アイウとご挨拶
ボクはできるだけキリっとしたお顔でアイクさまに言った。
「あ、あの!お兄さまはボクを心配してくださっただけなのです。すみません。
仲良くして頂けるのはとても嬉しいです!ありがとうございます!
でも、ボクのお兄さまはジルお兄さまだけでいっぱいですので、アイクさまはお兄さまにはできません。ごめんなさい。
お兄さまはジルお兄さまだけなのです。ジル兄さまはとてもお優しくて完璧でまるで天使のように素敵で最高なお兄さまなんです。
ボクの頭を優しく撫でてくださいますし、沢山褒めてくださいます。一緒にお散歩してくれますし、寂しくないように抱っこしてくださるんです。
ね?最高のお兄さまでしょう?
なので、ボクはお兄さまが大好きなのです!」
しーん。
お父さまもお母さまも、宰相様も団長さんも、アイウも、つまりお兄さま以外の全ての人がぽっかーんとしてしまいました。
やっぱり王子様のお気遣いをお断りするなんて失礼でしたでしょうか?
「………えと、失礼でしたでしょうか?申し訳ございません。
お気持ちはとってもうれしいのですけれども、やっぱりボクのお兄さまはジル兄さまだけなのです……ごめんなさい………」
仲良くなれるせっかくのチャンスだったのに。しょんぼり。
でもお兄さまに関してだけはどうしても譲れないのです。
うな垂れるボクの頭をお兄さまが優しく撫でてくれた。
「いや、クリスは悪くない。クリスの言う通り、クリスの兄は私だけなのだから。
ですよね、アイク?!」
最後の言葉の圧がすごいです、お兄さま!庇って下さってありがとうございます。
「あ、ああ!そ、そうだな!
無理を言ってすまなかった。ただ、君と親しくなりたいと思っただけなのだ。
そんな顔をさせてしまった私を許してくれるか?」
アイク王子が焦ったように言ってボクの頭を撫で……ようとしてお兄さまに手をつかまれた。
「不用意に触れないでください。クリスが驚きますし、クリスは私の弟ですので」
先程からずっとお兄さまはアイクさまからボクを護ってくださっている。
本当はボクがお護りするはずだったのに。
あわてて今度はボクがお兄さまを庇おうと口を開きかけたら、お父さまが「ポン」とお兄さまの肩を叩いた。
「ジルベスター。いいすぎだ。
しかし、殿下、息子の言うようにあまり不用意に触れるのは如何なものかと……」
息子を注意する、とみせかけてお兄さまと全く同じことを言うお父さまに、宰相さまと団長さんが笑い出しました。
「いや、セルゲイ……お前も変わったなあ……」
「すっかり親バカじゃないか!ははは!こんな可愛い息子ならさもあらん!」
意外といい雰囲気?お父様とこの方たちも仲良しなのでしょうか?
お父さま、お兄さま、アイクさまのお顔をいったりきたりして話の行方を伺っていると、アイク王子の方が折れてくださいました。
「すまない。私が悪かった。出会ったばかりで不用意だった。
あらためて、少し向こうで子供同士で友好を深めたいのだが……それくらいはいいだろう?」
首を傾げてボクのお返事を待ってくださっております。
お兄さまがまた拒否する前に、ボクは慌ててこくこくと頷いた。
だって仲良し大作戦しなきゃですし!
「はい!えっと、あちらにケーキがあるのですが。よろしければ一緒にいかがでしょう?
今日のケーキは、お兄さまのお好きな甘さ控えめのものもありますし、ボクの大好きなチーズケーキもあるのです。もちろんイチゴのケーキもあります!
何がお好きですか?
とっても美味しいのでぜひ召し上がっていただきたいです」
美味しいは正義です。美味しいものを一緒に食べたら仲良くなれるはず。
ボクの言葉にイクシスさまがすぐ反応した。甘いものがお好きなのかな?
「それはいいね。そうしよう。
殿下もそれでいいですよね?
クリストファーくん、私はイクシス。君のお兄さまの同級生で、アイク殿下の側近だ。シスでいい。よろしく」
「ボクはクリストファーです。クリスとお呼びください。よろしくお願いいたします」
するとウエインもひょいっと顔をボクに近づけた。
「俺はウエイン。父は騎士団長をしている。よろしくな!俺のことは好きに呼んでいいから、俺もクリスって呼んでいいか?」
「は、はい!えと、ウエインさま、ボクはクリストファーですが、クリスでいいです。よろしくお願いいたします!」
「あはは!よろしく!」
「クリス?無理をしなくて良いのだぞ?
知らない年長者に囲まれていては落ち着かないだろう?
みなの案内だけすませ、あとは私と2人でゆっくり食べれば良い。アイクの世話はイクシスがするだろう。問題ない」




