ブリードさん、家族になる
話し合いの結果、魔法は習わないけれど、ブリードさんはボクのお家で一緒に暮らすこととなりました。
ブリードさんが先生になって、歴史やサフィラスさまについてなど、ボクの知りたいことを色々教えてくれるのですって。
見た目もとってもお可愛らしいし、なにしろ知識の宝庫。ご一緒できてとても嬉しい。
一応「水守さま」だとか、「伝説のブリザードドラゴン」だということは、お義父さまとお母さま以外には秘密にすることになりました。
魔法が使えるということもだけれど、伝説のドラゴンが家にいるだなんて、誰かに知られたら大変なことになるものね。
マーシャたちも「絶対に言いません」と誓ってくれた。
「ブリードさんのお部屋はどうしましょう。水トカゲなのだからやはりお水があるところ?
お庭の池とか?でもそうしたらお話しにくいでしょうか?
だったら、いっそボクのお部屋のお風呂場にブリードさんのお部屋を作ってそこに住んでいただくのはどうでしょう?」
でもそれだとボクのお風呂が……。毎日シャワーだけというのも、前世日本人としては切ない。
もうひとつ作ってもらうのも申し訳ないし……。
うーんと考えていたら、お兄さまが当たり前のようにこう言ってくださった。
「ならばクリスは私の部屋の浴室を使えばいい」
「え、ええ?それはいくらなんでも申し訳なさすぎます……!ボク、お兄さまのお邪魔になってしまいませんか?」
「問題ない。すぐ隣なのだし、時間が合うのならば一緒に入ればよい。クリスが良いのならば、この兄が身体を洗ってやろう。ふふふ。家族という感じがしてよいのではないか?」
ええええ?推しとお風呂?!
ぼわわわん、とお兄さまのきっとミケランジェロのような素晴らしいお姿が頭に浮かびそうになり、慌てて「不敬!!ダメ!」と手で目の前を払う。
「何をしているのだ、クリス?」
「い、いえ、ちょっと自戒を……。
え、えっと、ではブリードさんはボクのお風呂に住んでいただき、ボクのお風呂は、申し訳ないのですがお兄さまのお部屋でお借りしてもよろしいですか?お邪魔じゃないお時間を選びますので……さすがに一緒に入るのは無理です。ボク、お兄さまの横に立てる自信がありませんっ。
ボクのお腹、全く割れていないし、ちょっとだけぽこりなのです。
腕も足も、頑張って鍛えてもほとんど筋肉ありませんし……
こんな貧弱な身体ではとても横に並び立つなど……!!」
ぶふーーっ、とマーシャが吹きだし、ルナさんとセルゲイさんがそっと目をそらして震えだした。
この三人にはお風呂に入れて頂いたことがあるから、ボクの裸を思い出したのだと思う。
でも、でも、だからって!失礼ですよっ!!
ちょっと涙目になるボク。
レインさんとブリックさんが取り繕うように
「ジ、ジルベール様は別格ですから!そもそも比べる相手が悪いっ!」
「大丈夫!クリス様も十分、あの……………まだ成長されますよ!!」
しょぼん。
全くフォローになっておりません……。
お兄さま、お願いですのでボクのお腹をじいっと見つめるのをやめてください。いたたまれません……。
ブリードさんが優しく言ってくれた。
「クリス。我と共に入ればよいではないか。風呂の間は部屋で待つ。それだけのことよ」
ブリードさん!!
さすがは年の功。お優しいお心遣い、ありがとうございます。
結局、ボクがお風呂の間はブリードさんにはお部屋で待っていてもらう。
借りたいときにはいつでもお兄さまのお風呂をお借りしてもよい。
ということになりました。
さて、おうちにご一緒していただくブリードさんなのですが、対外的には、とても申し訳ないのだけれど「クリスが見つけてきて可愛がっている珍しいペット」だということになる。
お部屋は決まったからあとは食べるもの。
水トカゲは雑食なのでなんでも食べられるのですって。
でもブリードさんは甘いものがお好きだそうで「ずっと食べておらぬから、差し入れてくれると嬉しい」って照れ照れお願いされました。
うふふ。可愛い!
お肉も大好物なのだけれど、小さくなってからあまり量が食べられないと仰るので、ボクのお食事を分けて差し上げればちょうどいいのかも。
こうしてブリードさんの衣食住(お洋服は必要ないから、食住?)が決まったところで。