決意
リリリリン…リリリカチ
「六時半か……」
私は、綾取 聖良。
今日から東京の高校に通う事になった。
随分前の出来事を夢で見て、親に頼んで東京行きを許可された。
「準備しなくちゃ……」
中学からずっと伸ばしていた黒髪。
ヘアーアイロンでストレートにし、前髪をピンでとめて…。
顔をぬるま湯で洗って、薄く化粧をする。
中学までニキビに悩まされていたけど、もうすっかり無くなった。
鏡に向かって中学までの自分を思い出した。
人に話しかけるのが苦手で、話しかけられるのをいつも待っていた。
自己主張もなく、いつも人の意見に乗っかっていた自分。
人前で発表するのが嫌で、声が後ろの席にまで届かなかった。
「高校では、中学までの過ちはしない」
鏡に映る自分を見て言った。
この言葉を何度、心に思い言っただろうか?
幾度も、幾度も鏡に映る自分を見て言ったことだろう。
16歳の春。
女子高生になった今こそ自分を変えるんだ。
あの頃までの自分とは、永久におさらばだ。
怖がらずに、前へ進むんだ。
そう、自分に言い聞かせ学校への道のりを一歩、また一歩と進んでいった。
自分の決心を何度も確かめ、踏みしめる様に。