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港の大皿料理

[伯爵の手記]…あやつにも情緒と食が解ってきたようじゃな、テーブルマナーや美しい物の愛で方を教えた師が良かったのだろうがの



とうとうこの町を去る日がやって来た、聖堂の修道士達に帽子を脱いで世話になった礼をして、町を去った。


緩やかな山の上に頑丈そうな荷台に繋がれたロバ達を世話する日に焼けた丈夫そうな少年に「どこまで行けるんだね?その荷台で」と尋ねたら「向こうの白浜の町までならこいつで行けるよ」と少年は答えた。


ふむ…と少し考えたように伯爵は懐の皮袋から金貨一枚を取り出して「これでその町まで乗せていってくれないかね?」と言った、山で道が悪いので断られたら歩くしかない


ましてや山道に明るくない伯爵たちが野宿でもしようものなら賊にはカモのようである。

なので伯爵は彼が承諾してくれないと非常に困るのだ。


「良いよ、おっさん達を其処に連れていくよ!」少年は金貨一枚を握り取って、荷台に2人を乗せて、鞭を軽く鳴らして舗装されてない山道をゆっくり走らせていった

荷車はガタゴト揺れながら空と山の景色がどこまでも続いているようだった。


そして目的地の白浜の町に着くころには空が藍色と紅色に混じりあい海が紫の色に染まる頃だった、伯爵に寄りかかって眠ってる少年が目を覚ますと白浜の町の海に心を奪われてまるで固定されて要るように視線は動かなかった。


伯爵も少年も海を見た事が無く、広く深い海に魅入られてしまっていたのだ。

「ここまでで良い、運んでくれて有り難いな。」

「大丈夫だよ、オイラもここまで行く用事が有るんだ」

そう言って荷台の少年は2人を下ろしたら白浜の町の市場に消えて行った。


今回の町の白浜の町は漁業や船を用いた貿易で栄えて居る町で夜には酒場や宿屋で日に焼けた漁師達が酒を浴びるように飲み、新鮮な魚を食べていた。

夜になっても昼のような明るさと笑い声は西の麓と正反対で見ていて楽しそうなほどだった。


街並みは暗くても解るほど鮮やかな白い石で出来た美しい街で、聖堂の目の前には鐘が吊るされてこれで司祭が朝を告げるときに鳴らすものだろうと思わしきものが有る。

今回は汽車じゃなく、船で移動するので船舶日までこの街で過ごすことになった。


今回は海にほど近い街で、女将さんと少年と同い年くらいの2人兄弟で切り盛りしている宿だった、父親は漁師で船舶日に帰ってきて次の漁に出る日まで家に帰ってくるような家庭だった。


今回の客は小太りの羽振りの良さそうな男に自分たちと同い年くらいの子供で、とても珍しかった、何故なら何時もは父親と同じくらいの漁師や自分達よりずっと大人の旅人位しか来ないのだ。


「ねえ…伯爵様…」

「なんだね、言うべき事はハッキリ言う物だぞ」

「あの子達僕…私を気にして居るみたいなんだ…」

「ならば好きにするが良い、多分遊びたいと思うがの」

「良いの!?」

「静かにせんか、遊んでも良いが他の人の迷惑になる遊びはするでないぞ?」


そう言うと少年は嬉しそうに宿屋の兄弟に声をかけると彼らも嬉しそうな顔をして彼と打ち解けているのをみた女将さんは「あんた達友達が出来たんだから遊んでらっしゃいな、あんまり遅くならないようにね」と言って笑顔で料理を作りながら言った。


「すまぬが注文をして良いかな?」

「はい、ちょっと待って頂戴」


忙しなく走る女将さんに「新鮮魚サラダ」と「貝とオリーブの海鮮スパゲティ」と「魚介だしの野菜スープ」を注文した、もちろん2人分である

実は今日は伯爵達しか客が居なかった、何故ならこの町では昨日漁に出て行ったばかりで次に漁を終えて帰ってくるのは約1週間後なのだった。


「あの子達の分も作んないとね」と女将さんは小麦色の顔を明るく笑顔にしてむっちりとした腕に力を入れて台所からは野菜を切る軽快な音とお湯が沸騰する音がする、伯爵はとても安らいでいた。


そんな中「ただいまー!」っと言う元気な音と共にすっかりびしょ濡れでズボン一枚になった少年たちが入ってきた、無論彼も例外ではなかった。

「もう、あんた達!濡れたまま入って来るんじゃないっていつも言ってるだろうに!」と女将さんは怒鳴ってタオルを少年達にかぶせた。


「お前も年相応に遊ぶのは良いが、少しは弁えるんだな…」やれやれと今にも言いそうな伯爵は新しい着替えを少年に渡し、兄弟たちと風呂に入る事を薦めた。

「追加で済まないが、冷えたウィスキーもくれ」

「あいよ!」

氷で冷えたウィスキーに四角い氷が入ったグラスに並々と注がれて伯爵に届いた、窓から入って来る潮の匂いと一緒にウィスキーの香りと共に夜は更けて行った

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