ボクのご挨拶
「クリストファーは本日が五歳のお披露目となります。とても優秀で、私と共に同じ授業を受けられるほどなのですよ?
兄の私を支えるのだと言って、自ら進んで修練に励んでもおります。
このように健気で愛らしい弟を持てたことは、私の人生最大の僥倖。
私が聡明で素晴らしい母を得たのも、最愛のクリスと出会えたのも、父上のおかげです。ありがとうございます、父上」
「ははは!私はただ愛する人と運よく巡り合えたというだけなのだがね?
みな、見てのとおり、ジルベスターは新たな母を敬愛し、末息子を溺愛しているのだ。
こんなに幸せそうな息子を見ることができるのも、妻とクリスのお陰なのだ」
「ええ。クリスと出会ってから、私は毎日神に感謝しております」
雄弁にお母さまとボクをべた褒めしだしたお父さまとお兄さまに、今度は会場がきょとんを通り越して虚無になっております。
自分が耳にした言葉、目にしているもの(デレデレするお兄さま)が信じられない様子。
恐らく攻略対象のアイウたちなのだと思われるキラキラした3人組などは、あんぐりとお口を開けてしまっている。
「さあ、クリス、おいで。皆に挨拶を」
こ、ここで?!
べた褒めされた後なだけに、みんなのお顔が「この子のどこが公爵家の二人をこんなにデレデレにしたんだ?」「よほど特別な子供なのだろう」と言っている、ように見える。
ものすごおく挨拶しにくいです!逆に!
うう……。
でもでも、ボクはやるべきことをやります!
ここでひるんでいるようでは、攻略対象たちを味方にはできませんから!
ボクは意を決して一歩前に出た。
その前にお兄さまの手を少しだけぎゅっとさせ勇気を頂きました。それくらいは許して欲しいところ。
まずは、ピタリと姿勢を正し、ボウ・アンド・スクレープ。
そのまま数秒キープしたのち、スッと姿勢を正し、顔をあげて「にこっ」
「お初にお目にかかります。クライス公爵家が次男となりました、クリストファーと申します。
本日はわたしの5歳のお披露目にお越しいただき感謝申し上げます。
えと、父上とお兄さまはあのように仰ってくださいましたが、神様に感謝しているのは私の方なのです。
とてもカッコよい父上と、カッコよくてお優しくてとても賢くて最高のお兄さまという素晴らしい方々が家族だという幸せに毎日感謝しております。
お兄さまと出会いお兄さまをお護りするために神さまが私をここに導いてくださったのだと思っております」
ここでみんなに見せるようにまだ小さな手を大きく広げて見せる。
「でも、残念なことに、私の手はまだまだとても小さいのです。力も、知識も足りません。なのでこれから沢山お勉強をして、鍛錬を重ね、お兄さまをお護りできるように頑張ります!
どうか皆様にお力をお貸しいただければ幸いです」
最後にしっかりと頭を下げてお願いすれば、大きな拍手で迎えられました。
よ、よかったあ!
お兄さまもにっこりしながら「とても良い挨拶だった」と褒めてくださいました。えへへへ。うれしいな。
お父さまも「とてもかわ……カッコいい挨拶だったぞ?よくやったな」と言ってくださった。
一瞬可愛いと言われるのかと思ってびっくりしてしまいました。
だって、ブリードさんと沢山練習しましたし、最高にカッコいいご挨拶ができたつもりなのです!
練習では何度も噛んでしまいましたが、一度も噛まずに言えたので満足です!
ご挨拶が終わったら、フリータイム。
いわゆる「個別の挨拶&ご歓談」の時間。
お父さまとお母さまは次々に挨拶に訪れる大人の方々のご対応です。
最初の高位貴族の皆様には、お顔を覚えるためにボクも一緒にご挨拶。
一番最初にいらしたのは、もちろんお兄さまの婚約者、アイク王子!
知ってた!だって最高位ですものね、王子さまって。
そしてその後ろには二組の親子。
おそらく宰相のアーシェント公爵とその息子イクシス、騎士団長のバインド侯爵とその息子のウエインが続きます。
こちらの方々はアイク王子のお目付け役&護衛を兼ねていらっしゃるもよう。
片眼鏡をされた、ストレートのいわゆる黒髪ワンレンボブのクールそうな大人が恐らく宰相様、カール赤髪短髪の筋骨隆々とした大人がたぶん騎士団長で間違いはないだろうと思います。
ちなみに、ボクが気になるのはもちろん息子の方です。お兄さまと同学年でお兄さまの幼馴染でもある。そしてゲームではお兄さまを裏切り断罪する三馬鹿!
アイク王子はいわゆる王子様。少し毛先に癖のある金髪、海のように綺麗な碧眼の持ち主。ゲームの中では文武両道の完璧な王子様。本来なら人当たりもよく、正義感に溢れた人物。
ピンク頭にころっと騙されちゃうのですけれどね!
一方イクシスは宰相である父親の影響か、非常に理知的。腰まであるサラサラの黒髪を肩のところでまとめ、8歳児だというのにとても落ち着いております。
意外と面倒見がよく、文句を言いながらも主人公に頼られると悪い気はしない。そんなお方。
自分が間違うことはないと思い込んでいるので、お兄さまを悪と決めたら一直線。盲目的な人でもある。
最後のウエインは……お分かりですね。脳筋担当です。ワンコ属性で、細かいことは考えません。言われたことをそのまんま信じてしまうタイプ。主人公の嘘を信じてお兄さまをディスりまくります。おバカ!
色々とこの三人には思うところはあるのですが、今この段階での三人はまだお兄さまの敵ではありません。
ゲームの開始、つまりピンク頭が来るまでは、「お兄さまとラブラブの婚約者」とはいえませんでしたが、それなりに友人としては上手くやっていたのです。一応婚約者ですし、幼馴染でもあるので、友好的といえば友好的?だったのです。
なので記憶を取り戻した最初はこの三人を敵だと思っていたのですが、よくよく考えた末に考えを変えました。
ボクはこの三人を味方にして、ピンク頭に出会うまでに「あざとさとは何か」をしっかりと教え込み、騙されないように教育するつもりなのです。
よおーっし!やってやりましょう!
お兄さま、ボク、がんばりますね!




