えれば、ラクトが紫姫の主張などに聞く耳を持っていないというわけである。
「んじゃ、まず風邪引くと悪いからね。箪笥の中から下着を取り出しますか」
ラクトはそう言い、紫姫が反論しようとしているのを尻目に箪笥を開けていく。下から上へと開ける場所は高くなっていくわけだが、下から三段目にして下着を発見した。六〇五号室に居る女性陣は五名だが、ラクトを除けば四名。下着の数は軽く一〇を越していたから、下着に困ることは無い。
「リーダー、いっぱいの色のパンツがありますね」
「そうだな。スルトは何色がいい? ――と思ったけど、私が独断で決めていいかな?」
「それが良いと思います、ラクト様」
スルトに聞いたはずだったのだが、またもやサタンが割って入って回答をした。けれど、スルトの意見はサタンと同じだということをラクトは知ったので、いちいちラクトに聞くような真似はしない。
そしてラクトは、まずスルトとサタンに下着を渡すことにした。
「じゃ、スルトにはこれを」
「ありがとうございます、リーダー」
「これまで男だったから分からないかもしれないけど、女性用はこういうものが多い。だから慣れてね」
ラクトが付け加えて言うと、「はい!」と言ってスルトは下着を貰った。色は白色に水色の線が入ったものだ。だがスルトは元々が男だった名残で、その場で堂々と着替えだしてしまう。
「ちょっ、ここで着替えんなっ! あと、ブラジャーはこれね」
「B70……なんですか?」
ラクトはブラジャーをスルトに渡したが、その時に装着方法を彼女が知るわけもないから、ラクトが説明しながらしようとした。けれどブラジャーのサイズを見た刹那、スルトのカップサイズにサタンが疑問を持った。しかしながらそのサイズは、スルトのバストサイズから導き出したものなのである。
「確か、サタンはAの70だよね?」
「ラクト様は酷いことを言いますね! ――貧乳の悲しみを知らないくせに!」
「そ、そんなこと言われても……」
男装する時に巨乳だと困るのは確かである。カツラと用具類さえあれば、髪の毛の長さなんて容易に変更可能だ。ミディアムヘアであろうが、ロングヘアを味わえる。けれど、胸は違う。魔法が無いのであれば、スルトのように願いが通らないのであれば、胸のサイズを変更させるのは不可能に近い。
「でもいいです。謝罪として――」
「ひゃっ!」
ラクトの胸を揉むサタン。メイド姿で「最凶最強の精霊罪源」だということで恐れていた頃もあったが、慣れてみれば恐れることなんて無い。ファンだということで親しみを持ってもらえていることは承知していたが、ラクトもここまでされると対応に困る。
「や、やめろっての……」
「でかくて羨ましいです、ラクト様」
サタンは、まるで「お姉様」とラクトを慕うように胸を揉むわけだが、あまり強く揉まれると痛い。でもラクトは悲鳴を上げたりせず、稔に色気のある声を聞かせることにした。
「はっ、ひゃっ、だめっ、だってば……」
「ラクト様、声作ってますね」
「――バレた?」
「あからさまなエロい声を上げたら、揉まれて嫌だって示していると分かります」
サタンがそう言い切ると同じくして、ラクトはサタンにパンツとブラジャーを渡した。カップサイズはスルトよりも小さいが、それをこれ以上弄ることはしない。それこそ可哀想だと思ったし、自分がでかい胸を持っているから自慢したいんだろとか言われると思ったから、言おうに言えないのだ。
「ありがとうございます、ラクト様。あと――」
サタンが言い切りを伸ばし、顔を風呂場の扉の方へと向けた。人差し指でさすような真似はせず、顔だけ向けている。そこを見ればヘルの姿があった。彼女は自らのバストサイズを申告してからブラジャーを貰おうと考えていたが、ラクトが先程用紙を稔に渡したことから分かる通り、もうラクトは知っている。
「ほら、これ。B75のブラジャーと縞パンを」
「ちょ、なんでサイズ知ってるんすか。それに、縞パンってチョイスどうなんすかね?」
