ランチタイム2
シス先輩たちが席をたったとたん、お兄様がボクをぐっと自分に引き寄せた。
「?お兄様?どうかなさいましたか?」
いつもの優しいお兄様とは違い、どこかピリピリした雰囲気です。
なにかしてしまったのでしょうか?
もしかして、リオと手を繋いでいたから?
飛び級までしたのに同級生に甘えてしまうのはダメだったのかも……。
しょんぼりしながら上目遣いでお兄様の様子を伺えば、ボクのおでこにご自分のおでこをコツンとくっつけられまた。
ひゃあ!近いですっ!お口がくっついてしまいそう!
向こうの方から「きゃあっ」と黄色い悲鳴が聞こえました。
沢山の人が固唾を飲んでボクたちを見守っております。
お兄様はいったい何をされるおつもりなのでしょう?
するとお兄様、その煌めく瞳に懇願をのせ、切ない声でこう訴えられました。
「クリス、お願いだから、君はもう少し自分のことを理解してほしい」
「??自分を?」
お兄様のご希望にはなるべくお応えしたいのですが……どういう意味なのでしょう?
「ボクはクリストファーで、ジルベスターお兄様の弟で、飛び級して今は1年のAクラスにいます?」
首を傾げながら自己紹介してみると、ちょっと困ったように肩を竦められてしまいました。
え?違いましたか?
これ以上なにかあったかなあ……?
「……9歳です?」
「それと、クリスは我がクライス公爵家の愛すべき天使で、我が最愛の弟であり最愛の人でもある」
ああ!そっちでしたか!それなら……
ボクは意気揚々と答えた。
「お兄様はクライス公爵家の誇りで最高に素晴らしい大天使ですし、ボクの最推しで最愛のお兄様でもあります!
あと、学園の憧れの的でもありますし、尊敬すべき先輩でもありますし、えっとえっと、とにかくこの世の全てだと思います!」
あ。ちょっとお兄様の表情がやわらいだ。よかったあ!
……って。
「あ、あれ?なんのお話でしたっけ?お兄様が素晴らしいという……?」
ふう、とため息をついたお兄様。
「クリスが私を褒めてくれたのは嬉しいが、そうではない。
クリスがあまりにも無防備なのが心配なのだ。
君は私にとって何にも代えがたい大切な人なのだぞ?
不用意に人に触れさせてはいけないと教えただろう?
それは同級生だろうと同じこと。
クリスが良き友を得たのは嬉しい。が、エリオスはダメだ。あれは危険だからな?
手を繋ぐのならば私にしなさい。よいか?」
「はい!えへへ。お兄様が手を繋いでくださるの、大好きです!
でも、えと、リオはダメでもティムはいかがでしょうか?ティムなら良いですか?」
「……うむ。ティムは……良いだろう。彼は信頼できそうだ」
「やったあ!ではそうしますね?
あの、えっと、でも先ほどの『お兄様が校内を案内して下さる』というお約束は有効でしょうか?
お兄様のお気に入りの場所とか教えて頂けたらな、って。
あ!お忙しいのならお暇になるまで待ちますので!いつでもかまいません!ご都合のよろしいときに!」
お兄様はとてもお優しいから、ボクのために無理をしてくれそうだもの。
無理はして欲しくないのです。
「ふふふ。クリスのためにならばいくらでも時間をつくろう。クリスより大切なことなどないのだから。
今日の放課後はどうだ?クリスの教室に迎えにいこう。待っていてほしい」
「わあ!よろしいのですか?
とっても嬉しいです!楽しみ!」
お兄様の手をぎゅっと握ってぶんぶんと上下に振っていると、ちょうどみんなが戻ってきました。
「クリス、持ってきたよ!って、何をしているの?」
「!リオ!ありがとう、ボクのぶんまで持ってきてくれて。
あのね、お兄様が放課後に学園の中を案内して下さるのです!えへへへ!お兄様とご一緒できるなんて嬉しいっ!」
にこにことリオに教えると、リオの目がキラリと輝いた。
「ふーん。お兄様が、ね……。
そうだ、兄上、私も校内を案内していただけませんか?ちょうどいいから、ジルベスター様とご一緒させて頂きましょう。
新入生である私たちに、先輩としてアドバイスがあれば教えてください」




