思考加速
「残りの二キロを十秒で………?流石にAランクのシェイルさんでも能力なしだと不可能では…?」
シェイルの宣言を聞いたニーナは疑問の顔を浮かべる
そりゃそうだ。全員が疑問で頭がいっぱいだ。二キロを十秒で?単純に計算しても秒速二百メートルだぞ?
不可能だ スピード強化系の能力が使えれば決して不可能ではないと思うが今は能力を使ってはいけない
その時、シェイルが俺に話しかける
「武戦……スタートの声がけをしてください」
「え?」
「はやくしてくれます?」
「わ…………分かった……よーーーい」
「スタート!!!」
その瞬間、地面が爆ぜた
轟音が響き、彼女が走るところはえぐれている
もう瞬きをしたら彼女の姿は見えなくて…………俺たちは唖然としながら走り続けるのだった
彼女は走っていた。空気抵抗が自分を襲うが、そんなものは彼女にとっては意に返すものではない
走っているとまだ一周目の人達がちらほら見える。
私は自らをさらに加速させて行く…………すると刹那の時間でその人たちを抜かす
「何だ!?この強い風は!?」
「吹き飛ばされちゃう!!」
周りへの影響は凄まじい。空気を響かせる轟音を起こしながらなお加速し続ける
そして宣言通り彼女は十秒でゴールへと到達した
「君は速いね!この学年で最高記録じゃないか?」
と凍夜先生はシェイルに話しかける
「いえ………ただ速いだけでは何の意味もありません。それよりも能力を使ったのかとは聞かないんですね」
「謙虚だなぁいい精神性だ。それと能力を使ったかだっけ?別に疑わないよ。少なくとも私が見ていた限り、使ってはいなさそうだったからね。それに前例は無いわけじゃない。世の中にはバグのような人間も時々生まれるからね」
「……………………………………………なるほど」
シェイルは何か思い返していたような顔をしていた
「休憩していなよ、まだ全員が終わるには時間がかかりそうだ」
それもそうですねと彼女は待つことにした
数分後…………………
「うおおおおおぉおぉおおおお!!!」と言う雄叫びを上げながらこちらに走ってくる男が来た
「彼は………紅蓮君かな?やっぱり彼も速いねー」
その時先生は何かに気付いた様子で目を凝らして
「あれ……………………?なんか彼……背負ってない?」
「背負ってますね。武戦とニーナ・グレイシスを」
数分前……………
シェイルが俺たちを置き去りにした後
「Aランクのやつ………行っちまったな」
「行ってしまいましたね………」
「シェイル速すぎ……」
とそれぞれ三種三様の感想を思わず口に出していた
シェイルはもはや人外………いや人類のバグと言うべきか分からないが身体能力も頭がおかしいようだ。俺たちもハイペースを維持しているが、普通の人間でも短距離全力疾走なら負けるかと言ったところ程度でしか無い
正直これ以上早く走るのは無理だ。多分どこかで呼吸のペースがおかしくなる。
この一周2.5キロのランニングコースは半分ほど森のようになっており、周りには木々が生い茂っている
「周りをよく見るとなかなか壮観だな」
息を深く吸い込み吐き出す。たったこれだけの動作で人の頭は少しクリアになる
さて、最後まで走りきりますか…………と考えていたその時
“ガコン”
何かの音が聞こえた
瞬間俺の頭に危険信号が送られる!
ッッッ!思考加速!!!
そして世界は武戦から見て時が止まった
何だ………何が起きた?何かを踏んだ音がした事は覚えている
少し周りを見渡すか……
この状態の武戦は自分の体も動かせない 世界の速さは変わっていない
「だが目線を動かすことはできる……!」
キョロキョロと周りを見たら、何と横から矢が迫ってきている
「この程度………俺には当たらない!」
走っている状態で俺は前転をし、矢を回避する
「うお!?いきなり前転なんかしてどうした!」
「気を付けろ!なんか罠がある!」
「え!罠ですか!?」
「あぁ……さっき感圧版らしきものを踏んでしまったようで真横から矢が飛んできた」
少し俺が遅れていたので、少し前ら辺にいるニーナ達には当たらなかったようだ
「じゃあシェイルさんは大丈夫なのでしょうか?」
「あんな速いんじゃあこの程度の矢も当たらねえだろ」
と紅蓮は答える
「後続の人たちがここら一帯に来たら危険かもしれない。イレギュラーの可能性もあるからさっさと先生の元へ行って確認してもらうよ」




