ランチ!
「では、お家に帰る……前にお食事にしませんか?
せっかくランチを持ってきていただきましたし。準備もしていただいているので……」
せっかくのピクニックなんだもの。
お外でランチ!絶対にしたいです!!
「ブリードさんもご一緒に!」
ランチ、と聞いてブリードさんがキラキラと小さな目を輝かせた。
「おお!食事を持ってきておったのか!我もよいのか?それは嬉しい!
人間の食事は久方ぶりだ!」
ぴょい、と石から飛び降りて大喜びでよちよちとボクの手に乗る。
「さあ!ランチにしようぞ!」
「うふふふ!ええ、ランチにしましょう!」
シートの上に並べられていたのは……
各種サンドイッチ、ホウレンソウのキッシュ、プチトマトなどの野菜を食べやすいようピックに刺したもの、
それとポットに入った紅茶、アップルパイだった。
サンドイッチはスモークサーモン、チーズ、アボカド、レタスの挟んであるもの、カリカリベーコンと卵、トマトとレタスが挟んであるものと2種類あった。
どちらもボクの大好物!
「わあああ!とっても、とっても素敵ですっ!美味しそう!ボクの好きなものばかりですっ!!」
きっと初めてのピクニックだからとわざわざボクが好きなものを用意してくれたに違いない。
そう、公爵家の料理人のホワードさんは、見た目はいかつくて怖いけれど実はとっても優しいのです。
ボクとホワードさんは仲良し。
いつかお兄さまに何かお作りしたいと思って、お願いしてお料理するところを見学させてもらっているのだけれど、ボクの顔をみるたびにちょいっとボクのお口に小さなおやつを入れてくれるのです。
「ブリードさん!あのね、あのね、このサンドイッチはどちらもボクのおススメなのです!
ブリードさんはお魚とお肉、どちらがお好きですか?
あまり量が食べられないのでしたら、ボクと半分ずつにして両方召し上がってみてください!」
大喜びのボクに、みんながほのぼのとした視線を向けてきますが、だって仕方がないのです。
大好きなお兄さまと、優しい皆さんと、とても素敵な場所で、しかも可愛らしいブリードさんという新しい家族まで一緒に、大好きなものを食べるのですよ?
興奮しないほうがおかしくない?
さっそくシートの上に座ろうとして……ひょいっと横から伸びた手により、お兄さまのお膝の上に座らされてしまいました。
「さあ、クリス。一緒に食べよう?」
「は、はいいい!!」
ひゃあああ!
嬉しいのですけれど、照れてしまいます。
ボクのドキドキ、お兄さまに伝わってしまわないかな?大丈夫?
赤い顔をごまかすように、ブリードさんに手を伸ばした。
「じゃ、じゃあ、ブリードさんはここに……」
結果。シートの上に座るお兄さま、のお膝の上に座るボク、のお膝の上に座る?ブリードさん。
その向かいにマーシャとルナさんとレインさんが三人並んで座るというちょっと不思議な配置になりました。
ちなみにセルシオさんと、ブリックさんは両サイドで警護ですって。
ルナさんとレインさんが食べ終わったら交代します。
お膝の上のボクにジル兄さまが甘やかな声で問う。
「クリス、何がいい?」
「えっと……ではスモークサーモンを……」
「分かった」
スモークサーモンのサンドイッチを手に取り、半分にちぎってブリードさんの小さなお手手に渡すお兄さま。
ブリードさんはその小さなお手手でしっかりとサンドイッチを掴み、大きなお口でちまちまと食べ始めた。
「うまい!」と呟きながらせっせせっせとお口を動かしている。
か、かわいい……!
残りの半分を受け取ろうと手をのばせば……
「ほら、お口を開けなさい」
ほほ笑みを浮かべ、当たり前のようにボクに「あーん」しようとするお兄さま。
お、お膝の上での「あーん」はさすがに甘やかしが過ぎるのでは?
ちらりと上目づかいでお兄さまを見上げれば、目を柔らかく細め「どうした?」
あ゛ーーー!
あ゛ーーーーー!尊いっ!!
くう、っと胸を押さえるボクに、マーシャが困ったように眉尻を下げ、ため息を一つ。
「ジルベール様。クリス様はもうおひとりで食べられますよ?あまり甘やかさないでくださいませ」
うんうん、と頷くルナさん。
「おっしゃる通りです。甘やかしすぎはよくありません」
でもお兄さまは平気。しれっとこう返したのでした。
「クリスなのだからよいだろう」
ボクの名前が甘やかしの免罪符として使われております。
なんて斬新なのでしょう。さすがはお兄さまです!
これにはさすがに言葉を失うふたり。
ごめんなさい。お兄さまがボクに甘くて。
でもお兄さまなので。お兄さまが正義なのです。
なのでボクにはこれをお断りする選択肢はありません。
「ほら、お口を開けて?」
「……あーん」
ぱくり。
「!お、おいしいれふっ!もぐもぐ。ぱんがとっても柔らかくって、スモークサーモンの塩気とアボカドのまろやかなコクがマッチして、レタスがシャキシャキしています!」
「ふふふ。そうか。良かった」
口元を緩ませたお兄さま、そのまま細くしなやかな指先をボクの頬にのばし……
「ついているぞ?」
ボクの頬に着いたマヨをぬぐって舐めましたーーー!
あまーい!!甘いですううう、お兄さまっ!!
キュンキュン通り越してギュンギュンする胸を押さえ、真っ赤になって耐えるボク。
「?どうした?」
ああっ!そんなに麗しのご尊顔を近づけないでください、お兄さまっ!もう少し、もう少しお待ちを!この心臓をなんとか宥めますのでっ!
「ジルベスター様、その辺で。クリス様がまた倒れてしまいますから」
「そうです。キョウキュウカタという例の発作なのでは?」
マーシャとルナさんがお兄さまを諫めている。
フォローありがとうございます。
いつの間にか食べ終わっていたブリードさんがしみじみと言った。
「……お主、愛されておるのう……」
ええ!ありがたいことに、分不相応なくらいに!




