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キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!  作者: をち。
幼年期

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こんにちは、クリスです

お客様の入場も終わり、ついに来るべき時が来た。

そう、ボクの五歳のお披露目&お母さまとボクの紹介です!

ここではじめてボクたちが「クライス公爵家の家族となった」と正式に公表されるのだ。

ああ!緊張するう!


ホールには既に多くの人が集まり、今か今かとボクたちの登場を待ち構えております。

ボクは緊張をなんとかしようと必死で「じゃがいも、かぼちゃ、にんじん……」といわゆる「お客様は野菜です」という暗示を自分にかけ続けた。

それだけでも足りなくて、手のひらに「人、人、人」と書いて飲み込む。

迷信でもなんでもいいのです。とにかくやれることは全部やるの!


「それは何の意味が?」


掌に文字を書いてごっくんするのを不思議そうに見つめるお兄さま。

ブリードさんも「おかしなことをしておるのう」と首を傾げております。


「えと、これは、手のひらに人っていう字を書いてですね。ごっくんとすると、なんていうか『人よりもボクは強いんだぞ』って自分に暗示をかけて?緊張を和らげる作用があるのです。たぶん」


確かそんなふうな理由だったと思う。よく覚えておりませんが。

お兄さまは目を丸くして「クリスは面白いことを思いつくのだなあ」と感心しきり。

いえ、ボクが思いついたわけではないのです。でも説明が難しいので曖昧に「えへへ」と笑ってごまかすボク。




そんなボクの背にそっとお父さまが触れた。


「さあ、行くぞクリス。私の後に続きなさい。いいか、ジルとは離れないようにするのだぞ?」


ポンポンと励ますように頭を撫で。




さあ入場です。


二階の突きあたりの扉を開けると、二階のホールに続く階段となっている。

ボクたちはその階段からそのままホールに入場となります。


パンパンパン。


先に入ったジェームズさん。手を叩いて皆の注意を集めると、恭しくお父さまの入場を知らせた。


「皆さま、お待たせいたしました。

クライス公爵家当主、セブランクライス様、クリスティーナ様、ジルベスター様、クリストファー様でございます」


わあああああ!

一瞬の静寂、そして歓声と拍手。


一歩一歩ゆっくりと階段を降りる間、値踏みするような視線がボクとお母さまに注がれた。

こそこそと隣の人に意地悪な表情で耳打ちしている人もいる。

よし、顔をよく覚えておこう!あの人は良くない人!


お兄さまが励ますようにボクの手をそっと握ってエスコートしてくださいました。

大丈夫ですよ、お兄さま!ボク、やる気にみちておりますから!


少し広めの台みたいになった下の段までくるとお父さまは歩みを止め、片手を軽く上げて皆を静かにさせた。


「よく来てくださいました。

今日は新たに私の末の息子となったクリスの五歳のお披露目のため皆様にお集まりいただきました。


そう、我が家にクリスティーナという素晴らしい妻、そしてクリストファーという可愛い息子を迎えることができたのです。

本日は二人のご紹介もかねております」


クリスティーナ、というところでお父さまは目を優しく細めてお母さまに手を伸ばす。

お母さまは笑顔でその手をとり、少し前にでて綺麗に礼。

クリスというところではお兄さまがボクに同じことをしてくださったので、ボクもできるだけ綺麗に礼!

そう、あのボウアンドです!練習したかいがあって完璧にできました!


「この二人は我が家の宝。私も息子のジルベスターも、クリスティーナとクリストファーと出会えたのはこの上ない幸運であったと毎日神に感謝しております」


無表情、クールと名高いお父さまですが、ここで「にっこり」と笑顔を浮かべて見せる。

めったに笑顔を見せてこなかっただけあり、効果は抜群!

政略婚だの、便宜上の妻だの噂していた人たちも「え?」と固まった。

そう。ちゃんと愛し合って結婚したのですよ?

この笑顔を見たらお分かりですよね?とっても仲良しなふたりなのです!


ここでお母さまがお父さまにさりげなく許可を求めた。

親し気にお父さまの腕に手をかけ、首を傾げて見せる。


「あなた、私からも皆様にご挨拶させて頂いてもよろしいでしょうか?」


お父さまはそんなお母さまを見つめて優しく目を細めた。


「もちろん。君のよいように」


では、と改めて皆に向き合ったお母さま。スカートを摘まんで美しくも完璧な礼を再度してみせます。


「皆さま、改めてご挨拶させて頂きます。クリスティーナ・クライスでございます。

ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、わたくしは3年前に夫であるダリウス・グリフェウスを亡くしました。

女の身でありながら突然伯爵家当主となり、弟であるサイモンをグリフェウス伯爵家当主代理とし、その助けを借りて必死で領を収めてまいりました。

クリストファーが伯爵家を継ぐ日まで再婚するつもりは無かったのですが………。

素晴らしい夫、セブラン様が私の心を溶かしてくださったのです」


お父さまを見上げ少し頬を染めるお母さまの瞳はキラキラと輝いていた。

愛と尊敬、感謝、信頼……。

この顔を見てお母さまの心を疑う人なんていないのでは?

だってほら。

女性たちは物語のようなお話に「ほう……」と胸の前に手を組んで感動しているみたいだし、男性たちはお母さまの初々しい表情に見惚れているみたい。


「伯爵家は弟であるサイモンに任せて、わたくしもクリストファーもこの公爵家のため身をささげる覚悟です。みなさまどうぞお力をお貸しくださいませ」


そう言って恥ずかしそうに微笑んで挨拶をしめれば、会場の空気が一気にお母さまに肯定的なものに変わっていた。

好意的な笑みと拍手で迎えられたお母様に、さっき悪口を言っていた人たちが悔しそうにお母さまを睨んでいる。

ふんっだ!

見ました?ちゃんと見ました?

この二人は政略婚なんかじゃないのですからね!ちゃんとラブラブなの!


ここでお兄さまがボクに向かって「私たちの番だね?」と挑戦的な笑みを浮かべました。

了解です!

ボクもパチパチを瞬きで「大丈夫」だと伝える。


「では、私の可愛い弟、クリストファーをご紹介いたしましょう」






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