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孤独の女王  作者: 冬原光


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16 はじめての温かい味方

「護衛騎士に名乗りを上げてくれてありがとう。助かったわ」


セラフィーナが微笑むと、セドリックは首を振った。


「いいえ。……セラフィーナ様には恩返しができればと思ったので」


「恩返し?」


「えぇ。財務部での騒ぎを聞きました。自分の友人がそこで働いていて、命を落としたのです」


セドリックは、財務部で出会った死者トニーの友人だった。

騎士の訓練の休憩中、裏庭で同じく息抜きをしているトニーに声をかけたことで、友人になったらしい。互いに苦労をはなし、労っていた。

だが、トニーの様子が少しおかしくなっていった。体調が悪そうで、そのうち裏庭で会うことも少なくなり、そして彼は亡くなってしまった。


「会う時間は少なかったし、裏庭で愚痴を言い合うだけの些細な関係だったけれど、それでもトニーの苦しみをちゃんとわかってあげられなくて、ずっと気にかかっていたんです。だから、財務部でセラフィーナ様が大暴れしたと聞いてスカっとしました」


王太子妃に対してはフランクな言い回しだが、不思議と不敬な印象を与えず、セラフィーナは思わず笑う。


「財務部でのことは関係者以外知らないはずだけれど、なぜあなたがそれを知っているの?」


「俺、顔が広いんです。我がジェゴフ家は勢力争いから離脱して、でも歴史だけはあって堅実な印象はあるので、『安全圏』として、いろんな話が来るんですよね。だから、自然と情報通になってしまうんです」


そう言って、後ろを振り返って目を細めた。その視線の先にはステファンがいた。彼との間に何かあるのだろうか。


だが、まだそれを聞く時ではないだろう。セラフィーナは触れずに王太子妃の宮近くまで送ってもらい別れた。

廊下を歩いているときに付き従っていたソニアが言った。


「生きている人間で、セラフィーナ様の力になる者が現れましたね」


「そういえばそうね。でも、私にとって生きているとか死んでいるとか関係ないのよね。今のところ死んでる人のほうが親切にしてもらっているし」


それにソニアは笑った。






久しぶりの幼なじみのお茶会は、いつもと違って寂しいものだった。

イネスとルネ、そしてステファンが座り、あとは空席。そこはいつもクレマンが座る席だった。

あれからそれぞれ手紙をクレマンに出したが、誰にも返事は来なかった。

彼はひっそりと暮らしているらしい。家主はおらず使用人も少数しかいない状況で家の中もがらんとしているという噂だ。


まるでもう二度とここに戻ってこないようで、寂寥感が三人の心を満たす。

三人の中で、クレマンへの寂しさと同時に、セラフィーナへの疑念と怒りがあった。


「王太子妃が何か動いたらしいが、彼女には味方はいないはずなのにまるで多くの人脈を持っているような行動をしているらしい」


ようやく手に入れたその日の詳細をルネが語る。

フィリップが何か考えながら応えた。


「……味方はいないは違うかもしれない。今度の視察の護衛騎士が必要とのことで、騎士団のところに来たんだ。俺を含めてだれも相手にしなかったんだが、セドリック・ドゥ・ジェゴフが名乗りを上げた」


ルネは驚きながら言う。


「ジェゴフ家の者が?国の中でも歴史はあるが、外の国との交流などはそこまでない家のはず。王太子妃の出身国とも縁は無いはずだが……」


「そのはずだが……家自体の交流はなくとも、セドリック本人が王太子妃と接触していたということはないか?」


「いや、この国に来てから、彼女が王城から出たという話はない」


では一体どうやって?


ルネは背筋に悪寒が走った。彼女をこのまま遠ざけていても何もわからない。

一度彼女と話す必要がある。


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