こ、これは……ボクの推し⁈
「えっと、ボクのことはクリスとお呼びください。
公爵さまのことは……えっとお………あのお………お、お義父さまってお呼びしてもよろしいのでしょうか?」
思い切って聞いてみた。
だって同じお家に住むのに、これから家族になるのに「公爵様」っておかしいでしょう?
そうしたら公爵さまの眉がひょいって上がって口元がムズムズ。
お耳が少し赤くなった。
もしかして……照れてる?
じいいいっとお返事を待っていると、返ってきたのは「…く、クリスが良ければ」というお返事だった。
「ボク、公爵さまがよろしければ『お義父さま』って呼びたいです!なので、お義父さまって呼ばせて頂きますね!
えへへ!嬉しいです!」
「うふふふふ。良かったわね、クリス。
ありがとうございます」
お義父さまとのご挨拶はできたけれど、お兄さまは?
ちょうどお義父さまの影になっちゃって、さっきからよく見えないの。
ボクのお兄さまにも、ご挨拶したい。
「えっとお……お、お義兄さまは……?」
おずおずと聞けば、お義父さまの後ろからお義父さまとよく似た、10歳くらい若くした感じの人が現れた。
とたんボクの心臓がぎゅんッと音を立てる。
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。
大人の片手に収まりそうな小さな顔に奇跡的な位置で配置された夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
切れ上がった眦が涼やかでサイコーにクール!!
すうっと通った鼻梁に、蠱惑的な唇。
イケメンではなく美形!ビューティフォー!ワンダフォー!
「ジルベスター・クライスだ。私も君のことをクリスと呼んでもいいだろうか?
私のことはジルと呼んで欲しい。これからは家族になるのだから」
ピッシャーン!!
あああ! この人知ってるう! 悪役令息っ!
思い出した!!この人、ゲームの悪役じゃん!!ゲームよりは若いけれど!
ジルベスター様だあああああ!!!
ボクは前世の記憶を思い出した。