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3  寝付かせ師の苦悩

アルフォースを寝かせた後、オフィーリアは必ず見る夢がある。


一面に広がる、


ひろい


ひろい


どこまでも眩しく緑色の大地の夢だ。


オフィーリアは、そこにひとりぽつんと佇んでいるのだ。

景色は美しいといってもいいのに、なぜか迷子のように不安な気持ちで、途方に暮れる。


分かるだろうか?


幼い時に迷子になった折に感じる、

もう、知り合いのもとに帰れないかもしれないという不安、

どことも知れない場所に、行くあてもなく立っているしかない恐怖

何か恐ろしいことが起こるかもしれない危惧


いろんな気持ちがごちゃまぜになり、下を向くといつも灰色の質素なワンピ―スの裾が目にはいる。

これを見た途端、いつも彼女は悟るのだ。


ああ、また。


これは夢。


どうしようもなく、何かがこみあげそうな気持を抑えるために、その草しかない場所をさまよいだす。

ただ、ただ歩き続ける。

起きるまでの数時間もの間、ひたすらに。

疲れることはなかった。ただ心細いような気持ちで、漂うように存在するだけだ。

この夢は怖ろしい。

ここに来るたび、このまま目が覚めなかったら、狂ってしまうのではないかと思う。


怖ろしい。


日中になると、それだけの夢に苛まれている自分が馬鹿らしく思うのだが

実際、体験する度に怖さが心を伝う。



何のために自分はこんな思いをしているのだろうか。

アルフォースは、とっくに不眠症も夢見も改善している。

事実、夜にオフィーリアが呼ばれるのは毎日ではない。

それなのに、なぜ続けるのか。


アルフォースが、昔と変わらないことを求めたがるからだ。


一緒に過ごした幼年期の記憶は優しすぎて、いつまでもこのままでいたいと彼等に思わせる。


オフィーリアが今のような言葉づかいをするようになったときも、大変ごねられた。


それでも、本人が望む望まないに限らず、すべては変化するしかない。


--アルフォース様も妻を迎えてもいい年齢なのだ。


そう、気付いてしまった。


いや、いままで無意識に気付かないようにしていたのだ。


あまりの自分本意さに思わず乾いた笑みを浮かべた。


アルフォースが、自分を大切に思ってくれていることは知っている。

母を早くに亡くしてしまったアルフォースは、その影すらも、オフィーリアに求めているのだろう。


オフィーリアが、そのくらい年配ならばそれでいい。

しかし、実際は2つしか変わらない。


その曖昧な年の差のせいで、いつかおかしな歪みがでるかもしれない。



まだ少年のままのような心地の彼に、ずっとこのままではいられないことを分からせるには、どうしたらいいだろう?

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