不穏です!
一応お披露目なので、他の人とも交流しなくてはなりません。
30分ほどで衝立を出たボクに、待ち構えていたかのように近づいてきた人が。
お父さまの弟、ホーネット伯爵だ。
その後ろに居るのは……ケイオスだっけ?ボクと同じ年齢だとお兄さまは仰っていたけれど、なんというか、とても同じ年齢には見えません。僕よりも10センチくらいは大きそう。
気付いたお兄さまが小さな声で「気を付けて」とボクにささやき、庇うようにボクと二人の間に立った。
「叔父上、御無沙汰しております。お忙しいでしょうから《《ご無理なさらぬようにとお願い》》申し上げましたのに、わざわざ足を運んでいただいたとは……」
つまりは「一応形式上招待しないわけにはいかなかったが、来るなと言っただろう?どうして来た?」と仰っているのですね。お父さまが言うのならともかく、相手は一応伯爵家当主。公爵家の当主ではなく息子の立場でそんなにはっきり言ってしまって大丈夫なのかな?
要するに「縁が切れても問題ない」「これが公爵家の総意だ」ということなのでしょう。
仲が良くないとは聞いておりましたが、まさかそこまでとは……!
八歳の甥にそこまで言われてしまった伯爵はというと、お兄さまの言葉など聞こえなかったかのように平然と挨拶をしてきました。
「やあ、ジルベスター。久しぶりだね?今日は《《ご招待ありがとう》》。
君の新しい弟を紹介してもらえるかな?私の『新しい甥』になるのだからね?」
言葉だけは友好的なのですが、さすがに口の端がひきつっておりますね。
おまけにその目はボクを値踏みするように狡猾そうに細められている。
「蛇のような視線」ってこんな感じなのではないでしょうか?
ぬるりと絡みつくような嫌な視線に、思わずお兄さまの服の裾をきゅっと握ってしまいました。
「クリスは私たちの家族にはなりましたが、叔父上とは何の関係もございませんよ?あくまでも父上と私と縁を結んだだけですので。そこのところをお間違えなきよう。
クリス、《《今後会うこともないだろう》》が、挨拶はしておこうか?《《一応》》父上の弟にあたる方と、私の従兄弟だ」
「つれないことを言うじゃないか。
やあ、クリスくん。私はクレイグ・ホーネットだ。ジルベスターが言っているのは冗談なのだよ、本気にしないように。親族になったのだから、できれば親しくしたいと思っている。
とはいえ《《君たちがいつまで私の親族でいられるのかは分からない》》のだがね?まあ、《《兄が飽きるまで》》の数年くらいは大丈夫だろう。安心するといい。君が公爵家に居る間は、私のことはクレイグ叔父上と呼んで貰って構わないよ?
これは私の息子でケイオス。君とは同じ年齢のはずだ。学園で机を並べることになるだろうから、よろしく頼む。何かあれば頼るといい。公爵家に取り入ったのだと勘違いされて、学園でいじめにあうといけないからね」
バシバシと行きかう刃にちょっとびっくり。
覚悟はしていましたが、こんなに剥き出しで良いのでしょうか?
普通はもっとオブラートにくるむものなのでは?
「飽きるまで」なんて言い方は、お父さまの誠実さを疑わせる言葉ですよ?
ボクの見た目が大人しそうに見えるからでしょうか。
馬鹿にしてもこいつには分からないだろう、と言わんばかりです。
子供は親に似ると言いますが、ケイオスくんまでこんなことを言い出しました。
「俺はケイオスだ。お前とは同じ年だからな。仲良くしてやってもいいぞ?
お前は小さいからな。俺が色々教えてやってもいい。
ジルに取り入って乗っ取りを考えているのなら無駄だぞ?どうせすぐに親子ともども公爵家を追い出される。
俺はお前が気に入った。だからそうなっても友達でいてやる。感謝しろよ?
その代わり、俺の言うことは絶対だ。いいか?」
話の途中でお兄さまが声をあげそうになったので必死で手を引っ張って止めた。
伯爵の向こうに、こちらをさりげなく気にかけてくれていたらしい三人組の姿も見えます。
アレクさまが口パクで「ダイジョウブカ?」というのでしっかりと頷いておく。
お兄さまも三人も不服そうですが、どうかお許しください。これはボクが売られた喧嘩なので、ボクが戦います!
ボクは無力な五歳児ですが、お兄さまの弟。
公爵家の名を貶めるわけにはまいりませんので!
ボクはお兄さまの後ろから一歩前に出て、あえてにっこりと伯爵に向かって微笑んでみせた。
「初めまして、クレイグ・ホーネット伯爵。お兄さまの仰る通り、ボクとお母さまが縁を結んだのはあくまでもクライス公爵家。伯爵家とは無関係ですので、クレイグ伯爵と呼ばせて頂きます。よろしいでしょうか?
丁寧なごあいさつを頂き、ありがとうございます、クレイグ伯爵。
改めてご挨拶いたします。ボクはクリストファーと申します。
親しくしたいと仰っていただき光栄ではあるのですが、ボクとしてはお父さまとお兄さまの御意向に沿いたいと思いますので……残念です。
それと、ボクの行く末をご心配いただきありがとうございます。ですが、無用な心配です。ボクはお父さまとお兄さまのお気持ちを信じております。毎日溢れるほどの温かな愛情を頂いておりますし、そのお気持ちを疑うことはお父さまやお兄さまに対する侮辱ではないでしょうか?
学園につきましても、『公爵家に取り入ったのだと勘違いされる』ようなことも『いじめ』などもないと思いますよ?みなさまも貴族としての教育を受けていらっしゃいますから当然《《わきまえて》》いらっしゃるでしょう。ですからボクはそのような心配はしておりません。伯爵もどうかご安心ください」
ご拝読頂きありがとうございます♡
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