お披露目に向けて
「いち、にー、さん、しー」
せっせと腹筋するボク。カウントはブリードさんです。
ブリードさんってばとても優秀な相棒で、ボクがプルプルしてくるタイミングで
「さすがはクリス!兄もクリスの成長に感動するのではないか?」
「姿勢が良くなってきたな。この分ならサフィにも並ぶ体幹が身に付くのではないか?」
というふうにボクのやる気がアップする言葉をかけてくれるの。
最初は10回しかできなかった腹筋も今はもう20回もできるし、背筋はもっとたくさんできるようになりました!
ありがとう、ブリードさん!
こうしてせっせと頑張ったおかげで、ボクの立ち姿は完璧に!
ボウ・アンド・スクレープも、片手を横に伸ばし腰を曲げた苦しい姿勢を長い間綺麗にキープし続けられるようになりました!
お披露目会前日。
お父さまやお母さま、そしてお兄さまを前にお披露目会のご挨拶とお辞儀をご披露すれば
「クリス!素晴らしいぞ!王族にも劣らぬ完璧な所作だ!」
お父さまがボクをべた褒め。
お兄さまはひたすら「うむ!うむ!頑張ったのだな、クリス……」とボクを抱きしめボクの頭を撫で続けている。
お母さまとマーシャは「まあ、立派になって……」って涙ぐんでおります。
ジェームズさんや使用人さんたちもニコニコしながら拍手をしてくれました。
やったあ!頑張ってきた甲斐がありました!
「これならお披露目でも恥ずかしくありませんか?ボク、お兄さまの弟としてふさわしいと思って頂けるでしょうか?」
一応最後の確認をするボク。
「当たり前だ。私のお披露目よりも上手にできているぞ?さすがはクリスだ」
感極まったお兄さまに額と左右の頬に3連続ちゅうをされ、久しぶりの「キョウキュウカタ」でボガンと真っ赤になったのでした。
そんなこんなでお披露目会です。
お招きしているのは、公爵家の親族の皆さんと、高位貴族ご夫妻、お友達候補としてそのご子息ご令嬢、子爵家と男爵家のご当主。
このあたりが今後ボクたちがお付き合いしていく方々となります。
パーティーなんかだと子爵家男爵家のご子息ご令嬢も参加されるのですが、今回は「お披露目」なのでご当主だけ。「後日改めてお友達候補を招き子供だけのお茶会をするからね」だそうです。
それでも、100人くらいはいるのではないでしょうか?
リストを見ながらお兄さまが「要注意の相手」の説明をしてくださいました。
「基本的にはクリスの側には必ず私がついている。しかし、多少は席を外すこともあるかもしれない。その間にこの相手が来たら、とにかく何も言わず曖昧な笑みを浮かべてやり過ごしていて欲しい」
その相手は……なんとお父さまの弟さんご家族。クレイグ・ホーネット伯爵家でした。
敵は身の内にあり、ということなのですね!なんてこと!
クレイグさまはお父さまの実の弟で、ホーネット伯爵家の婿養子となっているのだそうです。
二人きりのお父さまの御兄弟なのですが、お父さまやお兄さまとの仲はあまり良くない。
それはお祖父さまのせいで、お祖父さまはご存命の時に後継である優秀なお父さまとクレイグさまを比較、クレイグさまに冷たく当たっていたのですって。
お父さまもそんな弟を気にかけ、できる範囲で庇ったり気にかけてはいたのですが、何しろお父さまも忙しすぎたの。
お祖父さまはお父さまに特に優しくしていたわけではなく、実際にはひたすら礼節を叩き込み、躾と称して体罰も行い、勉強づけにされていたそうなのです。(これはお兄さまも幼い頃同じ目にあっていたのだそうで、とても実感のこもった口調でした)
それでも何の期待もされず、放置されていたクレイグさまからすると羨ましく見えていたみたい。
「兄上はいいよな」「少し早く生まれただけで贔屓されている」のだとお父さまを憎むようになってしまった。
お祖父さまが他界した後も、兄弟の溝はなかなか埋まらず、今でも公式の場で顔を合わせる程度。普段は疎遠になっているのだそうです。
「叔父からすると、お母さまもクリスも格好のターゲットなのだ。あらぬ憶測を口にしてクリスを貶めようとするだろう。だが、彼のいうことは信じるな。私の言葉だけを信じて欲しい。
彼が何を言おうと、分からぬふりで受け流していてほしい。すぐに私が駆けつけるから」
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