大勢の人!
エントランスには続々と馬車が。
入り口で、シェパードさんが招待状を確認しております。
ボクたちの入場はみんなが揃ってから。
なのでどんな人が来ているのか、カーテンの影からこっそりチェック中なのです。
「ああ。来たか。
クリス、あそこの、肩までの銀髪の細身の男性と、その横の短髪の子供が見えるかい?
あれが私の叔父クレイグ・ホーネット伯爵と従兄弟のケイオスだ。ケイオスはクリスと同じ年齢なのだ。
そしてケイオスの後ろにいる扇を持った赤茶の髪の女性がケイティア。ホーネット伯爵夫人だ」
伯爵は……容貌は少しお父さまと似ている。でも、なんというか……目つきと身に纏う空気が全然違います。
斜に構えているというか、世の中を皮肉気に見ているというか、そんな雰囲気。
お兄さまの従兄弟のケイオスさまは、ボクと同じ年齢のはずなのに、とっても強そう。そして生意気そうです。
こちらはケイティアさまに似たのか、燃えるような赤い髪を短めにカットしております。
「確か……お父さまとあまり仲がよろしくないのでしたよね?」
「そうだ。きっとクリスにも絡んでくるだろう。なるべく関わらないように。
叔父は父上の再婚を快く思っていない。
私がまだ殿下と婚約しているのを知っているだろう?
私を公爵家から外に出し、夫人の妹を父上の後添えにして子を産ませ、それを跡継ぎとして公爵家を乗っ取るつもりだったのだ」
「ええー?!確かにお兄さまが王城に入ればそうなりますが……。そんな勝手な……!」
「うむ。そもそも夫人とその妹はよく似ていてな?全く父上の好みではないのだ」
「ああ………わかりみです」
ケイティアさまは、例えるとしたら真っ赤な薔薇。今日も子供連れのご夫人としては少し派手な深紅の衣装を身に纏って、まるで「私が主役よ」と言わんばかり。お化粧も派手。唇を真っ赤に染めております。
おまけに大きめのイヤリング、宝石がいっぱいついたネックレス、などなど。これでもかっていうくらいに宝飾品を身に着けていらっしゃるのです。なんだかお金使いも荒そう。
一方お母さまは、朝露を乗せた初々しい白薔薇。派手ではないけれど、清楚で清らかな美しさを誇っている。
お母さまを選んだということは、お父さまは「美人系」ではなく「可愛らしい系」がお好みなのだと思うの。
だったら、ケイティアさまとそっくりの妹さんは好みではないに違いありません。
「えっと……なんだか怖そうなので近寄らないようにします」
「賢明だ」
「ケイオスさま?くん?はどうですか?」
「ケイオスの方は……私をライバル視している。
あと、少々乱暴でな。母御の影響なのだろう、身分が下の者を馬鹿にするところがあるのだ」
「だったらボクは大丈夫でしょうか?もともとはケイオスさまと同じ伯爵家でしたし?」
良かった、と胸を撫で下ろせば、苦笑しながら首を振られた。
「彼は叔父にいろいろ吹き込まれ『父は公爵家の生まれなのだから』と同格の伯爵家をも下に見るきらいがあるのだ。
身分よりもそれぞれの能力や資質を見るべきだというのに」
「…………ボク、イジメられますか?」
「不快なことは言われるだろう。
クリス、彼らが何を言おうと気にしなくていい。私と父上たちの言うことだけ信じていればよいのだ。分かったかい?」
「はい。頑張ります!」
他にも、いわゆるケイティアさまと叔父様の派閥というか仲良し?子分?の方々には要注意。
皆さん同じような雰囲気(派手で、ちょっと意地悪そう)なのでとても分かりやすい。
たぶんボクが普通の五歳だったら、怯えてしまったり、気後れしてしまったと思います。
でもボクには前世の記憶(一部だけれど)もありますし、お兄さまを護るという使命もある。
つまり、ただの五歳とはわけが違うのだ!
ゲームで主人公が「あざと可愛さ」で周りを攻略したように、ボクもがんばってみんなを攻略してみせます!
まずは攻略対象である殿下とそのお友達から。
黙ったまま胸の中で決意を固めていると、お兄さまが心配そうな表情でボクを覗き込んでこられました。
「クリス?大丈夫か?怖くなってしまったのか?
大丈夫だ。クリスには私も、父上も母上も、そして邸の皆がついている。ブリードさまもいる。
なにかあれば必ず助ける。だから私を信じて欲しい」
そっと手を握って額にキスを落とすお兄さま。
「ひゃああ!だ、ダメですっ!ボクのおでこ、汗をかいておりますのでっ」
あわてて両手で額をガードしたら、クスクスと笑われてしまった。
「ふふふ。お護り代わりだ。元気は出たか?」
「ううーーっ……。出ましたけれど!」
その笑顔、反則だと思います。




