守神さま改めブリードさん
守神さま改めブリードさんがブリザードドラゴンだと証明されたところで、魔法というものに初めて触れた俺たちは改めてブリードさんに説明をお願いした。
ブリードさんのお話は、まるで伝説の物語の世界そのもの。
彼は生きる伝説だったのでした。
そもそも、この世界に魔法があったのはボクが生まれる何百年も前の話。
伝記によれば、昔、この世界には魔獣や魔物が多く住み、魔法や魔道具も存在した。
魔法は血筋によって受け継がれており、この国の貴族は魔法が得意だった。
もちろん魔法が苦手な国もあったけれど、そういう国は武力に優れていたり、魔道具が広まっていたりとなにかしら代わりのものがあったみたい。
世界は混とんとしていて、それぞれがそれぞれの特性を生かして発展していた。
貧しい国もあれば、富める国もある。友好的な国もあれば、好戦的な国もある。そこに魔獣がからみ、あちこちで小競り合いが絶えなかった。
そこに登場するのが、かの有名なサフィラスさまだ。
彼は、聖女であり、冒険者。男性なのにもかかわらず女性のように子供も産めたのだという。
そのため当時の王家に嫁ぎ、様々な革新的な改革を行った。
サフィラスさまはなんと200年も若々しい姿のままだったという。
彼は聖獣を従え世界中を回り、その国に平和をもたらしたのだとされている。
サフィラスさまの活躍によって、この大陸は平和になり、最終的に大きな一つの国のようになった。
巨大な連合国となったのだ。
そして争いが無くなったことで、徐々に魔法が使える人が生まれなくなった。
サフィラスさまが世界を浄化したことで魔獣も生まれなくなり、平和な世の中になった。
これがサフィラスさまの伝説。
他にもあらゆる人を虜にした、とか、コンサートや歌の産みの親だとかいろいろな逸話はあるけれど、いろいろありすぎてどこまでが本当でどこが嘘なのかすら分からない。
逆に伝説が凄すぎて、本当に存在したのかすら疑わしいと言われる人。それがサフィラスさまなのだ。
ブリードさんは、そのサフィラスさまの眷属だったのだという。
「ええ?!ということは、サフィラスさまは実在したということだよね?
………ちょっと待って!ブリードさんはドラゴンなんでしょ?
もしかして、お兄さまが仰っていたサフィラス様の遺物の『ドラゴンの鱗』に心当たりがあったりしない?」
「おお!我の鱗ぞ!まだ今日まで残っておったとは!」
なんということ!!
「お兄さま、お兄さま、お兄さま!本物でした、本物!!うわあああい!」
憧れのサフィラスさまは実在したんだ!凄い!!
大喜びのボクに、ブリードさんが複雑な表情。
「小さきものはサフィに憧れておるのか。確かにサフィはすごかったからのう……。サフィがおる間はとても楽しかった……」
懐かしむように遠い目をするブリードさん。
僕なんか想像もつかないような長い長い年月を生きてきたのだものね。
ブリードさんはもともとは長く生きてほぼ聖獣に近いような存在となったブリザードドラゴンだったのだそう。
たまたまサフィラス様と出会い、その強大な魔力に大いに興味を持ったブリードさん。
長い年月に飽きていたこともあり、自ら進んでサフィラスさまに眷属にするように頼んだのだという。
そしてまるで友かペットのように気軽に呼び出され便利に使われていたのだそう。
サフィラスさま……凄すぎます。
サフィラスさま亡きあと、徐々に世界から魔素という魔力の元が失われ、魔物も生まれなくなった。
魔物だったものは、少しづつ退化し、そして元のただの動物になる。
強大な魔力を誇ったブリードさんも、世界からその元が消えるに従い、徐々に柄らを失ったのですって。
途中で聖獣として異界に行くこともできたのだけれど、サフィラスさまの残した世界がどうなるのか見届けたくてこの地に残っていたのだという。
なにそれ!健気!
きっととってもサフィラスさまのことが好きだったんだね。
黙って聞いていらしたお兄さまが、ブリードさんに頭を下げた。
「……たった一人、永遠にも思える時をこの地で過ごし、この地をお守り下さり心より感謝致します」
ボクも慌てて一緒に頭を下げる。
「ありがとうございます。お陰でみんな平和に暮らすことができました」
ブリードさんは威張るでもなくただ少しだけ微笑んで頷いた。
「我が好きでしていることよ。
しかし……さすがに身体の維持は難しくてな。このようなサイズとなってしまった。
だがまだまだ魔法は使えるぞ。これでも神に連なるものなのだからな」