「いいじゃん。洗濯が終われば元々の下着を穿けるんだし」
「そうじゃないっすよ。なんで縞パンなんすか。しかもこんな明るい色――」
ヘルは貰ったパンツに不満を抱いている一方、それを馬鹿にするようにラクトが言う。
「じゃあ、Tバック穿きたいの?」
「そ、そういう訳じゃないっすよ。ただ、黒色系がいいってだけっす」
「そっか。――じゃあ、普通の黒色下着をどうぞ」
「ありがとうございますっす。あと私、浴衣着れるんで手伝うっすよ」
突然の知らせだった。ヘルが浴衣が着れるというのは初めて知った情報であり、彼女が語っていなかったからこそ驚きを隠せないラクト。でも、それはそれで戦力が増えるという意味でもあった。慣れている人が増えることに対して、とやかく言う事はないだろう。
「そっか。んじゃ、先に浴衣着てもらえるかな?」
「いいっすよ。あと、私の下に居るスルトは私がすることでいいっすかね?」
ヘルからの質問に「いいよ」とラクトは許可を出した。彼女はスルト用と自分用の二着の浴衣をその後に手に取ると、同じくしてラクトは紫姫へ渡すためのパンツとブラジャーを選び出す。ヘルには黒色のブラジャーとパンツを渡したわけだが、今度こそ縞パンを渡すことにした。
「紫姫には――これとこれ」
「な、何を選んでいるんだ貴様!」
「え? 紐だめだった?」
「サイズは有ってると思うが、紐を選ぶとはふざけているだろう!」
紫姫が激怒したが、ラクトは箪笥を閉めてしまった。開けることは不可能ではないが、前にラクトが待機しているので大変だ。それに、最後に上がったヘルは既に浴衣を着始めている。一方、最初に身体を洗い終わったであろう紫姫は湯冷め始め、早めに着替えなければ本当に風邪を引いてしまう。
風邪は引きたくない。でも、紐のパンツなんて穿く気にならない。どちらかの気持ちを捨てなければ解決しないことは悟っていたが、それでも捨てるなんて出来ない。
「んじゃ、サタン。浴衣の着付けをするから――」
ラクトはサディストそのものだった。サタンに胸揉まれて無抵抗だったのはキャラを作っていたからであって、本来のラクトであれば手で弾く。揉まれて喜ぶマゾヒストではないということだ。そのため、紫姫の葛藤を知っているくせに知らないふりをし、サタンの着付け作業へと移る。
だが、その時だ。紫姫がラクトの右肩を二回叩いて振り向かせた。まだ着付け作業は始まっていなかったので手は自由に動かせる訳だが、そんなラクトに紫姫は敬語で交渉を始めた。
「ラクト……さん、下着を受け取りにき、来ました」
紫姫のプライドを壊すことが出来、ラクトは結構な喜びを感じた。でも同時に、「やり過ぎたかな?」という稀に気が利く彼女の性格が出てきてしまった。キャラを作りきれていない証拠とも言える。ただ、そんなのは心を読まれなければ気が付かれないようなことだ。そのため、ラクトはいっちょまえに嘲笑する。
「そんな、敬語なんか使わなくてもいいのに」
「使っていなければいないで何か言うくせに、どの口がそれを……」
「はいはい。んじゃ、これどうぞ」
ラクトは言って下着を手渡した。バストはヘルよりも小さいというのに、風呂に入っていた女四人衆の中では一番大きいC70のブラジャーを付けている。適度な大きさであればエロさを感じる男子は多いわけだ。だからこそ、エロさを意識しているとか思えなくて葛藤していた紫姫だが――結局はため息混じりに紐下着の着用を承諾してしまった。
「紐の下着を選んだのは本妻の余裕ですか、ラクト様?」
「違うよ。女の子っぽくないところばかり見せつけてると、扱いもそうなっちゃうからさ」
「つまり、紫姫の為にやったんですか?」
「そういうこと。じゃ、サタンから着付けを始めるね」
紫姫に渡した下着に関しての質問に答えつつ、ラクトは畳まれていた浴衣を広げた。道具が一式あるのを確認し、紫姫が未だに紐の下着で戸惑っている事に目線をやる。そして、穿かせようとアドバイスを送った。だが一方で、紫姫はそれに苛立ちを覚えたので声に出してから穿いた。




