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孤独の女王  作者: 冬原光


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26 領主の館へ

ラウンダスの領主の館は立派なものだった。

街の歴史のことを考えれば、決して裕福ではない領土だがそれに見合わないものだと感じる。

護衛なのだろうか。ゴロツキと言って良いような外見の男達が門をうろつき、近づくセラフィーナ達を警戒していた。


セドリックが囁く。

「治安が悪いとはいえ、あんな連中がはびこっているのはきな臭いですね」


「えぇ。……だから、あなたの演技力も重要になってくるわ」


「心配です。演技なんてしたことが無い」


「大丈夫よ。あなたは人好きする雰囲気があるから、いるだけで相手の警戒心が緩む。話は私が主導するから、適当に合わせてくれればいいわ」


二人の存在に気がついたのだろう、男達はセラフィーナを威圧しながら訊ねた。


「ここには何の用だ?お嬢さんが好きそうな甘い物や可愛い洋服なんてないぞ?」


下卑た表情を浮かべて、セラフィーナを侮る。だが、セラフィーナはそれに反応せずに、淡々と応じた。


「そんなものを貰いに来たわけでは無いわ。『人形』の取引に来たのよ」


突然のセラフィーナの豹変にセドリックは驚いたが、なんとか表情には出さないようにする。


『人形』という言葉に反応して、男達は表情を変えた。

セラフィーナはたたみかけて言う。


「前の担当はヘマをして捕まってね。私が代打で来たというわけ。安心して。最低限の引き継ぎはしてるから」


「領主は知っているのか?」


「さぁ?捕まったアホだからそんな連絡する暇も無かったんじゃ無い?でも、この前の人形は使い物にならなくなったから、至急で手配しなければならない。その分お金も弾むから……あなたたちのお小遣いも増えるかもね」


それに男達の空気が変わり、顔を見合わせた。

改めてセラフィーナを見て、そしてそばにいるセドリックも見る。


男達では判断が出来ない。けれど、ここで追い返すこともまた悪い判断に思える。

悩んだ末、領主へその決断を委ねることにした。


男の一人が口を開いた。


「付いてこい」


門が開き、二人は招かれた。





領主の館の中を進むときに、セドリックは前を歩くセラフィーナを困惑しながら見ていた。

自分が知らない情報を突然話し出した。それに、話し方すら変化させている。

まるで誰かを真似ているようあった。他国から来たセラフィーナが、自分も知らない情報を得ていて、それは門番達をだませるほどの説得力のあるものだった。

騎士の自分と違って、王太子妃が触れられる情報は多いだろうが、ラウンダスはおそらく王城にも情報は少ない。


セドリックは改めて疑問に思う。

彼女は一体何者だ?


以前、財務部での騒動も思い出す。セドリックの友人が自ら命を絶った事件だが、それを明るみにしたのはセラフィーナだ。

その時も、長く財務部にいる人間ですら知らなかったことを理路整然と言っていたと聞いている。


他国からやってきて、誰も味方がいない孤独の女王と呼ばれていた人。


その渾名とはかけ離れた情報網を持っていることを感じさえ、セドリックは身震いをした。





「失礼します。ネザリアからの者をお連れしました」


案内された領主の部屋は醜悪と言って良いほど華美な装飾が施された部屋だった。

部屋の奥には、痩せ細って神経質そうな男が座っている。この男が領主なのだろう。ラウンダスの資料を思い出していた。

名前はモーリス・カリエール。ラウンダスの貴族で、10年前から父親の後を継いで領主になったのだという。

モーリスはこちらを見て不審な顔をした。


「今日はネザリアの者との約束はしていないが」


それに、護衛の男は戸惑いの後に警戒心を膨れ上がらせる。そいつが動く前に、セラフィーナが先に口を開いた。


「『人形』の追加発注が出たので、急ぎで来た。謝礼はいつもの3倍出す」


謝礼という言葉に、モーリスは話を進めた。


「いつもの者はどうした?」


「捕った。足は付かないようにしたのでご安心を」


そこまで聞くと、モーリスは座れと促した。


セラフィーナとセドリックで応接スペースの椅子に座る。

モーリスはどこかおぼつかない足取りで向かいに座った。酒でも飲んでいるのか、近くに来るとアルコールの匂いが漂ってくる。

セラフィーナやセドリックは適当に偽名を名乗る。

モーリスは本題を切り出した。


「それで?至急の件ということだが」


セラフィーナは淡々と答える。


「男の人形を求めている。出来れば二人。カリーノの家よ。生意気なのが好み」


歯切れ良く口に出していく。

モーリスはあきれながら言った。


「カリーノに渡すとすぐ壊れるな……最適な人形がいる。男兄弟だ。弟は小心者のようだが、兄は生意気。弟を守るためなら、大男にも立ち向かう」


そのエピソードに、セドリックはアルベルトとダリオのことを思い出していた。

セラフィーナから説明はされなかったが、セドリックでも目の前の会話が『人身売買』に関わるものだと気がついた。

この男は、恥知らずにも自分の領土の子供達を他国に売り払っているのだ。


この、ラウンダスという街でおぞましいことが起こっている。


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