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ブリードさん、爆笑です

「わははははは!」


大興奮のボクに、ブリードさんはいきなり笑い出した。

可愛いお顔なのに大きなお口がパカッと開いて。なんだかとってもシュールな光景に思わず見入ってしまう。


言葉は分からなくてもブリードさんが大笑いしているのは分かったようで、護衛のみんなもブリードさんを凝視。

ルナさんのこの一言にみんなの気持ちは集約されていた。


「……トカゲって笑うのですね……」


ねー!面白ければ笑うんだろうけど、こんなに大口を開けて笑うとは思ってもみませんでした!




しばらく大笑いしたあと、ようやく笑うのをやめたブリードさん。

ふうふう言いながら「す、すまぬ……」とお腹を撫でている。

腹筋が痛くなるほど?!そんなにボクおかしなことを言いましたか?!


ちょっとだけムスっとしていると、それに気づいたお兄さまが「クリスはクリスで素敵だと思うぞ?」と慰めてくださった。そのお気持ちが嬉しい。


「いや、確かに『懐かしい気配』というのは誤解を生む言い方だったな。すまなんだ。

生まれ変わりということではなく、要するに魂の濃度の話なのだ」


「……タマシイのノウド?」


え?魂って……魂だよね?

ノウドって、濃度?要するに、濃いとか薄いとかいうこと?


首をひねるボクたちにブリードが説明してくれた。


「そうだのう。そこの者たちと、お主の兄の魂を1としよう。クリスの魂は、1つ半、もしくは2つを1つにぎゅっと濃縮したようなものなのだ。心当たりはないか?」


お兄さまは意味が分からないようだったけれども、ボクには分かった。分かってしまった。

要するに、ボクの中にある前世のボクのことだよね、きっと。


「………あります」

「あるのか?」


ギョッと目を見開くお兄さま。


ごめんなさい。大好きなお兄さまですが、まだお話はできないの。

だってボク自身、全部思い出したわけじゃあないから。

ボクがいじめられていたこと、そんな辛いときにボクの救いとなったのが、ゲームの中のお兄さまだったってこと。お兄さまのお陰で友達ができたこと。

つまり、お兄さまに関わることだけなんだもの。

もう少し思い出して自分の中で整理ができたら、きっといつかお話致しますので。

もうしばらくは内緒にさせてくださいませ。


困ったように眉を下げてほほ笑んだボクに、お兄さまはそれ以上追及しないでいてくれた。

ただひとこと。


「……クリスがクリスならばよい」


そう言ってそっと抱きしめてくださったのだった。


そんなボクたちをブリードが嬉しそうに見つめる。


「うむ。仲のよいことよ。

常ならば、1を超えた分は霧散して1になる。それがこの世の理。

しかし中には1を超えた分をそのまま取り込んで生まれるものがおる。常ならば内側で眠るか、増えたものを抱えきれず不安定な魂として天に還ろうとするのが……お主はそのどちらでもない。

その兄のお陰でお主の魂は増えたままでも非常に安定しておるのだ。

サフィラスも同様であった。あやつの魂は、とても濃厚で面白い色としていた。

濃度の濃い魂は、生まれつき多く魔素を含む。

今の世にはほとんど魔素が残っておらぬゆえ、お主のそれが我にはとても心地よいのだ」


つまり、サフィラスさまはボクと同じ転生者だったということ?

衝撃の事実だ。


しかもボクはとんでもないことに気付いてしまった。


「あの……勘違いだったらごめんなさい。

そのお話ですと、もしかしてボクって魔法が使えたりするのでしょうか?」


みんなの目がハッと見開かれ、その場が一瞬にして緊張した。


「魔法とは物語の中でのみ存在するものだ。ブリード様のお陰で伝説が誠であったと理解したのだが、まさか……」


だって、その魔素というのが魔力の元みたいなものなのでしょう?

昔はそこら中に魔素が溢れていたから魔法だって使えたし魔獣とかだって生まれていたのですよね?

でもって、今は魔素が無くなったから魔法が使える人がいなくって、魔獣も存在しなくなった。

そういうことなのですよね?


であれば、元から魔素を持っているボクならば、魔法だって使えてしまうのでは?

もちろん使い方はわかりませんけれど!


答えを求めてみなの視線がブリードに集中する。


はたして……


ブリードはにんまりと口角を上にあげてこう言った。


「つまりは、そういうことだ。

そういう意味も含め、我をつれてゆけ。いろいろと教えてしんぜようぞ」




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