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守神さま?

ご拝読いただきましてありがとうございます。

こちらに登場しました、サフィラス様が主人公のお話は「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」というタイトルに書籍化&kindle しております。アルファポリス様にて連載を続けておりますのでよろしければ♡書籍の続き、連載の方にブリードさんも出ております。

「く、クリス様、お水ですっ!」


レインが水を持ってきてくれた。

それを奪い取るようにしてマーシャがボクの口元にコップを突きつける。


「これでお口をゆすいでくださいっ!変なものをお口に入れないでくださいってあれほど申し上げましたのにっ!」


とりあえず視線は守神さまに向けたまま、マーシャにコップを持って貰ったまま、ぶくぶくぺっ。



すると……



「失敬な!我はそんなに汚くはない!我は聖獣に連なるドラゴンなのだぞ!」


明らかにボクの手の中からあのロートーンボイスが!


「ええええ?守神さまが……しゃべった?

というか、そんなに渋いお声だったのですか?!」


「クリス、驚くのはそこなのか?!」


ボクとお兄さまが驚いていると、そんなボクとお兄さまに驚くマーシャとレインさん。


「お二人とも何を仰っているのですか?」


「クリス様、守神さまはしゃべりませんよ?!」


え?二人には何も聞こえていないの?

ぐりん、とお兄さまを向けば、お兄さまには聞こえたもよう。


「……確かに聞こえたぞ?」


「ですよねえ?とても渋いお声でしたよね?」


「気にすべきはそこではない!

我とソナタらは先程絆を結んだ。故、にソナタらにだけ我の声が聞こえるのだ。

我は聖獣に連なるドラゴンぞ」


ドラゴン?あの伝説の?


「……お兄さま、ボク……ドラゴンってもっと大きくって、火とか噴いて、翼とか生えているものだとばかり思っていました……」

「うむ。私もそのように認識していた。なにしろ伝説だからな。話をいささか盛っていたということなのだろう。現実とはえてしてそういうものだ」


ふむふむ、とお兄さまと頷きあっていると、てち、と手に可愛らしい感触。


「こら!話を聞かぬか!」


ええ?今の、もしかして、ぶったの?


「………か、かわいいっ!いまの『てち』っていうの、もう一回お願いしますっ!」

「だから、話を聞けというに!!」


思わずハアハアしてしまったボクにすかさず守神さまがつっこんだ。


「ふむ。クリス、少し落ち着こう。…………守神よ、あなたは……聖獣なのか?」


冷静にボクの手に乗る守神さまに向かって問いかけるお兄さま。

すると守神さまはその小さな後ろ足でぐいっと立ち上がり(立てたんだね!)その小さな胸を張って見せた。


「聖獣ではない。が、それに近いものであった。土地の守りを司っておったブリザードドラゴン。それが我よ」


「………ブリザードドラゴン?……氷とかを出すドラゴンですか?」


じいいっとその小さな身体と可愛らしいお口を見つめる。

ほう。この小さなお口から氷を……。

なんだか可愛い。というか、そんなことをいわれても可愛いしかないのですけれど………。


ボクとお兄さまの視線からそんな思いを感じ取ったのか、守神さまはしょんぼりと肩(らしき箇所)を落とした。


「……魔素の消失と共に我も元の力を失った。今はこの姿がせいぜいよ……。元はそなたの言うように10メートルはあろう身体に虹のように光る巨大な翼を有しておった。地より吹き出さんとするマグマを押さえ、土地を守っておったのだぞ?」


「10メートル!マグマ!それはすごいです!!絵本や伝承のとおりですね!カッコいいです、守神さま!」


まさかそんな伝説の存在がボクの肩にいるだなんて!

こころなしか守神さまが少し重く感じる。


「しかし……なぜそのようなお姿に?このような言い方は失礼かもしれぬが……とても……お可愛らしいお姿なのだが……」

「そ、そうです!すんごおく縮んでしまってますよ?このお姿もとても素敵ですけれど!可愛らしいですし!ボクは好きですっ!」

「うむ。私もとても好ましく思っております」



ボクたちが守神さまとお話している間に、ルナとセルシオさん、ブリックさんもこちらに来ていた。


「……本当にお話をされているようですね……」

「このトカゲは何なのですか?あやかしでは?」

「それが、クリス様はドラゴンだとかおっしゃっていたのですが……」

「はあ?ドラゴン?このトカゲが?!」



みんなの会話が聞こえたようで、守神さまが激怒した。


「ドラゴンだと言っておろう!見よ!」


小さなお口をぱかっと開けて


ブオオオオオッ!


お口から真っ白な息を池に向かって吐けば、なんと!池の一部が氷に!


「わあああああっ!!氷!氷を吐きました!本当にブリザードドラゴンさんでしたっ!!

さすがドラゴンさん!ボク、初めて見ました!魔法ですよ、魔法っ!!」


思わず空いたほうね片手でお兄さまのお袖を掴んでグイグイしてしまったボク。

お兄さまも唖然と「あ、ああ……。確かにブリザードドラゴンのようだ……」と呟いた。


「守神さまってすごいドラゴンさんなのですね!」


大喜びで褒めたたえると、守神さまが嬉しそうに首を振るわせる。


「うむ。ようやく理解したか。力をだいぶ失ったが……まだこれくらいは容易いものよ。

ちなみに我が名はブリードという。

小さきものクリス、そしてその兄よ。わが名を呼ぶことを許そう」


おお!お名前があったのですね!ブリードさん!かっこよいお名前です!


「わあ!ありがとうございます!ブリード様!

あのね、お兄さまはジルベールというお名前なのです。カッコいい名前でしょう?

ボクはジル兄さまと呼ばせて頂いております」

「ブリード様、私の名はジルベール。どうかジルとお呼びください」

「うむ。ではジルよ。あちらの者たちは大丈夫であろうか?」


あちら、と小さなお手手の指す方を見れば……

護衛のみなさんが守神さまのようにお口をぱかっと開け、目を真ん丸に見開いて湖面に釘付け。


「えっと。みんなー大丈夫ですかあー?」


声を掛けたら、ビクッと飛び上がり一斉にボクの手の上を見た。


「そ、そ、それ……いや、その方がされたのですか?!」


震える指で守神さまを指すルナ。


「うん。ブリザードドラゴンさんなのですって」


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