友好を築けたでしょうか?
アイウ三人組が爆笑しボクが頬を膨らましている、丁度そのタイミングでお兄さまが戻っていらした。
「………何があった?」
クリームがこんもりと乗せられたお皿をテーブルに置き、ボクを庇うようにその腕の中に抱え込むお兄さま。
ギラリとアイクさまたちを睨みつけ、途方もない圧を放ちました。
「……私のクリスが何か致しましたか?」
ずもももも、とお兄さまの背後に髑髏の幻が見えます!危険、危険、危険!激しく点滅するハザードランプの幻も!
一瞬で笑いを引っ込めた三人が慌てて高速で首を振る。
「いやいやいや!誤解だ!何もしていない!」
「あ、ああ!クリスがとても可愛らしかったものですから…」
ここでなぜか勢いづいたウエインさまがイクシスさまの言葉にのっかった。
「そ、そうだ!クリスってすげえ可愛いよなっ!!さすがジルの弟!目もでっかいし、小リスみたいな?」
「《《私のクリス》》が可愛い……ほう?当たり前だろう?それが?」
ここでハッとしたようにボクを背に隠し、三人から距離をとらせた。
クワッとお兄さまの眦が吊り上がる。般若の形相というのがあるのなら、まさしくこの表情!
とってもお怒りになっていらっしゃいます。みなさまボクを褒めて下さったのに、何故⁈
「まさか、貴様ら私のクリスによからぬ想いを……!!」
ひえ!「貴様」とか言ってしまいました!お兄さま、それ、王子ですから!王族ですよ!
しかも「よからぬ想い」って⁈
ブルブルブルブル!!
残像が見えるくらいのスピードで激しく三人が頭を振っている。
あわわわわ!大変ですっ!!
も、もしかして、この場を収められるのはボクしかいない?
「あ、あ、あ、あのお……っ!!!」
勇気をもってお兄さまの服の裾を掴めば、瞬時に背後に背負った髑髏を引っ込めたお兄さま。優しい表情でボクを振り返った。
「どうした?クリス?一人にしてすまなかった。このような獣だとは思ってもおらず……。怖かっただろう?」
ケダモノ!
え?お、お兄さま、さらに何をおっしゃっているのですか⁈
次から次に繰り出される意味不明の言動にボクの頭の中はぐるぐるです……
「え、えっと……えっと………ケ、ケダモノ?ではないと思います……?」
「ん?無理をしなくていい。高位貴族だからといってクリスのようないたいけな子供を傷つけるなど、言語道断!お兄さまが成敗してやるからな?もうこやつらは決してクリスには近づけぬと誓おう!」
放たれたお兄さま砲に、アイクさまたちが遂に死んだような目になってしまわれました。
「あの、あの、何やら誤解があるのではないかと!!
アイクさまたちはとてもお優しくよい方だと思います!イクシスさまとはとても仲良くして頂きましたし!
ボク、お兄さまの素晴らしさを皆様にお教えしていたのです。
お兄さまの笑顔はとっても素敵なので、目にするだけで幸せでいいホルモンがたくさん出て、100日くらい寿命が延びますよって!
大天使もかくやという素晴らしいお兄さまと一緒に居られる幸福を分かって頂きたくって……」
聞いたお兄さまのお顔が少し赤くなり「あれ?」というお顔に。
「は?私の笑顔でじ、寿命が……延びる?……こやつらに何かされたのではなかったのか?」
「?されておりませんよ?あ、されたというか……ボクがあんまりにもお兄さまが好きすぎるので『こんな弟が欲しかった』『お兄さまのこと好きすぎる』と言われただけです」
ボク、初めて見ました。
人間って本当に「やらかした!」ってときには、無表情になるのですね。
一気に無のお顔になったお兄さまが、ギギギと音がしそうな感じで三人を振り返れば、あまりの恐怖に抱き合あって団子状態なっていた三人は、青ざめた顔でお兄さまにぎこぎない笑みを向けた。
「……ご、誤解だと……理解してくれたか?」
この後、お兄さまとボクは三人に平謝り。
あんなに真っ青なお顔になったのに、三人は快くボクたちを許してくれた。
いいひと!これまで心の中で三馬鹿とか呼んでてごめんなさい!
「いやあ、ジルが怒るの初めて見た!ヤバいな。漏らすかと思ったぜ」
「こら、ウエイン!言葉を選べ、クリス君が真似をしたらどうする?」
「あ、ボクはだいじょうぶです!ありがとうございます、アイクさま」
和気あいあいとするボクたちの横で小さくなっているお兄さま。
こんなことを言ってはアレですが、とってもとってもとっても可愛らしいです!
三人にはお兄さまがもってきてくださったクリームをお詫びとしてたくさんケーキに乗せて差し上げました。
「これを乗せるとおいしさがマシマシになりますので!召し上がってみてくださいね!」
「ほう!クリームのケーキの上に、さらに乗せるのか!クリームの相乗効果ということかな?」
「ですです!」
ボクは邪道かもですがチーズケーキにオンしちゃいます!
……ん!合う!チーズケーキにも合いますっ!なんというか……まろやか?
「お兄さま、お兄さまがもってきてくださったクリーム、とっても美味しいです!一口召し上がりますか?」
はい、とスプーンを出せば、嬉しそうにお口を開けてくださいました。
「……うむ。クリスが食べさせてくれると、甘いものでも美味しく感じるな?
ほら、クリスも食べるとよい」
ガトーショコラとクリームをちょうどいいバランスでフォークで掬い取り「さあ」と差し出すお兄さま。
「……ん!おいしいです!さすがお兄さま!絶妙なバランスですね!」
三人がぼそぼそとなにかお話されております。
「これは……まだいいかと思っていたが、すぐにでも婚約解消の根回しに動く方がよさそうだな」
「ジルの後ろに『早く解消しろ』ってデカい文字が見える気がしますもんね……」
「ええ。明らかに牽制されていますよ?早急に『時期を見て婚約解消の予定』だと噂で広めておきましょう」
「みなさま、どうですか?クリーム、あいますでしょう?」
ニコニコと問いかければ、皆さんもニコニコ。
「ああ、とても合うぞ?」
「ええ、クリスくんはとても賢いですね。最高のアイディアです!今後は私もクリームを用意させると致しましょう」
「腹に溜まりそうだし、いいな!」
ボクは三人と友好を築くことに成功!
また一緒に遊びましょうね、とお約束をしたのでした。
良かったあ!
「まだお兄さまの魅力を伝えきっておりませんので、次回続きをお話致しますね!楽しみにしていてください!」
「あ、ああ……た、楽しみにしている」
「ぜひスイーツのお話をお願いしたい」
「……善処するな!」




